18 / 23
18 ジャクリーヌ
しおりを挟む
婚姻届すら出していないとは思わなかった。
となれば、“ジャクリーヌが、侯爵邸で好き勝手やっていた”と言う事になる。
「それでも、王太子妃の実の親と妹であるから、2人の生活は保証すると約束はしていた。だが、私の実の娘はシャーリーだけだから、次期侯爵がシャーリーだと言う事は決定事項だ」
「シャーリーお義姉様が、次期侯爵!?」
そう、次期侯爵はシャーリーだ。シャーリーと結婚して俺が侯爵になるのではなく、カシリスト家に婿入りするかたちだ。それを、夫人とデライラは知らなかったようだが。
「シャーリーが次期侯爵?」
「はっ…まさか、シャーリーを蹴落としてブロンディオの小僧と結婚すれば、デライラが侯爵夫人になれるとでも思っていたのか?それは、万が一にも無い。何かしらの理由でシャーリーが爵位を継承できなくなった場合は、傍系の者の中から後継者を決める事になっている」
ーまさかの“小僧”呼ばわり……ー
おそらく、俺の事も耳にしたのだろう。シャーリーを護れなかった俺に、苛立ちを募らせているのだろう。
『ギュッ!?』
ふと、背中越しに振り返った侯爵と………目が合った。
ーバレているー
それもそうか。侯爵が今ここに居るのは、王太子と王太子妃の手助けがあったからだろうから。でなければ、昨日の報告で1ヶ月程掛かる国に居た侯爵が、この場に居る事なんて有り得ないのだから。
ーでも、侯爵も同罪では?ー
「わざわざ聖女を巻き込んでまで、シャーリーを陥れて侯爵家をモノにしようとしたようだが、自ら破滅を選んでくれて感謝する。かと言って、シャーリーにした仕打ちが帳消しになる事はないが」
「侯爵家をモノにしようなどとは──」
「『思っていなかった』とは言わせない」
「本当に────っ!私は………本当に、エリック様を愛しているんです!エリック様を愛しているから、貴方の為に──」
「お前に名前を呼ぶ事を許した覚えはない。私を名前で呼んで良い女性は、私の妻のエレーヌだけだ」
愛妻家と言うのは、本当だったようだ。
ジャクリーヌと名前を呼ばないあたり、本当に何とも思っていないんだろう。嫌悪感しか無いようだ。
「エレーヌ……死んでもまだ、私の邪魔をするのね。本当に嫌な女!私の方が先にエリック様の事を好きになったのに!私の方がエリック様を愛しているのに!伯爵令嬢だからってエリック様と結婚できたくせに!本当に鬱陶しい女だわ!」
「お……お母様!?」
ーそれが本音なのかー
ミシェルが聞いた噂が本当だったのだ。
「例え、エレーヌが男爵令嬢でお前が伯爵令嬢だったとしても、私が選んだのはエレーヌだ。私がお前を選ぶ事は無い。マルク!今すぐこの母娘を地下の部屋へ連れて行け!執事は拘束した後私の執務室に連れて来い!」
「承知しました!」
「なっ!?エリック様!どうして!」
「お父様!?嫌よ!離しなさい!」
扉の外に控えていた筈のマルクの行動は早かった。真っ先に執事に拘束具を着けた後、夫人とデライラを魔法で拘束し、後からやって来た騎士に2人を地下の部屋へ連れて行くように指示を出した。どうやら、軽いノリで気さくなマルクは、かなり優秀な騎士だったようだ。
「シャーリー、大丈夫か?」
「はい…大丈夫です」
お互いがぎこち無く向き合っているのは仕方無い。夫人の企みが無ければ笑顔の再会になっただろうけど。
俺が直接シャーリーを助けたかったけど、これはこれで良かったと思うしかない。父娘ですれ違ったままだと、亡くなったシャーリーの母親も心配するだろうから。
「本当にすまない。王太子殿下の頼みとは言え、あの女を受け入れるべきではなかった。何よりも大切なシャーリーを失うところだった」
「お父様は何も悪くありません。悪いのは…彼女達なんですから。それに、ナターシャ様が私のお義姉様になった事は、嬉しい事ですから」
「ありがとう、シャーリー……」
ぎこち無いながらも、お互いを思いやる2人を見守っていると「そろそろ戻りますよ」と、ミシェルに尻尾を掴まれ持ち上げられた。
ー最後の最後迄、尻尾を掴まれたな。いっその事、最後だから尻尾を切ってやろうか?ー
そんな事を考えていたせいで、俺は全く気付いていなかった。
「────エレーヌ……シャーリー………母娘揃って……私の邪魔をするなんて赦さない!エリック様は私のモノよ!!」
「ジャクリーヌ!!」
ナターシャとデライラは魔法が使えなかったから、ジャクリーヌもそうなんだと思っていたが、そうではなく、火の魔法が使えたようで、ジャクリーヌは騎士の拘束を振り切って火の攻撃魔法をシャーリーに向けて展開させた。
「シャーリー!」
『ギャーッ!!』
「シャーリー様!ブロ──ノクス!?」
俺は、ヤモリの姿のままシャーリーの方へと飛びかかった。
尻尾を切り離して───
となれば、“ジャクリーヌが、侯爵邸で好き勝手やっていた”と言う事になる。
「それでも、王太子妃の実の親と妹であるから、2人の生活は保証すると約束はしていた。だが、私の実の娘はシャーリーだけだから、次期侯爵がシャーリーだと言う事は決定事項だ」
「シャーリーお義姉様が、次期侯爵!?」
そう、次期侯爵はシャーリーだ。シャーリーと結婚して俺が侯爵になるのではなく、カシリスト家に婿入りするかたちだ。それを、夫人とデライラは知らなかったようだが。
「シャーリーが次期侯爵?」
「はっ…まさか、シャーリーを蹴落としてブロンディオの小僧と結婚すれば、デライラが侯爵夫人になれるとでも思っていたのか?それは、万が一にも無い。何かしらの理由でシャーリーが爵位を継承できなくなった場合は、傍系の者の中から後継者を決める事になっている」
ーまさかの“小僧”呼ばわり……ー
おそらく、俺の事も耳にしたのだろう。シャーリーを護れなかった俺に、苛立ちを募らせているのだろう。
『ギュッ!?』
ふと、背中越しに振り返った侯爵と………目が合った。
ーバレているー
それもそうか。侯爵が今ここに居るのは、王太子と王太子妃の手助けがあったからだろうから。でなければ、昨日の報告で1ヶ月程掛かる国に居た侯爵が、この場に居る事なんて有り得ないのだから。
ーでも、侯爵も同罪では?ー
「わざわざ聖女を巻き込んでまで、シャーリーを陥れて侯爵家をモノにしようとしたようだが、自ら破滅を選んでくれて感謝する。かと言って、シャーリーにした仕打ちが帳消しになる事はないが」
「侯爵家をモノにしようなどとは──」
「『思っていなかった』とは言わせない」
「本当に────っ!私は………本当に、エリック様を愛しているんです!エリック様を愛しているから、貴方の為に──」
「お前に名前を呼ぶ事を許した覚えはない。私を名前で呼んで良い女性は、私の妻のエレーヌだけだ」
愛妻家と言うのは、本当だったようだ。
ジャクリーヌと名前を呼ばないあたり、本当に何とも思っていないんだろう。嫌悪感しか無いようだ。
「エレーヌ……死んでもまだ、私の邪魔をするのね。本当に嫌な女!私の方が先にエリック様の事を好きになったのに!私の方がエリック様を愛しているのに!伯爵令嬢だからってエリック様と結婚できたくせに!本当に鬱陶しい女だわ!」
「お……お母様!?」
ーそれが本音なのかー
ミシェルが聞いた噂が本当だったのだ。
「例え、エレーヌが男爵令嬢でお前が伯爵令嬢だったとしても、私が選んだのはエレーヌだ。私がお前を選ぶ事は無い。マルク!今すぐこの母娘を地下の部屋へ連れて行け!執事は拘束した後私の執務室に連れて来い!」
「承知しました!」
「なっ!?エリック様!どうして!」
「お父様!?嫌よ!離しなさい!」
扉の外に控えていた筈のマルクの行動は早かった。真っ先に執事に拘束具を着けた後、夫人とデライラを魔法で拘束し、後からやって来た騎士に2人を地下の部屋へ連れて行くように指示を出した。どうやら、軽いノリで気さくなマルクは、かなり優秀な騎士だったようだ。
「シャーリー、大丈夫か?」
「はい…大丈夫です」
お互いがぎこち無く向き合っているのは仕方無い。夫人の企みが無ければ笑顔の再会になっただろうけど。
俺が直接シャーリーを助けたかったけど、これはこれで良かったと思うしかない。父娘ですれ違ったままだと、亡くなったシャーリーの母親も心配するだろうから。
「本当にすまない。王太子殿下の頼みとは言え、あの女を受け入れるべきではなかった。何よりも大切なシャーリーを失うところだった」
「お父様は何も悪くありません。悪いのは…彼女達なんですから。それに、ナターシャ様が私のお義姉様になった事は、嬉しい事ですから」
「ありがとう、シャーリー……」
ぎこち無いながらも、お互いを思いやる2人を見守っていると「そろそろ戻りますよ」と、ミシェルに尻尾を掴まれ持ち上げられた。
ー最後の最後迄、尻尾を掴まれたな。いっその事、最後だから尻尾を切ってやろうか?ー
そんな事を考えていたせいで、俺は全く気付いていなかった。
「────エレーヌ……シャーリー………母娘揃って……私の邪魔をするなんて赦さない!エリック様は私のモノよ!!」
「ジャクリーヌ!!」
ナターシャとデライラは魔法が使えなかったから、ジャクリーヌもそうなんだと思っていたが、そうではなく、火の魔法が使えたようで、ジャクリーヌは騎士の拘束を振り切って火の攻撃魔法をシャーリーに向けて展開させた。
「シャーリー!」
『ギャーッ!!』
「シャーリー様!ブロ──ノクス!?」
俺は、ヤモリの姿のままシャーリーの方へと飛びかかった。
尻尾を切り離して───
411
あなたにおすすめの小説
もう演じなくて結構です
梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。
愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。
11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
感想などいただけると、嬉しいです。
11/14 完結いたしました。
11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
私達、婚約破棄しましょう
アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。
婚約者には愛する人がいる。
彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。
婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。
だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる