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第三章ーパルヴァン辺境地ー
パルヴァン邸
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*本日、2話目の投稿です*
「だから…1ヶ月…1ヶ月だけで良いので、その間ここに置いてくれませんか?それと…私がここに居る事は…出来れば誰にも知られたくないんです。」
「ハル殿…。もし…もし、還れないとなった場合はどうするつもりだ?」
「その場合は…私は“薬師”の資格を持っているので、何処かで薬師としてやっていければと思ってます。還れないなら…しっかり自分の足で立って前に…進みたいから…。」
王様に助けを求めたら、きっと助けてくれるだろう。ベラトリス様だって喜んで迎えてくれると思う。でも、やっぱり怖いのだ。貴族の世界は怖いー。贅沢なんていらない。1人で立って、食べていけたらそれで良い。
パルヴァン様は暫くの間逡巡した後
「分かった。取り敢えずは、1ヶ月はここで過ごしてくれ。その後の事は、還れるかどうかで変わって来るから、その時に話し合おう。勿論…ハル殿がここに居る事は箝口令を敷こう。」
「ありがとうございます!」
「ははっ、これ位の事…恩返しにもならんな!」
パルヴァン様は豪快に笑う。
「それで…ここに居る間、私に出来ることはありますか?ただ置いてもらうだけと言うのは…どうも心苦しくて。」
「ふむ。ハル殿の事だ、ゆっくりしろと言っても無理だろうから…薬師の仕事をしてはどうだ?ここは辺境地故に冒険者も多い。ポーションはいくらあっても困る事はないからな。我が邸にも専属の薬師が居るから、その薬師にお願いしておこう。」
「はい、ありがとうございます。」
薬師の仕事とは有難い。
もし還れないとなれば、その時の役に立つ。
兎に角、1ヶ月。正直、変化なんて1ヶ月も経たずに判るだろう。ただ、心の整理もしたいからの1ヶ月だ。
「あぁ、忘れてた。ハル殿、はいコレ。」
と、シルヴィア様があのピアスを私の手の平に、チョコンと乗せてくれる。
「聖女様が浄化してくれた直後だから大丈夫だと思うけど、この辺境地に居るのなら、身に着けておいた方が良い。お守りとしてね。」
「そう…ですね。折角戴いた素敵なピアスだから、着けさせてもらいますね。」
私がニコリと笑うと、 シルヴィア様も優しく微笑んでくれた。
私にはパルヴァン邸の2階にある客室の一室があてがわれた。1LDKに住んでいた私にとって、十分過ぎる程の広さだけど、王城の時の部屋よりこぢんまりしてて、幾分かここの方が落ち着く。そして、私付きの侍女が2人できてしまった。私なんかに…と思ったが、この世界のルールなので仕方無い。
「私なんかに付いてもらって、すみません。」
と謝ったら
「何を仰っていますか!?ハル様はパルヴァン様の命の恩人でございます!!ハル様に付く為に勝ち抜いて来たんです!!光栄以外の何物でもありません!!」
ーか…勝ち!?ー
ちょっと意味が分からないけど…あの侍女達とは全く違う感じの人達で安心した。
茶色の髪を後ろで一つに纏めていて、少しつり目のルナさんと、肩までの黒い髪でパッチリ目のリディさん。2人ともお姉さん達と同じ25歳。パルヴァン辺境地の子爵令嬢らしい。2人とも辺境地の貴族らしく、武術にも長けている為、私にとっては、侍女兼護衛といったところらしい。
“侍女”ではなく、“お姉さん”が身近にいると言うのは…何となく落ち着く気がするなぁ…。ここに居る1ヶ月の間、仲良くできれば良いなぁ。
そう思いながら、三日ぶりにふかふかのベッドに潜り込んだ。
ーパルヴァン夫婦の寝室にてー
「グレンは…どう思った?」
ベッドのサイドに置いてある3人掛けのソファーに座ったシルヴィアが、ワインを飲みながら夫であるグレンに問い掛けた。
「どうも何も、よほど王都…貴族が嫌なのか…位か?普通、あの若さで知らない世界に取り残されたら…非はこちらにあるから、何が何でも王族に面倒みてもらうぞとか…なると思ったが…」
「それもそうだけど…ハル殿は…取り乱すどころか、泣いてもいないし、召喚した側の人間を一切責めていない。そう言うタイプの人間はね、他人を…信用していないって事だよ。そして…壊れる時は…一気に壊れてしまうんだ。私は、それが怖いと思った。だから、ハル殿がパルヴァンに居たいと言うなら、ここで守ってあげたい。」
「シルヴィアは、ハル殿達が召喚された頃の噂を聞いた事はあるか?」
「あぁ、これでも一応は、元王妃付きの近衛騎士だったからね。今でも噂好きの女騎士達が、色んな情報をくれるんだよ。ハル殿は…余程辛い思いをしたんだろうね。」
「そうだな…。とにかく、ここでは安心して過ごせる様にゼンに言っておこう。あぁ、それと、レオンとカテリーナにも言っておいた方が良いな。明日本邸に呼び出すか。」
明日の流れを考えながら、2人は眠りに就いた。
「だから…1ヶ月…1ヶ月だけで良いので、その間ここに置いてくれませんか?それと…私がここに居る事は…出来れば誰にも知られたくないんです。」
「ハル殿…。もし…もし、還れないとなった場合はどうするつもりだ?」
「その場合は…私は“薬師”の資格を持っているので、何処かで薬師としてやっていければと思ってます。還れないなら…しっかり自分の足で立って前に…進みたいから…。」
王様に助けを求めたら、きっと助けてくれるだろう。ベラトリス様だって喜んで迎えてくれると思う。でも、やっぱり怖いのだ。貴族の世界は怖いー。贅沢なんていらない。1人で立って、食べていけたらそれで良い。
パルヴァン様は暫くの間逡巡した後
「分かった。取り敢えずは、1ヶ月はここで過ごしてくれ。その後の事は、還れるかどうかで変わって来るから、その時に話し合おう。勿論…ハル殿がここに居る事は箝口令を敷こう。」
「ありがとうございます!」
「ははっ、これ位の事…恩返しにもならんな!」
パルヴァン様は豪快に笑う。
「それで…ここに居る間、私に出来ることはありますか?ただ置いてもらうだけと言うのは…どうも心苦しくて。」
「ふむ。ハル殿の事だ、ゆっくりしろと言っても無理だろうから…薬師の仕事をしてはどうだ?ここは辺境地故に冒険者も多い。ポーションはいくらあっても困る事はないからな。我が邸にも専属の薬師が居るから、その薬師にお願いしておこう。」
「はい、ありがとうございます。」
薬師の仕事とは有難い。
もし還れないとなれば、その時の役に立つ。
兎に角、1ヶ月。正直、変化なんて1ヶ月も経たずに判るだろう。ただ、心の整理もしたいからの1ヶ月だ。
「あぁ、忘れてた。ハル殿、はいコレ。」
と、シルヴィア様があのピアスを私の手の平に、チョコンと乗せてくれる。
「聖女様が浄化してくれた直後だから大丈夫だと思うけど、この辺境地に居るのなら、身に着けておいた方が良い。お守りとしてね。」
「そう…ですね。折角戴いた素敵なピアスだから、着けさせてもらいますね。」
私がニコリと笑うと、 シルヴィア様も優しく微笑んでくれた。
私にはパルヴァン邸の2階にある客室の一室があてがわれた。1LDKに住んでいた私にとって、十分過ぎる程の広さだけど、王城の時の部屋よりこぢんまりしてて、幾分かここの方が落ち着く。そして、私付きの侍女が2人できてしまった。私なんかに…と思ったが、この世界のルールなので仕方無い。
「私なんかに付いてもらって、すみません。」
と謝ったら
「何を仰っていますか!?ハル様はパルヴァン様の命の恩人でございます!!ハル様に付く為に勝ち抜いて来たんです!!光栄以外の何物でもありません!!」
ーか…勝ち!?ー
ちょっと意味が分からないけど…あの侍女達とは全く違う感じの人達で安心した。
茶色の髪を後ろで一つに纏めていて、少しつり目のルナさんと、肩までの黒い髪でパッチリ目のリディさん。2人ともお姉さん達と同じ25歳。パルヴァン辺境地の子爵令嬢らしい。2人とも辺境地の貴族らしく、武術にも長けている為、私にとっては、侍女兼護衛といったところらしい。
“侍女”ではなく、“お姉さん”が身近にいると言うのは…何となく落ち着く気がするなぁ…。ここに居る1ヶ月の間、仲良くできれば良いなぁ。
そう思いながら、三日ぶりにふかふかのベッドに潜り込んだ。
ーパルヴァン夫婦の寝室にてー
「グレンは…どう思った?」
ベッドのサイドに置いてある3人掛けのソファーに座ったシルヴィアが、ワインを飲みながら夫であるグレンに問い掛けた。
「どうも何も、よほど王都…貴族が嫌なのか…位か?普通、あの若さで知らない世界に取り残されたら…非はこちらにあるから、何が何でも王族に面倒みてもらうぞとか…なると思ったが…」
「それもそうだけど…ハル殿は…取り乱すどころか、泣いてもいないし、召喚した側の人間を一切責めていない。そう言うタイプの人間はね、他人を…信用していないって事だよ。そして…壊れる時は…一気に壊れてしまうんだ。私は、それが怖いと思った。だから、ハル殿がパルヴァンに居たいと言うなら、ここで守ってあげたい。」
「シルヴィアは、ハル殿達が召喚された頃の噂を聞いた事はあるか?」
「あぁ、これでも一応は、元王妃付きの近衛騎士だったからね。今でも噂好きの女騎士達が、色んな情報をくれるんだよ。ハル殿は…余程辛い思いをしたんだろうね。」
「そうだな…。とにかく、ここでは安心して過ごせる様にゼンに言っておこう。あぁ、それと、レオンとカテリーナにも言っておいた方が良いな。明日本邸に呼び出すか。」
明日の流れを考えながら、2人は眠りに就いた。
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