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第二章ー浄化の旅と帰還ー
薬師としての日々
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浄化の旅に出てから半年。概ね計画通り、順調に進んでいた。
王都に近い街は、穢れがあまりない。ないと言う事は、魔獣なんかも居ないので、ひたすら距離を進むと言う感じだった。
「ハル、魔力回復のポーション持ってる?」
「はい。レベル1から3まで、まだ何本かずつあります。足りないようなら、作っておきますか?」
「今ね、回復ポーションが欲しいって、ダルシニアン様が来ているのよ。私、今手持ちを切らしてるから、ハルのを渡してくれる?」
そう私に声を掛けて来たのは、同じ薬師として同行している3人のうちの1人、ミリリーナ=アルトロスさん。ピンク色のフワフワした髪と瞳をしていて、とても可愛らしい人だ。後1人はロイド=メルティアン様。30歳の落ち着いたお兄さんみたいな人だ。
「あぁ、ハル殿。最近見掛けなかったけど、大丈夫だった?」
そのミリリーナさんの後ろから、ひょこっと顔を出して来たのは、攻略対象者の1人だった魔導師のダルシニアン様だった。
「ダルシニアン様、こん…にちは。この2日間程は、ポーションを作っていたので、籠っていただけなんです。すみません…。」
「いや、謝らなくて良いよ?姿を見なかったから、体調でも崩したのかと思っただけだから。元気なら…良かったよ。」
フワリと、優しく笑む。
攻略対象者、魔導師クレイル=ダルシニアン様。旅が始まって何日か経ったある日
「君、召還されて来た子…だよね?薬師になったんだってね?1年も経たずに…すごいね。」
と、声を掛けられたのだ。ミリリーナさんには、私が男性が苦手だと話して居たので、スッと私の横に来て一緒に居てくれた。
その時の私は、確かにビックリして少し挙動不審なところもあったと思うが、このダルシニアン様、顔が整い過ぎてて中性的な雰囲気があり、しかも物腰柔らかな人で、あまり恐怖心を抱かなかったのだ。
それ以降、何かと気に掛けてくれるようになり、私も普通に会話ができるようになっていた。
ー薬師になれたのも…魔法使いのお陰なんだよねー
作りたいポーションを意識すると、必要な薬草や量、作り方等の情報が頭の中に流れ込んで来るのだ。映像付きで。
ーこの世界は、モブに優しい世界なのかもしれないー
「ダルシニアン様、回復ポーションのレベルはどれにしますか?1から3迄ありますけど。」
「それじゃあ、1と2を一本ずつもらえるかな?」
「分かりました…どうぞ。両方ともダルシニアン様が?」
「いや、1は私がもらうけど、2は…エディオルの分だよ。」
“エディオル”
その名前を耳にして、思わずビクッと肩が揺れてしまった。
ダルシニアン様は、それに気付いた様で…少し困った様な顔をして、私の手から2本のポーションを取り上げた。
「ポーション、ありがとう。じゃあ、これで。」
と、私に何か言う事もなく、立ち去って行った。
ー名前を聞いただけでコレだもんなぁー
はぁー…と、自分でも溜め息が出る。
この旅が始まってから半年。ダルシニアン様は勿論、騎士の人達ともそこそこ普通には…喋れている筈なんだけど…。どうしてもカルザイン様に対しては、ついつい体が強ばってしまうのだ。カルザイン様もそれに気付いているのか、私には殆ど近付いて来ない。今みたいに、ポーションが必要になったとしても、私じゃない薬師の所に行くか、他の人が来るか…。
何となく、申し訳無くなる。謝罪を受け取っておいて、この態度…。
『すぐに変わる、変える事なんて無理よ?ゆっくりで良いのよ。自分の心に向き合いながら、無理のないように進めばいいのよ?』
と、焦る私に色々な事情を知っていたミリリーナさんは言ってくれた。
このミリリーナさん、実は王宮付きの薬師さんで、ベラトリス様付きの薬師でもある。この旅の同行が決まった時、ベラトリス様から私の話を聞き、何かあったら助けてあげて欲しいと言われていたそうだ。
ー本当に、ベラトリス様の優しさと心遣いには敬服致します。ー
旅に出て10ヶ月を超えて来ると、穢れのある場所が増え始めた。聖女様は、そこに居るだけで多少の穢れや魔を祓うので、魔獣が現れるとまではきていないが、騎士様達の雰囲気が少しずつピリピリした物になっているのは肌で感じる位に分かった。
そうなると、もともと“聖女”と“薬師”で立場も役割も違うから、お姉さん達と一緒に居る時間もあまりなかったのが更に増え、顔を見る事もできない日も増えて行った。
以前の私なら、またクヨクヨしていたかもしれないけど、(ズルをしている感は否めないけど)薬師として地に足を着けている為か、頑張ろうと思えるようになっていた。それに、何かと気を配ってくれるミリリーナさんやダルシニアン様も居る。これからもっと大変になるだろうけど、前を向いて頑張って行こう!
それと、お姉さん達が、怪我をしませんように…。
そう願いながら、今日も薬師としての1日を過ごした。
*今日中に、登場人物を追加更新します*
王都に近い街は、穢れがあまりない。ないと言う事は、魔獣なんかも居ないので、ひたすら距離を進むと言う感じだった。
「ハル、魔力回復のポーション持ってる?」
「はい。レベル1から3まで、まだ何本かずつあります。足りないようなら、作っておきますか?」
「今ね、回復ポーションが欲しいって、ダルシニアン様が来ているのよ。私、今手持ちを切らしてるから、ハルのを渡してくれる?」
そう私に声を掛けて来たのは、同じ薬師として同行している3人のうちの1人、ミリリーナ=アルトロスさん。ピンク色のフワフワした髪と瞳をしていて、とても可愛らしい人だ。後1人はロイド=メルティアン様。30歳の落ち着いたお兄さんみたいな人だ。
「あぁ、ハル殿。最近見掛けなかったけど、大丈夫だった?」
そのミリリーナさんの後ろから、ひょこっと顔を出して来たのは、攻略対象者の1人だった魔導師のダルシニアン様だった。
「ダルシニアン様、こん…にちは。この2日間程は、ポーションを作っていたので、籠っていただけなんです。すみません…。」
「いや、謝らなくて良いよ?姿を見なかったから、体調でも崩したのかと思っただけだから。元気なら…良かったよ。」
フワリと、優しく笑む。
攻略対象者、魔導師クレイル=ダルシニアン様。旅が始まって何日か経ったある日
「君、召還されて来た子…だよね?薬師になったんだってね?1年も経たずに…すごいね。」
と、声を掛けられたのだ。ミリリーナさんには、私が男性が苦手だと話して居たので、スッと私の横に来て一緒に居てくれた。
その時の私は、確かにビックリして少し挙動不審なところもあったと思うが、このダルシニアン様、顔が整い過ぎてて中性的な雰囲気があり、しかも物腰柔らかな人で、あまり恐怖心を抱かなかったのだ。
それ以降、何かと気に掛けてくれるようになり、私も普通に会話ができるようになっていた。
ー薬師になれたのも…魔法使いのお陰なんだよねー
作りたいポーションを意識すると、必要な薬草や量、作り方等の情報が頭の中に流れ込んで来るのだ。映像付きで。
ーこの世界は、モブに優しい世界なのかもしれないー
「ダルシニアン様、回復ポーションのレベルはどれにしますか?1から3迄ありますけど。」
「それじゃあ、1と2を一本ずつもらえるかな?」
「分かりました…どうぞ。両方ともダルシニアン様が?」
「いや、1は私がもらうけど、2は…エディオルの分だよ。」
“エディオル”
その名前を耳にして、思わずビクッと肩が揺れてしまった。
ダルシニアン様は、それに気付いた様で…少し困った様な顔をして、私の手から2本のポーションを取り上げた。
「ポーション、ありがとう。じゃあ、これで。」
と、私に何か言う事もなく、立ち去って行った。
ー名前を聞いただけでコレだもんなぁー
はぁー…と、自分でも溜め息が出る。
この旅が始まってから半年。ダルシニアン様は勿論、騎士の人達ともそこそこ普通には…喋れている筈なんだけど…。どうしてもカルザイン様に対しては、ついつい体が強ばってしまうのだ。カルザイン様もそれに気付いているのか、私には殆ど近付いて来ない。今みたいに、ポーションが必要になったとしても、私じゃない薬師の所に行くか、他の人が来るか…。
何となく、申し訳無くなる。謝罪を受け取っておいて、この態度…。
『すぐに変わる、変える事なんて無理よ?ゆっくりで良いのよ。自分の心に向き合いながら、無理のないように進めばいいのよ?』
と、焦る私に色々な事情を知っていたミリリーナさんは言ってくれた。
このミリリーナさん、実は王宮付きの薬師さんで、ベラトリス様付きの薬師でもある。この旅の同行が決まった時、ベラトリス様から私の話を聞き、何かあったら助けてあげて欲しいと言われていたそうだ。
ー本当に、ベラトリス様の優しさと心遣いには敬服致します。ー
旅に出て10ヶ月を超えて来ると、穢れのある場所が増え始めた。聖女様は、そこに居るだけで多少の穢れや魔を祓うので、魔獣が現れるとまではきていないが、騎士様達の雰囲気が少しずつピリピリした物になっているのは肌で感じる位に分かった。
そうなると、もともと“聖女”と“薬師”で立場も役割も違うから、お姉さん達と一緒に居る時間もあまりなかったのが更に増え、顔を見る事もできない日も増えて行った。
以前の私なら、またクヨクヨしていたかもしれないけど、(ズルをしている感は否めないけど)薬師として地に足を着けている為か、頑張ろうと思えるようになっていた。それに、何かと気を配ってくれるミリリーナさんやダルシニアン様も居る。これからもっと大変になるだろうけど、前を向いて頑張って行こう!
それと、お姉さん達が、怪我をしませんように…。
そう願いながら、今日も薬師としての1日を過ごした。
*今日中に、登場人物を追加更新します*
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