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第三章ーパルヴァン辺境地ー
大樹
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*本日、2話目です*
私をじっと見つめる瞳に囚われる。
ーこれは、夢だと判るー
この瞳を見た事がある。
この瞳は確かー。
「今日は、鉱山の視察に行ってくる。」
4日目の視察先は鉱山だった。
シルヴィア様から頂いたピアスに使われた石。このパルヴァンの、その鉱山でしか取れない石が採れる鉱山だ。このパルヴァン邸から騎乗で移動して一時間程掛かるらしい。
パルヴァン様を先頭に、王太子様とカルザイン様と宰相様、後数名の騎士様で出立した。ダルシニアン様は、王都から魔術による手紙?が届いたようで、今日はお留守番らしい。
ちょっと微妙だけど…大丈夫だよね?と思いながら、私は今日も森にやって来た。
「…何で…ティモスさんが居るんですか?」
何故か、私よりも先にティモスさんが居たのだ。
「今日の俺は同行メンバーから外れたんだ。それで、ハルを見張りに来た。」
「…見張り…」
「絶対に、ここに1人で来ると思ったからね。」
ティモスさんはニッコリ笑っている。これ、絶対怒ってるよね…。
「…すみません。」
素直に謝っておく。
「はぁー…。別に、本気で怒ってるわけじゃないけど…。今日は俺が付いてるから、ここでは好きにして良いぞ。」
ティモスさんは、呆れた様な顔をしながらも、優しく笑ってくれた。
「何をするって訳じゃないんですけどね…。ちょっと気になる事があって…。」
「気になる事?」
最近よく見る夢がある。起きた時にはあまり覚えてなかったりするけど、多分、同じ夢なんだと思う。私がパルヴァン辺境地に飛ばされた場所。何故か落ち着く場所。ここがその夢に関係する様な気がするのだ。
「私もよく分からなくて…取り敢えず、この辺を散策して良いですか?」
「俺の見える範囲で。それ以上なら声を掛けてくれ。俺は、ここで座ってるから。」
ティモスさんは、大きな岩の上に座って、ヒラヒラと私に手を振った。
ー特に、何もないよねー
私が飛ばされた場所は、比較的森の入り口の近くだった。なので、そこまで鬱蒼としていないし、見晴らしも良い。
「穢れがないから、普通に綺麗な森だよね。流石はお姉さん達だなぁ…。ん?」
他の木と比べて一回り大きな木。樹齢何年だろう?そこに剣で切り付けたような痕がある。それでも、その木は腐る事もなくドッシリとそびえ立っている。そっとその傷痕に触れてみると、結構深い傷痕だった。
「あれ?何か…ある?」
その深い傷痕の奥の方に手を突っ込んで…
「…魔石?」
大粒の栗位の大きさの魔石。くすんでいるけど…青色?水色?かなぁ?
「ハル!」
「ティモスさん!?」
その魔石に気をとられているところに、ティモスさんが私の横まで来て、小声で私の名前を呼んで来た。
「さっき、ダルシニアン様がこの森に入って来るのが見えた。どうする?」
「ダルシニアン様が?」
一体何をしに…魔導師だから、もう一度穢れがないかの確認だろうか?入って来ていると言う事は、パルヴァン様かシルヴィア様が立ち入りを許可したと言う事だ。
何にせよ、ティモスさんが気付いたと言う事は、ダルシニアン様だってこっちに気付いている可能性がある。ならば、避けない方が良いよね…。
「私ー“ルディ”は大丈夫です。」
「分かった。」
手にしていた魔石を秘密のポーチにしまい込み、念の為に着ていた薄い水色のローブのフードを被り、私はティモスさんとダルシニアン様の方へと歩いて行った。
「ダルシニアン様、どうかされましたか?」
ティモスさんがダルシニアン様に声を掛けた。
「ティモス殿、すぐに会えて良かった。」
どうやら、ダルシニアン様はティモスさんを探していたようだ。
ダルシニアン様が、今日の視察に同行しなかったのは、昨日届いた王都からの手紙が原因らしい。
ーフェンリルー
拘束してから1年経つが、その扱いがまだ決まっていない。拘束しているからおとなしいのか、フリをしているのか。色々手探り状態らしい。そして、今回パルヴァン辺境地の視察を機に、フェンリルが現れた森を、何かないかもう一度調べて来いと、お達しがあったようだ。
「それで、シルヴィア様に相談したら、ティモス殿と一緒なら良いと言われてね。すまないが、手助けしてもらえるだろうか?」
「はい、勿論です。えっと…ハー…ルディはどうする?」
ーティモスさん、また“ハル”って呼び掛けたよね!?勘弁して欲しい!ー
「ルディ?あ、もしかして、何か仕事中だった?申し訳ない。私はクレイル=ダルシニアン。魔導師をしている。宜しく。」
「私は…ルディです。パルヴァン邸付きの薬師です。宜しくお願いします。薬草を採りに来ていただけなので、気にしないで下さい。」
「薬…師…殿…」
「?はい…。」
ダルシニアン様は、ほんの一瞬躊躇った後
「…もう、薬草は採れましたか?ティモス殿を借りても大丈夫だろうか?」
何事もなかったように、いつもの様な笑顔になっていた。
「薬草はまだですが…ティモスさんは居なくても全然大丈夫なので、どーぞ連れて行って下さい。」
「ルディ?その言い方!」
「ふふっ。本当の事ですからね。」
「ルディ…」
ダルシニアン様は、私達のやり取りを見てキョトンとした後、困った様に笑った。
私をじっと見つめる瞳に囚われる。
ーこれは、夢だと判るー
この瞳を見た事がある。
この瞳は確かー。
「今日は、鉱山の視察に行ってくる。」
4日目の視察先は鉱山だった。
シルヴィア様から頂いたピアスに使われた石。このパルヴァンの、その鉱山でしか取れない石が採れる鉱山だ。このパルヴァン邸から騎乗で移動して一時間程掛かるらしい。
パルヴァン様を先頭に、王太子様とカルザイン様と宰相様、後数名の騎士様で出立した。ダルシニアン様は、王都から魔術による手紙?が届いたようで、今日はお留守番らしい。
ちょっと微妙だけど…大丈夫だよね?と思いながら、私は今日も森にやって来た。
「…何で…ティモスさんが居るんですか?」
何故か、私よりも先にティモスさんが居たのだ。
「今日の俺は同行メンバーから外れたんだ。それで、ハルを見張りに来た。」
「…見張り…」
「絶対に、ここに1人で来ると思ったからね。」
ティモスさんはニッコリ笑っている。これ、絶対怒ってるよね…。
「…すみません。」
素直に謝っておく。
「はぁー…。別に、本気で怒ってるわけじゃないけど…。今日は俺が付いてるから、ここでは好きにして良いぞ。」
ティモスさんは、呆れた様な顔をしながらも、優しく笑ってくれた。
「何をするって訳じゃないんですけどね…。ちょっと気になる事があって…。」
「気になる事?」
最近よく見る夢がある。起きた時にはあまり覚えてなかったりするけど、多分、同じ夢なんだと思う。私がパルヴァン辺境地に飛ばされた場所。何故か落ち着く場所。ここがその夢に関係する様な気がするのだ。
「私もよく分からなくて…取り敢えず、この辺を散策して良いですか?」
「俺の見える範囲で。それ以上なら声を掛けてくれ。俺は、ここで座ってるから。」
ティモスさんは、大きな岩の上に座って、ヒラヒラと私に手を振った。
ー特に、何もないよねー
私が飛ばされた場所は、比較的森の入り口の近くだった。なので、そこまで鬱蒼としていないし、見晴らしも良い。
「穢れがないから、普通に綺麗な森だよね。流石はお姉さん達だなぁ…。ん?」
他の木と比べて一回り大きな木。樹齢何年だろう?そこに剣で切り付けたような痕がある。それでも、その木は腐る事もなくドッシリとそびえ立っている。そっとその傷痕に触れてみると、結構深い傷痕だった。
「あれ?何か…ある?」
その深い傷痕の奥の方に手を突っ込んで…
「…魔石?」
大粒の栗位の大きさの魔石。くすんでいるけど…青色?水色?かなぁ?
「ハル!」
「ティモスさん!?」
その魔石に気をとられているところに、ティモスさんが私の横まで来て、小声で私の名前を呼んで来た。
「さっき、ダルシニアン様がこの森に入って来るのが見えた。どうする?」
「ダルシニアン様が?」
一体何をしに…魔導師だから、もう一度穢れがないかの確認だろうか?入って来ていると言う事は、パルヴァン様かシルヴィア様が立ち入りを許可したと言う事だ。
何にせよ、ティモスさんが気付いたと言う事は、ダルシニアン様だってこっちに気付いている可能性がある。ならば、避けない方が良いよね…。
「私ー“ルディ”は大丈夫です。」
「分かった。」
手にしていた魔石を秘密のポーチにしまい込み、念の為に着ていた薄い水色のローブのフードを被り、私はティモスさんとダルシニアン様の方へと歩いて行った。
「ダルシニアン様、どうかされましたか?」
ティモスさんがダルシニアン様に声を掛けた。
「ティモス殿、すぐに会えて良かった。」
どうやら、ダルシニアン様はティモスさんを探していたようだ。
ダルシニアン様が、今日の視察に同行しなかったのは、昨日届いた王都からの手紙が原因らしい。
ーフェンリルー
拘束してから1年経つが、その扱いがまだ決まっていない。拘束しているからおとなしいのか、フリをしているのか。色々手探り状態らしい。そして、今回パルヴァン辺境地の視察を機に、フェンリルが現れた森を、何かないかもう一度調べて来いと、お達しがあったようだ。
「それで、シルヴィア様に相談したら、ティモス殿と一緒なら良いと言われてね。すまないが、手助けしてもらえるだろうか?」
「はい、勿論です。えっと…ハー…ルディはどうする?」
ーティモスさん、また“ハル”って呼び掛けたよね!?勘弁して欲しい!ー
「ルディ?あ、もしかして、何か仕事中だった?申し訳ない。私はクレイル=ダルシニアン。魔導師をしている。宜しく。」
「私は…ルディです。パルヴァン邸付きの薬師です。宜しくお願いします。薬草を採りに来ていただけなので、気にしないで下さい。」
「薬…師…殿…」
「?はい…。」
ダルシニアン様は、ほんの一瞬躊躇った後
「…もう、薬草は採れましたか?ティモス殿を借りても大丈夫だろうか?」
何事もなかったように、いつもの様な笑顔になっていた。
「薬草はまだですが…ティモスさんは居なくても全然大丈夫なので、どーぞ連れて行って下さい。」
「ルディ?その言い方!」
「ふふっ。本当の事ですからね。」
「ルディ…」
ダルシニアン様は、私達のやり取りを見てキョトンとした後、困った様に笑った。
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