公爵令息と悪女と呼ばれた婚約者との、秘密の1週間

みん

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18 ジャクリーヌ

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婚姻届すら出していないとは思わなかった。
となれば、“ジャクリーヌただの居候が、侯爵邸で好き勝手やっていた”と言う事になる。

「それでも、王太子妃の実の親と妹であるから、2人の生活は保証すると約束はしていた。だが、私の実の娘はシャーリーだけだから、次期侯爵がシャーリーだと言う事は決定事項だ」
「シャーリーお義姉様が、次期侯爵!?」

そう、次期侯爵はシャーリーだ。シャーリーと結婚して俺が侯爵になるのではなく、カシリスト家に婿入りするかたちだ。それを、夫人とデライラは知らなかったようだが。

「シャーリーが次期侯爵?」
「はっ…まさか、シャーリーを蹴落としてブロンディオのと結婚すれば、デライラが侯爵夫人になれるとでも思っていたのか?それは、万が一にも無い。何かしらの理由でシャーリーが爵位を継承できなくなった場合は、傍系の者の中から後継者を決める事になっている」

ーまさかの“小僧”呼ばわり……ー

おそらく、俺の事も耳にしたのだろう。シャーリーを護れなかった俺に、苛立ちを募らせているのだろう。

『ギュッ!?』

ふと、背中越しに振り返った侯爵と………目が合った。

ーバレているー

それもそうか。侯爵が今ここに居るのは、王太子リュシアン王太子妃ナターシャの手助けがあったからだろうから。でなければ、昨日の報告で1ヶ月程掛かる国に居た侯爵が、この場に居る事なんて有り得ないのだから。

ーでも、侯爵も同罪では?ー

「わざわざ聖女を巻き込んでまで、シャーリーを陥れて侯爵家をモノにしようとしたようだが、自ら破滅を選んでくれて感謝する。かと言って、シャーリーにした仕打ちが帳消しになる事はないが」
「侯爵家をモノにしようなどとは──」
「『思っていなかった』とは言わせない」
「本当に────っ!私は………本当に、エリック様を愛しているんです!エリック様を愛しているから、貴方の為に──」
「お前に名前を呼ぶ事を許した覚えはない。私を名前で呼んで良い女性は、私の妻のエレーヌだけだ」

愛妻家と言うのは、本当だったようだ。
ジャクリーヌと名前を呼ばないあたり、本当に何とも思っていないんだろう。嫌悪感しか無いようだ。

「エレーヌ……死んでもまだ、私の邪魔をするのね。本当に嫌な女!私の方が先にエリック様の事を好きになったのに!私の方がエリック様を愛しているのに!伯爵令嬢だからってエリック様と結婚できたくせに!本当に鬱陶しい女だわ!」
「お……お母様!?」

ーそれが本音なのかー

ミシェルが聞いた噂が本当だったのだ。

「例え、エレーヌが男爵令嬢でお前が伯爵令嬢だったとしても、私が選んだのはエレーヌだ。私がお前を選ぶ事は無い。マルク!今すぐこの母娘を地下の部屋へ連れて行け!執事は拘束した後私の執務室に連れて来い!」
「承知しました!」

「なっ!?エリック様!どうして!」
「お父様!?嫌よ!離しなさい!」

扉の外に控えていた筈のマルクの行動は早かった。真っ先に執事に拘束具を着けた後、夫人とデライラを魔法で拘束し、後からやって来た騎士に2人を地下の部屋へ連れて行くように指示を出した。どうやら、軽いノリで気さくなマルクは、かなり優秀な騎士だったようだ。

「シャーリー、大丈夫か?」
「はい…大丈夫です」

お互いがぎこち無く向き合っているのは仕方無い。夫人の企みが無ければ笑顔の再会になっただろうけど。
俺が直接シャーリーを助けたかったけど、これはこれで良かったと思うしかない。父娘ですれ違ったままだと、亡くなったシャーリーの母親も心配するだろうから。

「本当にすまない。王太子殿下の頼みとは言え、あの女を受け入れるべきではなかった。何よりも大切なシャーリーを失うところだった」
「お父様は何も悪くありません。悪いのは…彼女達なんですから。それに、ナターシャ様が私のお義姉様になった事は、嬉しい事ですから」
「ありがとう、シャーリー……」

ぎこち無いながらも、お互いを思いやる2人を見守っていると「そろそろ戻りますよ」と、ミシェルに尻尾を掴まれ持ち上げられた。

ー最後の最後迄、尻尾を掴まれたな。いっその事、最後だから尻尾を切ってやろうか?ー

そんな事を考えていたせいで、俺は全く気付いていなかった。

「────エレーヌ……シャーリー………母娘揃って……私の邪魔をするなんて赦さない!エリック様は私のモノよ!!」
「ジャクリーヌ!!」

ナターシャとデライラは魔法が使えなかったから、ジャクリーヌもそうなんだと思っていたが、そうではなく、火の魔法が使えたようで、ジャクリーヌは騎士の拘束を振り切って火の攻撃魔法をシャーリーに向けて展開させた。

「シャーリー!」
『ギャーッ!!』
「シャーリー様!ブロ──ノクス!?」

俺は、ヤモリの姿のままシャーリーの方へと飛びかかった。


尻尾を切り離して───



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