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みん

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婚約者候補

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まだ母が生きて居た頃、よく辺境地の邸には色んな人達が遊びに?やって来ていた。と言うのも、この国の夏の時期は王都では暑い日が続いたりする。しかし、このエルダイン領は冬は雪が積もり寒くはなるが、夏は比較的涼しく快適に過ごせる為、夏の避暑地や観光地としても栄えていて、王都からやって来た母の友人達が会いにやって来ていたのだ。

辺境地と言えば、隣国との睨み合いのイメージがあるかもしれないが、それは100年以上も前の話。

“争いからは何も生まれない”

と、今から5代前の国王同士が同盟を結んだ事を切っ掛けに、隣国とは友好関係を築いている為、今では平和な日々を過ごせている。そして、観光地として栄え、旅行ででもお互いの国を行き来したりもしているのだ。

そんな事もあり、私には幼馴染みと言う存在が数名居る。その中には、隣国の子息や令嬢も居る。
そして─自国の第一王子も、その幼馴染みのうちの1人だったのだ。





「フェリシティ、今日は何をして遊ぶ?」

「うー…今日は遊べないの。今日は、家庭教師の先生が来る日なの。」

と、私がシュンとして言うと

「それは仕方無いね。それじゃあ…今日はエスタリオンとあの野原に行って、フェリシティの好きな花を取って来てあげるから、勉強頑張って?」

「本当!?うん、私、お勉強頑張る!」

そう言うと、第一王子は優しく笑って私の頭を撫でてくれた。私は、そんな優しく微笑んでくれる第一王子が好きだった。

そんな私達の様子を見ていた大人達が、私達の意思関係無く、私を第一王子の婚約者候補の1人に入れてしまったのだ。
あくまでも、候補の1人。正式に婚約者が決まるのは、学園を卒業した後になる。その理由は──

その昔、婚約者を早くに決めて、幼少期から王妃教育をさせていたのだが、学園生活を送る間に婚約者以外の者と恋におち婚約破棄。破棄された令嬢は、王族の事を知り過ぎてしまっている事、王子に捨てられた傷者─と蔑まれ──浮気をしたのは王子であって、被害者でしかなかった令嬢が自害したと言う事があったそうだ。そんな事があり、学園生活が終わる迄は婚約者を決めずに候補を数人たてて、その者達に、最低限の王妃教育を施す─と言う事になった。最低限とは、主に、王妃としてのマナーと、後は外交について。それも、主には他国の歴史や現在の我が国との繋がりと、その国の言語の勉強である。

教育で知り過ぎてしまって──と言う事はなくなり、婚約者になれなかった場合でも、王家が直々に新たな婚約者を探してくれたりもする為、婚約者から外れたとしても、その令嬢達が不利に扱われたりする事がなくなったのだ。

そんな婚約者候補の1人になった私。

選ばれた時は、確かに嬉しかった。勿論、第一王子も喜んでくれたと思う。

『フェリシティが僕の婚約者候補だなんて、本当嬉しいよ!勉強は大変かもしれないけど、一緒に頑張ってもらえると…僕はもっとうれしい!』


『お互い、笑顔でいられる存在になりたいな。』


あの言葉が…嘘じゃなかったなら──




いつからだっただろう?
いつも私に微笑んでくれていたのが、あまり笑わなくなった。
お互い成長したから、第一王子も少しずつ大人?になってきたのかな?なんて思ったりしていた。

それが───




『お前は、いつも笑っているな。いや…笑っているだけで褒められて…楽で良いな。』



ある日のお茶会で、冷たい目をした第一王子に浴びせられたその言葉に、私はヒュッと息を呑んだ。

“楽で良いな”?──

第一王子に気付かれないように、テーブルの下で手をギュッと握り締める。

お互い笑い合える存在になりたいと言ったのは誰だった?

王妃となれば、感情を出し過ぎてはいけない。出すな─とは言わないが、その場では何事もないように隠せ。

だから、私は辛い時でもできるだけ笑顔で隠すように頑張った。なのに、第一王子はそれを否定したのだ。

その日は、それから第一王子とどんな会話をして、どうやって家まで帰って来たのか…殆ど覚えていない。

兎に角、その頃から私は笑う事を──止めたのだ。

笑うな──と、あなたが言ったから。

それからは、月に一度の第一王子とのお茶会をそれとなく断り、学園に通う迄は辺境地に引き篭もった。そんなわけで、久し振りに第一王子に会う事になったのは、私が学園に入学してからだった。

入学式が終わると、私を含め婚約者候補の5人が王城へと呼び出された。
てっきり婚約者候補から外れてるんじゃないかと思っていただけに、私はかなり驚いたけど。


3年振り位に見た第一王子は、更に美男子へと成長していた。そして、その顔には、昔と変わらない優しい微笑みをたたていたけど…私にはもう、その笑顔さえ信じられなかった。

ただただ、幼い頃の思い出を胸に、私は選ばれる事はないだろう婚約者候補の1人としての学園生活が始まったのだった。



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