4 / 55
グレイシーとエルド
しおりを挟む
「フェリシティ!」
入学式の翌日。学園に登校すると、名前を呼ばれ振り返ると、そこには幼馴染みでもあるグレイシーが居た。
「グレイシー、おはよう。」
「フェリシティ、おはよう。昨日はお喋りができなくて寂しかったけど、今日は大丈夫?」
「昨日はごめんなさい。王城から呼び出しがあって…。でも、今日は時間があるわよ。」
「やったー!それじゃあ、帰りにどこかでランチを食べて、私の邸でゆっくりしましょう!お母様も、フェリシティに会えるのを楽しみにしてたのよ。」
「ふふっ。それは、私も楽しみだわ。」
ーグレイシー=オルコットー
エルダイン領の隣の領地を治めている、オルコット伯爵の令嬢である。第一王子よりも付き合いは長い。
そして、この学園でも同じクラスになれた。
「はぁー同じクラスにメルヴィル様も居るなんてね…。」
「何?グレイシーは、今でも殿下とは仲の良い幼馴染みでしょう?」
「仲が良い─と言ってもねぇ…エルドが居るからでしょう?」
ーエルド=リステリアー
エルドは、このグレイシーの婚約者であり、第一王子の側近候補でもある侯爵家の次男である。そして、第一騎士団団長である父を持ち、エルド自身も騎士見習いとして騎士団に所属している。
2人の婚約は、このエルドの一目惚れで、侯爵家からの婚約申し込みを断られる筈がなく──それでも、今ではすっかり仲の良い2人で、見ている私も温かい気持ちになれる程だ。
「と言うか、メルヴィル様とフェリシティは…相変わらずなのね。」
と、グレイシーは苦笑する。
「相変わらずと言うか……私は殿下のお気持ちに添ってるだけよ?」
「んー…それはそうなんだけどね。ま、私はフェリシティが良いなら良いわ。」
そう言うグレイシーと一緒に、私達は教室へと向かった。
「グレイシー、おはよう。」
「エルド、おはようございます。」
教室に入り、真っ先に挨拶にやって来たのは、グレイシーの婚約者であるエルド=リステリア様だった。このリステリア様も、同じクラスである。
「これから毎朝、グレイシーの顔が見られると思ったら、俺は本当に幸せだよ!」
「─っ!エルドっ!!」
グレイシーの顔は真っ赤だけど、砂糖を吐いたエルドは至って普通の顔──否、満面の笑みだ。
「ふふっ。ご馳走様です。」
「フェリ!!」
「あぁ!こうして直接会って話すのは初めてでしたね。俺はエルド=リステリア。いつも、グレイシーからあなたの事を聞いていたので、会って話をしてみたいと思っていたんです。俺の事は、エルドと呼んでくれ。」
「ご挨拶、ありがとうございます。私はフェリシティ=エルダインです。私の事もフェリシティとお呼び下さい。」
そして、エルド様はそのまま視線をフッと動かして
「挨拶しようにも、メルヴィルの周りには人が居るから、大変だな。」
そう言われて、私も第一王子に視線を向ける。
確かに、第一王子の周りには男女関係無く数人が集まり、第一王子を囲んでいる。
「──あの中を、態々挨拶をしに行くのも…必要ないでしょうね。」
ー第一王子は、私からの挨拶なんて望んでないだろうしねー
久し振りに会った昨日。国王両陛下との謁見の後、婚約者候補5人と第一王子とのお茶会があったが──
最初に挨拶を交しただけで、その後は、私は第一王子とは一言も言葉を交わす事はなかった。他の4人の候補者達が、とても嬉しそうに第一王子と話しているのを、私はただただ眺めていただけだった。
第一王子とは、視線すら合わなかった。
そんなお茶会──楽しい筈もない。早く終われば良いのに─と、呪文のように心の中で繰り返し呟いていたのは、私だけの秘密だ。
学園2日目の今日は、これからの授業の説明と、校内案内だけの午前中で終わった。その為、私はグレイシーと一緒にランチのできる店へとやって来た。この後、グレイシーの家に遊びに行く為に、エルダインの馬車には先に帰ってもらった。因みに、グレイシー付きの侍女メリルと、ココも幼馴染みなので、この2人も一緒に来ている。まぁ、主従関係はあるが、この4人ともが幼馴染みなのである。
その4人でランチをした後、久し振りにグレイシーの家─オルコット伯爵邸へとやって来た。
「フェリシティ!久し振りね!」
そこで出迎えてくれたのは、グレイシーの母親であるオルコット伯爵夫人のペティ様。
「ペティ様、お久し振りです。」
「もー!そんな他人行儀な挨拶は止めてちょうだい!ソフィアの子供のフェリシティは、私の子も同然なのだからね!」
「ふふっ。ペティ様、ありがとう。」
このペティ様と私の母は、学園時代からの親友だったそうだ。その為、母が儚くなった後、父が子連れで後妻を迎え入れた時は──怒り狂っていた。はい。文字通り怒り狂っていた。何故か、幼いながらも私とグレイシーで必死に宥めたのを覚えている。そのお陰?か、悲しかった私の心が少し救われた気がした。私の代わりに怒ってくれる人が居るのか─と。
なので、私はこのペティ様が大好きだ。
入学式の翌日。学園に登校すると、名前を呼ばれ振り返ると、そこには幼馴染みでもあるグレイシーが居た。
「グレイシー、おはよう。」
「フェリシティ、おはよう。昨日はお喋りができなくて寂しかったけど、今日は大丈夫?」
「昨日はごめんなさい。王城から呼び出しがあって…。でも、今日は時間があるわよ。」
「やったー!それじゃあ、帰りにどこかでランチを食べて、私の邸でゆっくりしましょう!お母様も、フェリシティに会えるのを楽しみにしてたのよ。」
「ふふっ。それは、私も楽しみだわ。」
ーグレイシー=オルコットー
エルダイン領の隣の領地を治めている、オルコット伯爵の令嬢である。第一王子よりも付き合いは長い。
そして、この学園でも同じクラスになれた。
「はぁー同じクラスにメルヴィル様も居るなんてね…。」
「何?グレイシーは、今でも殿下とは仲の良い幼馴染みでしょう?」
「仲が良い─と言ってもねぇ…エルドが居るからでしょう?」
ーエルド=リステリアー
エルドは、このグレイシーの婚約者であり、第一王子の側近候補でもある侯爵家の次男である。そして、第一騎士団団長である父を持ち、エルド自身も騎士見習いとして騎士団に所属している。
2人の婚約は、このエルドの一目惚れで、侯爵家からの婚約申し込みを断られる筈がなく──それでも、今ではすっかり仲の良い2人で、見ている私も温かい気持ちになれる程だ。
「と言うか、メルヴィル様とフェリシティは…相変わらずなのね。」
と、グレイシーは苦笑する。
「相変わらずと言うか……私は殿下のお気持ちに添ってるだけよ?」
「んー…それはそうなんだけどね。ま、私はフェリシティが良いなら良いわ。」
そう言うグレイシーと一緒に、私達は教室へと向かった。
「グレイシー、おはよう。」
「エルド、おはようございます。」
教室に入り、真っ先に挨拶にやって来たのは、グレイシーの婚約者であるエルド=リステリア様だった。このリステリア様も、同じクラスである。
「これから毎朝、グレイシーの顔が見られると思ったら、俺は本当に幸せだよ!」
「─っ!エルドっ!!」
グレイシーの顔は真っ赤だけど、砂糖を吐いたエルドは至って普通の顔──否、満面の笑みだ。
「ふふっ。ご馳走様です。」
「フェリ!!」
「あぁ!こうして直接会って話すのは初めてでしたね。俺はエルド=リステリア。いつも、グレイシーからあなたの事を聞いていたので、会って話をしてみたいと思っていたんです。俺の事は、エルドと呼んでくれ。」
「ご挨拶、ありがとうございます。私はフェリシティ=エルダインです。私の事もフェリシティとお呼び下さい。」
そして、エルド様はそのまま視線をフッと動かして
「挨拶しようにも、メルヴィルの周りには人が居るから、大変だな。」
そう言われて、私も第一王子に視線を向ける。
確かに、第一王子の周りには男女関係無く数人が集まり、第一王子を囲んでいる。
「──あの中を、態々挨拶をしに行くのも…必要ないでしょうね。」
ー第一王子は、私からの挨拶なんて望んでないだろうしねー
久し振りに会った昨日。国王両陛下との謁見の後、婚約者候補5人と第一王子とのお茶会があったが──
最初に挨拶を交しただけで、その後は、私は第一王子とは一言も言葉を交わす事はなかった。他の4人の候補者達が、とても嬉しそうに第一王子と話しているのを、私はただただ眺めていただけだった。
第一王子とは、視線すら合わなかった。
そんなお茶会──楽しい筈もない。早く終われば良いのに─と、呪文のように心の中で繰り返し呟いていたのは、私だけの秘密だ。
学園2日目の今日は、これからの授業の説明と、校内案内だけの午前中で終わった。その為、私はグレイシーと一緒にランチのできる店へとやって来た。この後、グレイシーの家に遊びに行く為に、エルダインの馬車には先に帰ってもらった。因みに、グレイシー付きの侍女メリルと、ココも幼馴染みなので、この2人も一緒に来ている。まぁ、主従関係はあるが、この4人ともが幼馴染みなのである。
その4人でランチをした後、久し振りにグレイシーの家─オルコット伯爵邸へとやって来た。
「フェリシティ!久し振りね!」
そこで出迎えてくれたのは、グレイシーの母親であるオルコット伯爵夫人のペティ様。
「ペティ様、お久し振りです。」
「もー!そんな他人行儀な挨拶は止めてちょうだい!ソフィアの子供のフェリシティは、私の子も同然なのだからね!」
「ふふっ。ペティ様、ありがとう。」
このペティ様と私の母は、学園時代からの親友だったそうだ。その為、母が儚くなった後、父が子連れで後妻を迎え入れた時は──怒り狂っていた。はい。文字通り怒り狂っていた。何故か、幼いながらも私とグレイシーで必死に宥めたのを覚えている。そのお陰?か、悲しかった私の心が少し救われた気がした。私の代わりに怒ってくれる人が居るのか─と。
なので、私はこのペティ様が大好きだ。
192
あなたにおすすめの小説
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる