巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

文字の大きさ
46 / 203
第三章ーパルヴァン辺境地ー

本邸へ

しおりを挟む
「ゼンさんが、毒蛇に噛まれたの!」

「毒蛇に!?」

「取り敢えず、応急処置としてレベル1を飲ませたんだけど、いまいち効いてないのよ。ひょっとしたら、過去にも噛まれた事があるのかもしれない。」

確かに。大抵の毒蛇の毒なら、レベル1で十分だ。但し、2回目となると1回目よりも症状が酷くなる。勿論、その分ポーションの効きも悪くなる。

「レベル2…この前冒険者の人に使ってしまって…それで、丁度必要な薬草が無くなって…。」

その必要な薬草は、あの森にしかない。そこで今回の視察の事を聞いたから、視察が終わってから採りに行こうと思っていたのだ。

「アンナさん、アンナさんは今ある材料で作り始めてもらえますか?私、今から森に行って薬草を採って来ます!それと、リディさんは、この事をパルヴァン様に伝えて来てもらえますか?」

「それは勿論ですが、今は安全な森と言っても夜も遅いですから、ハル様1人では行かせられませんので…ティモスに同行してもらいます。ルナ、今すぐ騎士邸に行って事情を説明してティモスを連れて来てくれる?」

「分かったわ。では、ハル様、準備ができましたら、西門前でお待ち下さい。そこにティモスを連れて行きます。」

そう言って、各々がすべき事をする為に動き出した。






*****


「ティモス、ちょっと良い?」

パルヴァン邸にある騎士邸のサロンで、俺達視察組の騎士とパルヴァンの騎士と交流を深めていた時、侍女らしき女性がティモス殿を呼び止めた。

「ルナ!?あぁ、オーブリー殿、すまないが少し失礼する。」

と言って、ティモス殿が“ルナ”と言う女性の元へ少し焦る様にして駆け寄って行った。

ー何を焦っているのだろうか?ー

ティモス殿の様子が少し気になり、何となしに2人の様子を窺っていた。

「…が……で…ルさまが…です……ます…」
「…った…」

女性の方は淡々と話していたが、話を聞いたティモス殿は少し驚いた後、近くに居たパルヴァンの騎士に何か話し、また焦った顔になりこっちに戻って来た。

「オーブリー殿、すまない。急用ができた為、今から出掛ける事になった。後の事は残っている者に頼んである。明日は私も一緒に森に行くので、また明日、宜しくお願いします。」

そう言って、ティモス殿はまた急いでサロンから出て行った。何かあったんだろうか?気にはなったが、勝手に動く訳にも行かないので、そのままサロンで他の騎士達と過ごした。










「ハルー!」

「あ、ティモスさん!こんな遅くにごめんなさい!」

薬草採取の準備をして、西門に到着してすぐにティモスさんもやって来た。やって来た…んだけど…

「いや、こっちはまだ視察の騎士達と騒いでいたから大丈夫だ。兎に角、ゼンさんの事が心配だから、急ごう!」

そう言って、ティモスさんは馬上から手を差し伸べて来た。

「えっと…どうしろと?」

私、自慢じゃないけど馬に乗った事なんてないよ?頑張って走ってついて行けばいいんだろうか? 

「ハル、手を出せ…」

「手?」

言われたまま手を出すと、そのままグイッとティモスさんの後ろに引っ張りあげられた。

「少しでも早い方が良いだろう?しっかり俺に掴まっておけよ?」

そう言った瞬間、ティモスさんは私の返事を聞かずに馬を走らせた。




必死にティモスさんにしがみつき、森で目当ての薬草を採取してアンナさんの居る本邸の調剤室にやって来た。

ーやっぱり、この世界はモブに優しくないー

初めての乗馬だった。それなのに…ティモスさんは遠慮無かった。全速力で走らせた。そりゃあ、ゼンさんの命が掛かっているんだから、仕方無いけど…まだ足が震えてるからね!!

と、何とか頑張って薬草を無事にアンナさんに渡し、アンナさんが手際よくレベル2のポーションを作り、急いでゼンさんに飲ませた。






「ゼンさんの事は私に任せて下さい。アンナさんは、早くお子さんのところに帰ってあげて下さい。」

アンナさんには5歳の娘さんが居る。家には旦那さんや旦那さんの両親も居るそうだが、やっぱり子供からしたら“ママ”は一番の存在だろう。ゼンさんもレベル2のポーションを飲んだら落ち着いたので、アンナさんには帰ってもらう為に、私がゼンさんの看病をする事にした。

「ハルにとっても、今は大変な時なのに…ごめんなさいね?」

「大丈夫ですよ。あの人達がゼンさんを見舞いに来る事はないでしょうから。なんとでもなりますよ。」

アンナさんは、申し訳なさそうな顔をしながら帰って行った。






ゼンさんは、ポーションがよく効いているのか、顔色も良くなり、呼吸も安定していた。

ーうん。これなら大丈夫だね。良かったー

この本邸に居るのは…王太子様と宰相様とダルシニアン様とカルザイン様。明日、森に視察に行くのが朝食後少し時間を空けてからだったか…。ならば、朝食前にパルヴァン様に報告に行こう。私にお茶を持って来てくれたルナさんに、その事をパルヴァン様に伝えてもらうようにお願いをした。


しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!

まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。 お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。 それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。 和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。 『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』 そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。 そんな…! ☆★ 書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。 国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。 読んでいただけたら嬉しいです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

処理中です...