(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

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良い子、辞めます?

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『王城生活を提案されたにも関わらず、馬車が嫌だから寮に入り、リンディを悲しませた』

「……」

正直、驚く事もできなかった。勿論、悲しみさえ沸かなかった。あったのは、“諦め”だった。

ーいや、違う。“希望”だー

「お姉様、別に、我儘だって事は訂正しなくて良いですから。どうせ、何を言っても、相手は光の魔力持ちのリンディだから、結果は変わらないと思うの。だったら、私は…これからは私のやりたいようにする事にしました!!」

「え?」

キョトンとした顔のお姉様は珍しい。
その後、姉は心配そうに私を見ていたけど、帰りのお迎えが来て帰って行った。



良い子でいて、何か良い事があった?何か変わったか?
何も変わらなかった。皆、リンディしか見ていない。リンディさえ居れば、それで良いんだろう。私は居ても居なくても良い存在。なら……

ー私だって、そんな親や妹と弟なんて要らないー

あの両親は世間体をかなり気にしている。だから、私にもちゃんと家庭教師をつけて厳しく教育された。そのお陰で、今回入学前に受けた試験は簡単に答える事ができた。
学校のクラス分けは、AクラスからDクラス迄あり、Dクラスは主に平民のクラスだ。

そして、週に一度、1年生(15歳)から4年生(18歳)の縦割りで授業を行う日がある。私は、どうしても姉の居るAクラスになりたくて、この2年間、特に頑張って勉強した。
それに、4年間Aクラスに在籍できれば、どこかに就職する事も可能だ。就職ができれば、あの家から出る事もできる。

最悪、我儘娘として悪評でもたてば──

あの親なら、体裁を気にして、良くて修道院送り。悪くて伯爵家除籍ポイ捨て

ーうん。兎に角、私は、あの家を出る為に頑張ろうー

そんな私の考えは、どうやら声に出てしまっていたようで、『エヴィは面白い事を考えるわね』と、ライラが笑っていた事には気付かなかった。



******

入寮してから2日後に、入学式が行われた。

新入生代表の挨拶をしたのは、第二王子であるイズライン=アラバスティ様だった。因みに、第三王子は私の三つ年下になる。

ーこの第二か第三王子がリンディの婚約者になるかも…なんだよね?ー

どうしてまだ決まってないんだろう?と考えているうちに、第二王子の挨拶が終わり、次いで在校生の挨拶となった。
そこで、一気に会場がざわめき立った。

ーえ?何?ー

ビックリして前を見ると、壇上には、生徒会会長である、王太子殿下のアシェルハイド=アラバスティ様が居た。

「───っ!」

先程の第二王子とは違って、圧倒的な存在感。国王陛下に似た顔立ちで、凛としている。

ーそれに……このはー

周りの令嬢は、王太子殿下に対して憧れのような眼差しを向けているけど、私にとっては、王太子殿下の存在は恐怖に近いかもしれない。気を緩めると、体が震えそうになる。

ー絶対に…そうだ。王太子殿下は…ー

と思ったところで、王太子殿下と目が合った??

一瞬だった。スッと細められた目。次の瞬間には人好きのする笑顔になっていた。

否。その笑顔は、私にとっては…怖いものだった。



入学式は滞りなく終了し、未だ震えそうになる足を必死に耐えて、クラス分けの表示をしてある掲示板へと向かった。

自分のクラスを確認した後、案内役の先輩に指示されてクラスへと向かう途中で、姉と会った。

「エヴィ!おめでとう!」

「お姉様!ありがとうございます!」

そう言って、私は遠慮なく姉に抱きついた。

「エヴィ!?」

私が抱きつくなんて初めてで、姉が狼狽えている。

ー我慢せずに、したい事をするんだー

「えっと…エヴィ。今日は午前中で終わるから、ランチは一緒に食べない?」

「一緒に?はい!食べたいです!」

「それじゃあ、寮の1階にある談話室で待ってて?迎えに行くから」

そう姉と約束してから、私は自分のクラスであるAクラスの教室へと向かった。
そう。無事に姉と同じAクラスになれたのだ。因みに、リンディはBクラスだった。

ー違うクラスで良かったー

と、ホッとしている自分が居た。


教室では、先生の自己紹介と、生徒達の自己紹介。その後、明日の予定の説明を受けて、本日は終了となり、生徒達は帰路に就いた。
私も寮へと戻る為に教室を出ると、そこにリンディが居た。

「エヴィ、この後、お父様とお母様が少し会いたいって言っているから、一緒に来てくれる?」

コテンと小首を傾げて、目を潤ませて私に問うて来るリンディに、「分かったわ」と答えると、リンディは花が綻ぶ様な笑顔で「良かったわ。ありがとう」と言った。

傍から見たら、このやり取りがどんな風に写っているのか。私がいつも、親と会うのを拒んでいる─ように見えなくもない。そんなリンディに対して、私は更にリンディに対する気持ちが冷えていくのを感じた。

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