9 / 203
第一章ー最初の1年ー
久し振りの
しおりを挟む
サエラさんが欲しいと言った3日間。
サエラさんは、ずっと私の部屋に居た。誰かがこの部屋に来る時には、サエラさんは居ないかの様にどこかに隠れていた。
1日1食しか来ない日は、静かに怒っていた。そして、食材をどこからか調達して来て、私の部屋にあるキッチンで料理を作ってくれた。他にも、私の部屋の中の隅々まで、何かをチェックしていた。
そして、3日目の夜ー
「ハル様、この3日で十分過ぎる程の証拠が揃いました。明日、私はここに来れないかもしれませんが…早ければ明日の夜、もしくは明後日ですけど、またこちらにお伺いしても良いでしょうか?」
「はい、モチロンです」
断る理由なんてないし、むしろ、また来て下さいとお願いしたい位だ。
そして、その日はそのままサエラさんは退室して行った。
翌日、サエラさんは来なかった。もともと来れないかもと言っていたので、心配性のサエラさんはもしもの時の為にと、サンドイッチを作ってくれていた。
私も独り暮らしをしていて、ある程度の料理はできるから材料さえあれば大丈夫ですと言ったけど、サエラさんはどうしても私が作ります!と言って、作ってくれたのだ。そんな気持ちがこもったサンドイッチは、どんな豪華な料理よりも美味しかった。
ーサエラさん、明日は来てくれるかなぁ?ー
と思いながら、一人ベッドに潜り込んだ。
ザワザワ
バタバタバタバタ
「…ん?」
夜中、部屋の外が騒がしくて目が覚める。
ー何だろう?ー
私はともかく、横並びに聖女の部屋があるので、警護はしっかりしている。今まで、こんなに騒がしくなった事もないのに…珍しいな…と思って居ると…
「ハルは居る!?」
バンッと扉が開く大きな音と共に、誰かが大声で私を呼びながら入って来た。
「ミヤ…さん?」
「ハル!」
「ハルちゃん!」
ミヤさんに続いて、ショウさんとフジさんも部屋に飛び込んで来た。
久し振りだなぁ…と思っていると、3人ともが私に抱き付いて来た。
「ふぐぅっ…」
変な声が出たのは許して欲しい。寝起きな上に、3人がかりで力いっぱい私に抱き付いて来たのだ。圧迫されてます!!死にますよ!?
「あらあら。聖女様方、ハル様が苦しそうですよ?」
お姉さん達の後ろから、サエラさんが困った様な顔をしながらやって来た
「「「「サエラさん!」」」」
4人の声が重なる。
「聖女様方のお気持ちも分かりますが、今日はもう時間が遅いので、また明日になさいませ。」
「…分かったわ…」
お姉さん達は、サエラさんに言われて渋々私から離れた。
「ハル、色々話したい事、訊きたい事があるから、明日また、ここに来て良い?」
ミヤさんが泣きそうな顔をしながら訊いて来る。
「うん。来てくれると…嬉しい…」
ニコリと笑うと、ミヤさんが泣くのを我慢するかの様に、更に顔を歪ませた。
「さぁ、聖女様方、ハル様の側には私が付いていますから、今日は取り敢えずお部屋でおやすみ下さい。」
サエラさんが再度、お姉さん達に退室を促す。
「分かりました。サエラさん、ハルを…頼みますね。」
ミヤさんがそう言うと、3人とも私の部屋から出て行った。
「ハル様も、寝た方が良いと思いますが…今の騒動で目が覚めてしまいましたか?」
「目、さめた…けど、大じょぶ、ネレル。」
「そうですか?では、ハル様が寝る迄、ここに居ても良いですか?」
「はい、おねがいします」
私が横になると、サエラさんがそっと布団を掛けてくれる。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさいませ。」
久し振りに会ったお姉さん達が、何も変わっていなかった事と、優しい笑顔のサエラさんを見れた事に安心し、私はそのまま直ぐに眠りに就いた。
次の日の朝、起きた時には既にサエラさんが居て、朝食の準備をしてくれていた。
「おはようございます。よく眠れましたか?朝食は、食べれそうですか?」
「おはよーごさいます。よく、ねれた。ごはん、たべます。」
朝からサエラさんの笑顔…嬉しいなぁ。
「聖女様方からの伝言なんですが、朝食を摂った後、ハル様の部屋で話をしたいとの事ですが、ハル様は大丈夫ですか?」
「うん。大じょぶです。」
「では、今日はお天気も良いですから、テラスにでもお茶のご用意を致しましょうか?」
「はい!それ、いいですね!」
私がパッと喜ぶと、サエラさんもニッコリと微笑んでくれた。
「ハルーっ!」
「ハル!」
「ハルちゃん!!」
「ふぐぅっ」
昨夜と同じ様に、私の部屋にやって来た3人に抱き付かれ、圧迫された私はまた、変な声を出した。
「ふふっ。聖女様方、また、ハル様が潰れてしまいますよ?」
「あぁー!ハル、ごめんね?大丈夫?」
「う゛ー苦しかったけど大丈夫です。」
へへっと笑うと、ミヤさんが泣き出した。
「えっ!?ミヤさん?どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「うっ…ごめんね…大丈夫じゃなかったのは…ハルなのに…ごめんっ…」
「え?あの…え?」
意味が分からなくて、ショウさんとフジさんの方を見ると、2人も泣きそうな顔していた。
「取り敢えず、皆様椅子に座りましょうか?お話は、それからにしましょう?」
サエラさんにそう促され、皆で椅子に腰掛けた。
サエラさんは、ずっと私の部屋に居た。誰かがこの部屋に来る時には、サエラさんは居ないかの様にどこかに隠れていた。
1日1食しか来ない日は、静かに怒っていた。そして、食材をどこからか調達して来て、私の部屋にあるキッチンで料理を作ってくれた。他にも、私の部屋の中の隅々まで、何かをチェックしていた。
そして、3日目の夜ー
「ハル様、この3日で十分過ぎる程の証拠が揃いました。明日、私はここに来れないかもしれませんが…早ければ明日の夜、もしくは明後日ですけど、またこちらにお伺いしても良いでしょうか?」
「はい、モチロンです」
断る理由なんてないし、むしろ、また来て下さいとお願いしたい位だ。
そして、その日はそのままサエラさんは退室して行った。
翌日、サエラさんは来なかった。もともと来れないかもと言っていたので、心配性のサエラさんはもしもの時の為にと、サンドイッチを作ってくれていた。
私も独り暮らしをしていて、ある程度の料理はできるから材料さえあれば大丈夫ですと言ったけど、サエラさんはどうしても私が作ります!と言って、作ってくれたのだ。そんな気持ちがこもったサンドイッチは、どんな豪華な料理よりも美味しかった。
ーサエラさん、明日は来てくれるかなぁ?ー
と思いながら、一人ベッドに潜り込んだ。
ザワザワ
バタバタバタバタ
「…ん?」
夜中、部屋の外が騒がしくて目が覚める。
ー何だろう?ー
私はともかく、横並びに聖女の部屋があるので、警護はしっかりしている。今まで、こんなに騒がしくなった事もないのに…珍しいな…と思って居ると…
「ハルは居る!?」
バンッと扉が開く大きな音と共に、誰かが大声で私を呼びながら入って来た。
「ミヤ…さん?」
「ハル!」
「ハルちゃん!」
ミヤさんに続いて、ショウさんとフジさんも部屋に飛び込んで来た。
久し振りだなぁ…と思っていると、3人ともが私に抱き付いて来た。
「ふぐぅっ…」
変な声が出たのは許して欲しい。寝起きな上に、3人がかりで力いっぱい私に抱き付いて来たのだ。圧迫されてます!!死にますよ!?
「あらあら。聖女様方、ハル様が苦しそうですよ?」
お姉さん達の後ろから、サエラさんが困った様な顔をしながらやって来た
「「「「サエラさん!」」」」
4人の声が重なる。
「聖女様方のお気持ちも分かりますが、今日はもう時間が遅いので、また明日になさいませ。」
「…分かったわ…」
お姉さん達は、サエラさんに言われて渋々私から離れた。
「ハル、色々話したい事、訊きたい事があるから、明日また、ここに来て良い?」
ミヤさんが泣きそうな顔をしながら訊いて来る。
「うん。来てくれると…嬉しい…」
ニコリと笑うと、ミヤさんが泣くのを我慢するかの様に、更に顔を歪ませた。
「さぁ、聖女様方、ハル様の側には私が付いていますから、今日は取り敢えずお部屋でおやすみ下さい。」
サエラさんが再度、お姉さん達に退室を促す。
「分かりました。サエラさん、ハルを…頼みますね。」
ミヤさんがそう言うと、3人とも私の部屋から出て行った。
「ハル様も、寝た方が良いと思いますが…今の騒動で目が覚めてしまいましたか?」
「目、さめた…けど、大じょぶ、ネレル。」
「そうですか?では、ハル様が寝る迄、ここに居ても良いですか?」
「はい、おねがいします」
私が横になると、サエラさんがそっと布団を掛けてくれる。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさいませ。」
久し振りに会ったお姉さん達が、何も変わっていなかった事と、優しい笑顔のサエラさんを見れた事に安心し、私はそのまま直ぐに眠りに就いた。
次の日の朝、起きた時には既にサエラさんが居て、朝食の準備をしてくれていた。
「おはようございます。よく眠れましたか?朝食は、食べれそうですか?」
「おはよーごさいます。よく、ねれた。ごはん、たべます。」
朝からサエラさんの笑顔…嬉しいなぁ。
「聖女様方からの伝言なんですが、朝食を摂った後、ハル様の部屋で話をしたいとの事ですが、ハル様は大丈夫ですか?」
「うん。大じょぶです。」
「では、今日はお天気も良いですから、テラスにでもお茶のご用意を致しましょうか?」
「はい!それ、いいですね!」
私がパッと喜ぶと、サエラさんもニッコリと微笑んでくれた。
「ハルーっ!」
「ハル!」
「ハルちゃん!!」
「ふぐぅっ」
昨夜と同じ様に、私の部屋にやって来た3人に抱き付かれ、圧迫された私はまた、変な声を出した。
「ふふっ。聖女様方、また、ハル様が潰れてしまいますよ?」
「あぁー!ハル、ごめんね?大丈夫?」
「う゛ー苦しかったけど大丈夫です。」
へへっと笑うと、ミヤさんが泣き出した。
「えっ!?ミヤさん?どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「うっ…ごめんね…大丈夫じゃなかったのは…ハルなのに…ごめんっ…」
「え?あの…え?」
意味が分からなくて、ショウさんとフジさんの方を見ると、2人も泣きそうな顔していた。
「取り敢えず、皆様椅子に座りましょうか?お話は、それからにしましょう?」
サエラさんにそう促され、皆で椅子に腰掛けた。
215
あなたにおすすめの小説
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!
山田 バルス
恋愛
この屋敷は、わたしの居場所じゃない。
薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。
かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。
「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」
「ごめんなさい、すぐに……」
「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」
「……すみません」
トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。
この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。
彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。
「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」
「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」
「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」
三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。
夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。
それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。
「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」
声が震える。けれど、涙は流さなかった。
屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。
だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。
いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。
そう、小さく、けれど確かに誓った。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる