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19 変わっていなかったもの
*シャーリー視点となります*
「シャーリー!」
「シャーリー様!ブロ──ノクス!?」
お義母様──ではなくジャクリーヌが私に向かって火の攻撃魔法を放った。
ー間に合わない!ー
そう思って受ける衝撃に覚悟を決めて目をギュッと閉じると、フワッと優しい何かに包まれた。
「早くその女をしっかりと拘束しろ!それと、その女は地下の部屋ではなく、牢に放り込んでおけ!」
「離しなさい!私は侯爵夫人よ!エリック様!エリッ────っ!んーっ!!」
騎士達に押さえられたのか、バタバタと音がした後、ジャクリーヌの叫び声が聞こえなくなり、辺りが静かになった。そこでようやく、私は誰かに抱きしめられている事に気が付いた。
ーお父様?ー
この部屋で私より大きい──男性はお父様だけだ。マルクと他の騎士達は、ジャクリーヌ達を連れて部屋から出て行ったから。
「お父様、大丈夫ですか!?」
火の攻撃魔法を受けたなら、火傷では済まない。確認する為にも、抱きしめられているままで背中に手を回してみると、特に攻撃を受けた感じが無くて安心した。防御の魔法を展開させたのだろう。
「あれ?」
お父様は、防御系の魔法は苦手ではなかった?
「俺は大丈夫だ。シャーリーの方こそ大丈夫か?」
「………え?」
その声を耳にするとは思わなかった。勿論、お父様の声ではない。
「どう……して?」
その問いかけに、私を抱きしめていた腕の力が緩んで、ようやく彼を見上げる事ができた。
「ブロンディオ様?どうして……ここに?」
本当に分からない。今の今迄、ここに居なかったブロンディオ様。1週間前に王城で偶然会ったのが最後だった。それに、婚約破棄されるかもしれないと思っていたから、もう会えないかもしれないとも思っていた。
「今度こそ、シャーリーを護れて良かった」
そう言って私に向ける笑顔は、以前の笑顔と変わらない優しい笑顔だ。また、この笑顔を私に向けてくれるとは……また、目にする事ができるとは思わなかった。嫌われていると思っていた。
「ブロ────」
「はぁぁぁー間に合って良かった!!」
「シャーリー!シャーリーは無事なの!?」
そこにやって来たのは、王太子殿下とお義姉様だった。お義姉様は、やって来た勢いのまま私に抱きついた後、私の無事を確認するかのように、私の体を優しくポンポンと叩き始めた。
「ああ!シャーリー、どこも怪我はしてない?」
「お義姉様、大丈夫です。あの…ブロンディオ様が護ってくれたから。だから、ブロンディオ様の方が──」
「あぁ、そうなのね。ネイサンがシャーリーを護るのは当たり前の事だから、シャーリーが気にしたり心配する必要はないわ。ようやく役に立っただけよ」
「えっと?」
護る事が当たり前とは?ようやく役に立ったとは?
「あ、ひょっとして、お父様やブロンディオ様が急に現れたのは、転移の魔法を使ったからですか?」
転移の魔法は誰もが使えるものではないし、それなりの魔力を消耗するから、何度も繰り返し使えるものではない。私が知る限りで、身近にそれができる人物は1人しかいない。
「本当にシャーリーが無事で良かった。掠り傷でもできようものなら、里帰りすると言い出しそうだから」
「そんな事は──当たり前じゃない?」
「王太子殿下、ありがとうございます」
「礼は要らないよ。それに、私の事は“お義兄様”と呼んでくれ」
「それでも、ありがとうございます……お義兄様」
「くうっ…妹とはこんなに可愛いものなのか!?」
「今頃気付いたの?」
「リュシアン………」
気さくな王太──お義兄様と私の言葉を聞いてくれるお義姉と、私に笑顔を向けてくれるブロンディオ様。以前のまま、何も変わっていない。
お父様も、ジャクリーヌのせいですれ違っていただけで、私の事を信じてちゃんと思ってくれていた。
「あ、ブロンディオ様……も、ひょっとして、私からの手紙は届いていなかったんですか?」
ブロンディオ様との婚約を破棄させる為に、ブロンディオ様と私の仲を引き裂こうとして、手紙を握り潰していた可能性がある。
「ああ、シャーリーが入学する前から手紙が届かなくなった。きっと、俺からの手紙もシャーリーには届いていなかったんだろう?」
「ブロンディオ様も、私に手紙を?」
「手紙も送ったし、シャーリーの誕生日や入学の時には贈り物もした」
「そんな……すみません。手紙も贈り物も、何も受け取ってません……」
郵便物を受け取り管理するのは執事だ。その執事のマーティーがジャクリーヌやデライラに渡していたのだろう。
「シャーリーが謝る必要はない。全ては夫人─ジャクリーヌ達が悪いんだ」
「その通りだ」
お父様が私の肩に手を乗せた。
「まだまだ話したい事や訊きたい事があるが、取り敢えず、シャーリーは部屋に戻って休んでいなさい」
「分かりました」
お父様に軽く頭を下げて挨拶をしてから、私はミシェルと一緒に自室へと戻った。
「シャーリー!」
「シャーリー様!ブロ──ノクス!?」
お義母様──ではなくジャクリーヌが私に向かって火の攻撃魔法を放った。
ー間に合わない!ー
そう思って受ける衝撃に覚悟を決めて目をギュッと閉じると、フワッと優しい何かに包まれた。
「早くその女をしっかりと拘束しろ!それと、その女は地下の部屋ではなく、牢に放り込んでおけ!」
「離しなさい!私は侯爵夫人よ!エリック様!エリッ────っ!んーっ!!」
騎士達に押さえられたのか、バタバタと音がした後、ジャクリーヌの叫び声が聞こえなくなり、辺りが静かになった。そこでようやく、私は誰かに抱きしめられている事に気が付いた。
ーお父様?ー
この部屋で私より大きい──男性はお父様だけだ。マルクと他の騎士達は、ジャクリーヌ達を連れて部屋から出て行ったから。
「お父様、大丈夫ですか!?」
火の攻撃魔法を受けたなら、火傷では済まない。確認する為にも、抱きしめられているままで背中に手を回してみると、特に攻撃を受けた感じが無くて安心した。防御の魔法を展開させたのだろう。
「あれ?」
お父様は、防御系の魔法は苦手ではなかった?
「俺は大丈夫だ。シャーリーの方こそ大丈夫か?」
「………え?」
その声を耳にするとは思わなかった。勿論、お父様の声ではない。
「どう……して?」
その問いかけに、私を抱きしめていた腕の力が緩んで、ようやく彼を見上げる事ができた。
「ブロンディオ様?どうして……ここに?」
本当に分からない。今の今迄、ここに居なかったブロンディオ様。1週間前に王城で偶然会ったのが最後だった。それに、婚約破棄されるかもしれないと思っていたから、もう会えないかもしれないとも思っていた。
「今度こそ、シャーリーを護れて良かった」
そう言って私に向ける笑顔は、以前の笑顔と変わらない優しい笑顔だ。また、この笑顔を私に向けてくれるとは……また、目にする事ができるとは思わなかった。嫌われていると思っていた。
「ブロ────」
「はぁぁぁー間に合って良かった!!」
「シャーリー!シャーリーは無事なの!?」
そこにやって来たのは、王太子殿下とお義姉様だった。お義姉様は、やって来た勢いのまま私に抱きついた後、私の無事を確認するかのように、私の体を優しくポンポンと叩き始めた。
「ああ!シャーリー、どこも怪我はしてない?」
「お義姉様、大丈夫です。あの…ブロンディオ様が護ってくれたから。だから、ブロンディオ様の方が──」
「あぁ、そうなのね。ネイサンがシャーリーを護るのは当たり前の事だから、シャーリーが気にしたり心配する必要はないわ。ようやく役に立っただけよ」
「えっと?」
護る事が当たり前とは?ようやく役に立ったとは?
「あ、ひょっとして、お父様やブロンディオ様が急に現れたのは、転移の魔法を使ったからですか?」
転移の魔法は誰もが使えるものではないし、それなりの魔力を消耗するから、何度も繰り返し使えるものではない。私が知る限りで、身近にそれができる人物は1人しかいない。
「本当にシャーリーが無事で良かった。掠り傷でもできようものなら、里帰りすると言い出しそうだから」
「そんな事は──当たり前じゃない?」
「王太子殿下、ありがとうございます」
「礼は要らないよ。それに、私の事は“お義兄様”と呼んでくれ」
「それでも、ありがとうございます……お義兄様」
「くうっ…妹とはこんなに可愛いものなのか!?」
「今頃気付いたの?」
「リュシアン………」
気さくな王太──お義兄様と私の言葉を聞いてくれるお義姉と、私に笑顔を向けてくれるブロンディオ様。以前のまま、何も変わっていない。
お父様も、ジャクリーヌのせいですれ違っていただけで、私の事を信じてちゃんと思ってくれていた。
「あ、ブロンディオ様……も、ひょっとして、私からの手紙は届いていなかったんですか?」
ブロンディオ様との婚約を破棄させる為に、ブロンディオ様と私の仲を引き裂こうとして、手紙を握り潰していた可能性がある。
「ああ、シャーリーが入学する前から手紙が届かなくなった。きっと、俺からの手紙もシャーリーには届いていなかったんだろう?」
「ブロンディオ様も、私に手紙を?」
「手紙も送ったし、シャーリーの誕生日や入学の時には贈り物もした」
「そんな……すみません。手紙も贈り物も、何も受け取ってません……」
郵便物を受け取り管理するのは執事だ。その執事のマーティーがジャクリーヌやデライラに渡していたのだろう。
「シャーリーが謝る必要はない。全ては夫人─ジャクリーヌ達が悪いんだ」
「その通りだ」
お父様が私の肩に手を乗せた。
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