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第一章ー最初の1年ー
悪意
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「先ず、この1ヶ月の私達の状況を話すわね。」
泣いているミヤさんの横で、ショウさんが話し出した。
4人一緒の勉強が終わった次の日から、あの魔導師の指導のもと、聖女の力の訓練が始まった。少しでも早く浄化が出来るようになる為に、少しでも早く日本に還る為に、毎日朝早くからその日の許す限りの時間迄、クタクタになりながらも頑張っていた。勿論、朝は早いし、お昼は訓練場のある城の別室でとる。夜は遅いので各々自室でとる毎日だった。たまに早く終わった日は、ハルの部屋に行こうってなったりもしたが、ハル付きの侍女に、
「ハル様は、今はいません。」
「ハル様は、もう寝ています。」
とか言われて会えなかった。
それに、ハルの勉強は捗ってる?大丈夫?他にも何か困ったりしてない?と、ハル付きの侍女達に訊くと
「ハル様は、勉強が嫌だと言ってあまりお勉強をされていません。」
「食事も好き嫌いが多いようで、よく食事を残されるので、料理長も困っています。」
「こちらの世界のルールもよく分からないようで…私達が側に居るのも嫌なようで、よく追い出されるのです。」
と、ハル付きの侍女達に言われた。
勿論、私達3人はその話を信じる事はできなかった。だけど、その侍女達があちこちでその話をするから、あっと言う間にこの城内にその噂が広まってしまった。
私達はハルに直接会う迄は、そんな噂なんて信じない。ハルに会わせろと何度も言ったけど、聖女としてすべき事を優先して欲しい。今は我が儘放題と言われるハルには会わせられないと王太子殿下に直接言われた。王太子殿下にそう言われたら、誰も逆らえない。
それでも、ハルを私達聖女と同じ様に対応すると王様と宰相様が約束してくれていたから、それを信じる事にした。
そんなモヤモヤした日を過ごしていたある日、私達が訓練をしているところに第一王女様が見学をしに来た。
「ねぇ、ハル様は本当に噂通りの方なの?」
第一王女ベラトリス様は、開口一番に私達に訊いて来た。そこで、ようやく話を聞いてくれる人が現れたとばかりに王女様に話をした。その話を王女様の後ろに控えて聞いていたのがサエラさんだった。サエラさんは、もともと王女様の母である現王妃様付きの侍女だった。サエラさんが復帰した後、王妃の願いでベラトリス様付きになったのだ。
「お許しいただけるのであれば、私がハル様の様子を見て参りましょうか?」
そんな話をしている所に、王太子殿下が訓練場にやって来た。だけど、いつも側で控えている近衛騎士のエディオル=カルザイン様が居ない事が気になって、どうしたのか?と訊くと─
「聖女様達が気になると言うので、エディオルに様子を見に行かせた」
と言う。それに驚いたのが私達。ハルは男性が苦手…男性恐怖症に近いものがある。と言うと、サエラさんが慌ててハルの部屋へ駆け付けてくれたと。
「あぁ、だから、あの時サエラさんが来てくれたんですね。」
「後からサエラさんから聞いたんだけど、その時のハル、今にも倒れそうだったって…本当に、何もされてない?」
「はい、何もされてません。ただ…本当に…怖かっただけなんです…」
「それでも!噂だけを信じて目の前のものを見ないなんて…許せるものじゃないけどね!」
と、ようやく泣き止んだミヤさんが息巻いている。
「兎に角、これが、ここ1ヶ月のこちら側の状況の話ね。次は…ハル側の状況の話。」
ショウさんがチラリとサエラさんを見ながらそう言うと、スッとサエラさんが私の横に来た。
「この1ヶ月のハル様の状況のお話は、私からさせていただきます。」
ハル様に付いた侍女は3人。3人とも男爵家の令嬢であった。聖女付きになれると思いきや、まさかの巻き込まれでやって来たただの平民。しかも言葉が理解できないし喋れない。色々な不満を、嫌がらせで発散していた。先ずは、ハル様に付けた筈の語学の先生。その先生は予定通りに約束の日にやって来ていた。だが、場所はハル様の部屋ではなく、王城の客室だった。だったのだが、その事をハル様に伝えなかった。しかも、その語学の先生には
「勉強が嫌だと言って、部屋から出て来ない」
と、嘘をついた。勿論、その先生はその場で怒り帰ってしまった。
それから、食事やお菓子にも少しずつ嫌がらせをし始める。
「食事が不味いと言って食べない。」
「辛い物が好きらしい。」
「野菜が嫌いだから、具がないスープが良い」
等々、好き嫌いで我が儘だと、料理長も手を抜くようになる。
「私達から取り上げたお菓子でお腹がいっぱいだから、食事は要らないそうです。」
とハル様付きの侍女が言えば、料理長もそれを疑わず作らなくなる。そうして、ハル様の食事が1食や2食出なくても誰も不思議に思わなかったと。
「この世界でのルールに従うのが嫌で、私達侍女を側に置くのを嫌がって、いつも追い出されるんです。」
と、目を潤ませて訴えれば、今迄の噂がある分信憑性を持たせ、更に周りがそれを信じる。
気が付けば、ハル様は傲慢かつ我が儘な巻き込まれ異世界人となっていた。
*今日中に、もう1話投稿する予定です*
泣いているミヤさんの横で、ショウさんが話し出した。
4人一緒の勉強が終わった次の日から、あの魔導師の指導のもと、聖女の力の訓練が始まった。少しでも早く浄化が出来るようになる為に、少しでも早く日本に還る為に、毎日朝早くからその日の許す限りの時間迄、クタクタになりながらも頑張っていた。勿論、朝は早いし、お昼は訓練場のある城の別室でとる。夜は遅いので各々自室でとる毎日だった。たまに早く終わった日は、ハルの部屋に行こうってなったりもしたが、ハル付きの侍女に、
「ハル様は、今はいません。」
「ハル様は、もう寝ています。」
とか言われて会えなかった。
それに、ハルの勉強は捗ってる?大丈夫?他にも何か困ったりしてない?と、ハル付きの侍女達に訊くと
「ハル様は、勉強が嫌だと言ってあまりお勉強をされていません。」
「食事も好き嫌いが多いようで、よく食事を残されるので、料理長も困っています。」
「こちらの世界のルールもよく分からないようで…私達が側に居るのも嫌なようで、よく追い出されるのです。」
と、ハル付きの侍女達に言われた。
勿論、私達3人はその話を信じる事はできなかった。だけど、その侍女達があちこちでその話をするから、あっと言う間にこの城内にその噂が広まってしまった。
私達はハルに直接会う迄は、そんな噂なんて信じない。ハルに会わせろと何度も言ったけど、聖女としてすべき事を優先して欲しい。今は我が儘放題と言われるハルには会わせられないと王太子殿下に直接言われた。王太子殿下にそう言われたら、誰も逆らえない。
それでも、ハルを私達聖女と同じ様に対応すると王様と宰相様が約束してくれていたから、それを信じる事にした。
そんなモヤモヤした日を過ごしていたある日、私達が訓練をしているところに第一王女様が見学をしに来た。
「ねぇ、ハル様は本当に噂通りの方なの?」
第一王女ベラトリス様は、開口一番に私達に訊いて来た。そこで、ようやく話を聞いてくれる人が現れたとばかりに王女様に話をした。その話を王女様の後ろに控えて聞いていたのがサエラさんだった。サエラさんは、もともと王女様の母である現王妃様付きの侍女だった。サエラさんが復帰した後、王妃の願いでベラトリス様付きになったのだ。
「お許しいただけるのであれば、私がハル様の様子を見て参りましょうか?」
そんな話をしている所に、王太子殿下が訓練場にやって来た。だけど、いつも側で控えている近衛騎士のエディオル=カルザイン様が居ない事が気になって、どうしたのか?と訊くと─
「聖女様達が気になると言うので、エディオルに様子を見に行かせた」
と言う。それに驚いたのが私達。ハルは男性が苦手…男性恐怖症に近いものがある。と言うと、サエラさんが慌ててハルの部屋へ駆け付けてくれたと。
「あぁ、だから、あの時サエラさんが来てくれたんですね。」
「後からサエラさんから聞いたんだけど、その時のハル、今にも倒れそうだったって…本当に、何もされてない?」
「はい、何もされてません。ただ…本当に…怖かっただけなんです…」
「それでも!噂だけを信じて目の前のものを見ないなんて…許せるものじゃないけどね!」
と、ようやく泣き止んだミヤさんが息巻いている。
「兎に角、これが、ここ1ヶ月のこちら側の状況の話ね。次は…ハル側の状況の話。」
ショウさんがチラリとサエラさんを見ながらそう言うと、スッとサエラさんが私の横に来た。
「この1ヶ月のハル様の状況のお話は、私からさせていただきます。」
ハル様に付いた侍女は3人。3人とも男爵家の令嬢であった。聖女付きになれると思いきや、まさかの巻き込まれでやって来たただの平民。しかも言葉が理解できないし喋れない。色々な不満を、嫌がらせで発散していた。先ずは、ハル様に付けた筈の語学の先生。その先生は予定通りに約束の日にやって来ていた。だが、場所はハル様の部屋ではなく、王城の客室だった。だったのだが、その事をハル様に伝えなかった。しかも、その語学の先生には
「勉強が嫌だと言って、部屋から出て来ない」
と、嘘をついた。勿論、その先生はその場で怒り帰ってしまった。
それから、食事やお菓子にも少しずつ嫌がらせをし始める。
「食事が不味いと言って食べない。」
「辛い物が好きらしい。」
「野菜が嫌いだから、具がないスープが良い」
等々、好き嫌いで我が儘だと、料理長も手を抜くようになる。
「私達から取り上げたお菓子でお腹がいっぱいだから、食事は要らないそうです。」
とハル様付きの侍女が言えば、料理長もそれを疑わず作らなくなる。そうして、ハル様の食事が1食や2食出なくても誰も不思議に思わなかったと。
「この世界でのルールに従うのが嫌で、私達侍女を側に置くのを嫌がって、いつも追い出されるんです。」
と、目を潤ませて訴えれば、今迄の噂がある分信憑性を持たせ、更に周りがそれを信じる。
気が付けば、ハル様は傲慢かつ我が儘な巻き込まれ異世界人となっていた。
*今日中に、もう1話投稿する予定です*
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