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お披露目
しおりを挟む「ご案内致します。」
パーティー参加者が入場し終えただろう時間─6時少し前に、この部屋迄案内してくれた城付きの女官が、また訪れて来た。
「分かりました。」
ココはこの部屋で待機となる為、私はココに視線を合わせて静かに頷く。
「お嬢様、いってらっしゃいませ。」
ココに満面の笑みで見送られた。
******
案内されたのは、ホールの入り口の扉の前。今は、その扉はピッチリと閉じられている。
その扉の前には私と同じような格好をしている4人が1列に並んでいて、その4人の前─先頭に王妃様と並んでティアラを戴いている候補者が、第一王子の婚約者である。
ーさて、この扉が開いた瞬間、どうなるのかしら?ー
と思っていると、扉の向こう側─ホール内から少しのざわめきが起こった。扉が閉じられている為、中で何が起こったのか全く分からない。
そのざわめきも落ち着き暫くした後、扉の両サイドに控えていた騎士が動き出し、内側から扉が開かれた。
王妃と婚約者が並んだままでホール内へと進んで行くと、そこでまた小さなざわめきが起こる。そのままその2人が進んで行き、少し間を空けてから候補者だった4人が順番にホールへと入って行き、最後の候補者が入場すると、後ろで扉が閉まる音がした。
そのまま振り返ることなく前へ進む。
王妃様と婚約者は、ホール壇上に立つ国王陛下と第一王子の前迄行き、候補者だった残り4人は左側に並び立つ。
その左側へと逸れる時、ふと視線を感じてチラリとそちらに視線だけ向けると──
顔色を悪くして目を見開いている、第一王子と目が合った。
そして、その口が
“なぜ?”
と、動いた。
それでも、私は何も見なかったかのように視線を前に向ける。そして、候補者だった4人が左側に並び、ホール側に体を向けると、王妃様と婚約者もホール側に向き直る。
その婚約者の頭に輝いている宝石は青色──
ティアリーナ様の色だ──
「卒業生の皆さん、本日はおめでとう。今日、このような善き日に、もう一つのめでたい発表をさせていただきます。皆さんはもう、気付いているかと思いますが─こちらが、本日より第一王子であるメルヴィルの婚約者となります。」
王妃様が軽く挨拶をした後、その婚約者に視線を向けて促すと、彼女は半歩程前に出て──
「ティアリーナ=グレイソンでございます。宜しくお願い致します。」
そう挨拶するティアリーナ様は、花が綻ぶような微笑みだ。ホールに居る誰もが「ほう─」と、溜め息を漏らす程。体全体からも、喜びに溢れているのが分かる。そして、ホール内に起こった拍手喝采の中、2人はもう一度国王陛下と第一王子の方へと向き直り、そのまま王妃様が第一王子のもとへとティアリーナ様を連れて行く。
ホールに入る前のざわめきは──
“第一王子メルヴィル”
と、王妃様は言った。
立太子した場合ターコイズブルーのサッシュを身に着けるのだが、その第一王子は……着けていない。
そう言う事なんだろう。
今、第一王子の顔色が悪いのは、そのせい─と捉えられているだろう。実際は──。
その時、グレイシーとリオが視界に入った。その2人は……ものすごく……綺麗な笑顔だった。
これから、第一王子と婚約者になったティアリーナ様とのダンスが始まる為、王妃様がティアリーナ様を第一王子の側へと促す。
誰もが見惚れる程の笑顔のティアリーナ様とは対象的に、相変わらず顔色の悪い第一王子は、王妃様とティアリーナ様の2人に忙しなく視線を漂わせている。
「──メルヴィル」
と、一向に動かない第一王子に対し、国王陛下が名を呼ぶと、第一王子はビクッと体を震わせた後、ソロソロとティアリーナ様へと手を伸ばし、ティアリーナ様はその第一王子の手を取った。
それからティアリーナ様が第一王子の横に立ち、その手を第一王子の腕へと絡ませ、2人で並び立つ。
これで、婚約者決定だ。
ーようやく、私は…晴れて…自由の身だ!!ー
笑いそうになるのを、小躍りしそうになるのを、無表情のままでぐぅ─っと堪える。そんな私をグレイシーとリオがニヤニヤして見ている。
ー後で覚えておきなさい!ー
「2人ともおめでとう。ティアリーナ嬢、これからメルヴィルを宜しく頼む。」
国王陛下が笑顔で祝福すると、ティアリーナ様も笑顔で答える。
「それでは、これから皆には心ゆくまで楽しんでいってもらいたい。本当に、卒業おめでとう。」
第一王子とティアリーナ様がホールの中央へと移動した後、2人のダンスが始まった。
至近距離で顔を見合わせるダンス。そこで、ようやく?ティアリーナもおかしいと気付いたのかもしれない。
ダンスを始めてすぐ、あれ程の笑顔だったティアリーナ様だったのに、今では困惑したような表情で第一王子を見上げている。
その、見上げられている第一王子は、心ここに在らずと言ったように視線が定まらす、顔色も悪いままだった。
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