3 / 55
婚約者候補
しおりを挟む
まだ母が生きて居た頃、よく辺境地の邸には色んな人達が遊びに?やって来ていた。と言うのも、この国の夏の時期は王都では暑い日が続いたりする。しかし、このエルダイン領は冬は雪が積もり寒くはなるが、夏は比較的涼しく快適に過ごせる為、夏の避暑地や観光地としても栄えていて、王都からやって来た母の友人達が会いにやって来ていたのだ。
辺境地と言えば、隣国との睨み合いのイメージがあるかもしれないが、それは100年以上も前の話。
“争いからは何も生まれない”
と、今から5代前の国王同士が同盟を結んだ事を切っ掛けに、隣国とは友好関係を築いている為、今では平和な日々を過ごせている。そして、観光地として栄え、旅行ででもお互いの国を行き来したりもしているのだ。
そんな事もあり、私には幼馴染みと言う存在が数名居る。その中には、隣国の子息や令嬢も居る。
そして─自国の第一王子も、その幼馴染みのうちの1人だったのだ。
「フェリシティ、今日は何をして遊ぶ?」
「うー…今日は遊べないの。今日は、家庭教師の先生が来る日なの。」
と、私がシュンとして言うと
「それは仕方無いね。それじゃあ…今日はエスタリオンとあの野原に行って、フェリシティの好きな花を取って来てあげるから、勉強頑張って?」
「本当!?うん、私、お勉強頑張る!」
そう言うと、第一王子は優しく笑って私の頭を撫でてくれた。私は、そんな優しく微笑んでくれる第一王子が好きだった。
そんな私達の様子を見ていた大人達が、私達の意思関係無く、私を第一王子の婚約者候補の1人に入れてしまったのだ。
あくまでも、候補の1人。正式に婚約者が決まるのは、学園を卒業した後になる。その理由は──
その昔、婚約者を早くに決めて、幼少期から王妃教育をさせていたのだが、学園生活を送る間に婚約者以外の者と恋におち婚約破棄。破棄された令嬢は、王族の事を知り過ぎてしまっている事、王子に捨てられた傷者─と蔑まれ──浮気をしたのは王子であって、被害者でしかなかった令嬢が自害したと言う事があったそうだ。そんな事があり、学園生活が終わる迄は婚約者を決めずに候補を数人たてて、その者達に、最低限の王妃教育を施す─と言う事になった。最低限とは、主に、王妃としてのマナーと、後は外交について。それも、主には他国の歴史や現在の我が国との繋がりと、その国の言語の勉強である。
教育で知り過ぎてしまって──と言う事はなくなり、婚約者になれなかった場合でも、王家が直々に新たな婚約者を探してくれたりもする為、婚約者から外れたとしても、その令嬢達が不利に扱われたりする事がなくなったのだ。
そんな婚約者候補の1人になった私。
選ばれた時は、確かに嬉しかった。勿論、第一王子も喜んでくれたと思う。
『フェリシティが僕の婚約者候補だなんて、本当嬉しいよ!勉強は大変かもしれないけど、一緒に頑張ってもらえると…僕はもっとうれしい!』
『お互い、笑顔でいられる存在になりたいな。』
あの言葉が…嘘じゃなかったなら──
いつからだっただろう?
いつも私に微笑んでくれていたのが、あまり笑わなくなった。
お互い成長したから、第一王子も少しずつ大人?になってきたのかな?なんて思ったりしていた。
それが───
『お前は、いつも笑っているな。いや…笑っているだけで褒められて…楽で良いな。』
ある日のお茶会で、冷たい目をした第一王子に浴びせられたその言葉に、私はヒュッと息を呑んだ。
“楽で良いな”?──
第一王子に気付かれないように、テーブルの下で手をギュッと握り締める。
お互い笑い合える存在になりたいと言ったのは誰だった?
王妃となれば、感情を出し過ぎてはいけない。出すな─とは言わないが、その場では何事もないように隠せ。
だから、私は辛い時でもできるだけ笑顔で隠すように頑張った。なのに、第一王子はそれを否定したのだ。
その日は、それから第一王子とどんな会話をして、どうやって家まで帰って来たのか…殆ど覚えていない。
兎に角、その頃から私は笑う事を──止めたのだ。
笑うな──と、あなたが言ったから。
それからは、月に一度の第一王子とのお茶会をそれとなく断り、学園に通う迄は辺境地に引き篭もった。そんなわけで、久し振りに第一王子に会う事になったのは、私が学園に入学してからだった。
入学式が終わると、私を含め婚約者候補の5人が王城へと呼び出された。
てっきり婚約者候補から外れてるんじゃないかと思っていただけに、私はかなり驚いたけど。
3年振り位に見た第一王子は、更に美男子へと成長していた。そして、その顔には、昔と変わらない優しい微笑みをたたていたけど…私にはもう、その笑顔さえ信じられなかった。
ただただ、幼い頃の思い出を胸に、私は選ばれる事はないだろう婚約者候補の1人としての学園生活が始まったのだった。
辺境地と言えば、隣国との睨み合いのイメージがあるかもしれないが、それは100年以上も前の話。
“争いからは何も生まれない”
と、今から5代前の国王同士が同盟を結んだ事を切っ掛けに、隣国とは友好関係を築いている為、今では平和な日々を過ごせている。そして、観光地として栄え、旅行ででもお互いの国を行き来したりもしているのだ。
そんな事もあり、私には幼馴染みと言う存在が数名居る。その中には、隣国の子息や令嬢も居る。
そして─自国の第一王子も、その幼馴染みのうちの1人だったのだ。
「フェリシティ、今日は何をして遊ぶ?」
「うー…今日は遊べないの。今日は、家庭教師の先生が来る日なの。」
と、私がシュンとして言うと
「それは仕方無いね。それじゃあ…今日はエスタリオンとあの野原に行って、フェリシティの好きな花を取って来てあげるから、勉強頑張って?」
「本当!?うん、私、お勉強頑張る!」
そう言うと、第一王子は優しく笑って私の頭を撫でてくれた。私は、そんな優しく微笑んでくれる第一王子が好きだった。
そんな私達の様子を見ていた大人達が、私達の意思関係無く、私を第一王子の婚約者候補の1人に入れてしまったのだ。
あくまでも、候補の1人。正式に婚約者が決まるのは、学園を卒業した後になる。その理由は──
その昔、婚約者を早くに決めて、幼少期から王妃教育をさせていたのだが、学園生活を送る間に婚約者以外の者と恋におち婚約破棄。破棄された令嬢は、王族の事を知り過ぎてしまっている事、王子に捨てられた傷者─と蔑まれ──浮気をしたのは王子であって、被害者でしかなかった令嬢が自害したと言う事があったそうだ。そんな事があり、学園生活が終わる迄は婚約者を決めずに候補を数人たてて、その者達に、最低限の王妃教育を施す─と言う事になった。最低限とは、主に、王妃としてのマナーと、後は外交について。それも、主には他国の歴史や現在の我が国との繋がりと、その国の言語の勉強である。
教育で知り過ぎてしまって──と言う事はなくなり、婚約者になれなかった場合でも、王家が直々に新たな婚約者を探してくれたりもする為、婚約者から外れたとしても、その令嬢達が不利に扱われたりする事がなくなったのだ。
そんな婚約者候補の1人になった私。
選ばれた時は、確かに嬉しかった。勿論、第一王子も喜んでくれたと思う。
『フェリシティが僕の婚約者候補だなんて、本当嬉しいよ!勉強は大変かもしれないけど、一緒に頑張ってもらえると…僕はもっとうれしい!』
『お互い、笑顔でいられる存在になりたいな。』
あの言葉が…嘘じゃなかったなら──
いつからだっただろう?
いつも私に微笑んでくれていたのが、あまり笑わなくなった。
お互い成長したから、第一王子も少しずつ大人?になってきたのかな?なんて思ったりしていた。
それが───
『お前は、いつも笑っているな。いや…笑っているだけで褒められて…楽で良いな。』
ある日のお茶会で、冷たい目をした第一王子に浴びせられたその言葉に、私はヒュッと息を呑んだ。
“楽で良いな”?──
第一王子に気付かれないように、テーブルの下で手をギュッと握り締める。
お互い笑い合える存在になりたいと言ったのは誰だった?
王妃となれば、感情を出し過ぎてはいけない。出すな─とは言わないが、その場では何事もないように隠せ。
だから、私は辛い時でもできるだけ笑顔で隠すように頑張った。なのに、第一王子はそれを否定したのだ。
その日は、それから第一王子とどんな会話をして、どうやって家まで帰って来たのか…殆ど覚えていない。
兎に角、その頃から私は笑う事を──止めたのだ。
笑うな──と、あなたが言ったから。
それからは、月に一度の第一王子とのお茶会をそれとなく断り、学園に通う迄は辺境地に引き篭もった。そんなわけで、久し振りに第一王子に会う事になったのは、私が学園に入学してからだった。
入学式が終わると、私を含め婚約者候補の5人が王城へと呼び出された。
てっきり婚約者候補から外れてるんじゃないかと思っていただけに、私はかなり驚いたけど。
3年振り位に見た第一王子は、更に美男子へと成長していた。そして、その顔には、昔と変わらない優しい微笑みをたたていたけど…私にはもう、その笑顔さえ信じられなかった。
ただただ、幼い頃の思い出を胸に、私は選ばれる事はないだろう婚約者候補の1人としての学園生活が始まったのだった。
214
あなたにおすすめの小説
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる