69 / 203
第四章ー王都ー
贄
しおりを挟む「あれ?まだ動ける奴が居たのか。」
「え─!?」
ビックリして振り返ると…そこには、あのパルヴァン元副団長が居た。
「なん…で…」
確か、シルヴィア様に締め上げられた後、領地追放になったんだっけ?そうか…パルヴァン辺境地からの追放だから、この人が王都に居ても不思議ではない。ないけど…。追放と同時に爵位も剥奪され平民になった彼が、どうして王城に居るのか…。それに、何故ここに居るのか…。
「見た事ない顔だな?新入りの薬師か?眠り草に耐性でもあるのか?」
眠り草─この人の仕業だったのか─。でも何故?
「まぁ…どうでもいいや。薬師殿、怪我をしたくなかったら…そこで寝てる奴を私に渡してくれるか?」
ニヤリと、下卑た笑いを浮かべながら近付いて来る。
「何故…カテリーナ様を?」
攻撃はできないけど、いざとなれば魔法でなんとかなるだろう。それにここは王城内の一室。相手も無理な事はしないだろう。時間を稼げれば、そのうちレオン様が来るかもしれない。
「何故?はっ!そんな事、パルヴァンの者であれば、だいたい予想はつくだろう?私はね、ずっと…ずーっと、グレンとシルヴィアの2人の苦痛に染まる顔を見たいと思っていたんだよ。本来なら…パルヴァン辺境伯を引き継ぐのは私だったんだ!それをアイツが─!」
とんだ逆恨みだ。確かにパルヴァンの元騎士だけあって武に長けているのは確かだろう。でも、長けているだけでは駄目なのだ。人を見下すような人ではパルヴァン辺境地を治める事なんてできる筈がない。
「それで…直接グレン様とシルヴィア様に手を出せないから、カテリーナ様を狙ったと言う事ですか?ふふっ…そこに羞恥心はないんですか?」
「な─っ!」
私の言葉にカッとなって怒りを露にするが─
「─っ…まぁいい。薬師殿は、私がここに居る事の意味を…分かっているのか?」
「ここに居る事の意味?」
「私は平民に堕とされた身。でも、王城に居る。何故なら…グレンの事を良く思っていない貴族が…居ると言う事だよ。」
ニヤッと嗤う。
「グレンは滅多な事がない限り、パルヴァンを出る事はない。嫡男夫婦も然別。だが、今日の夜会には、そのレオンとカテリーナが来ると知ってね。レオンの苦痛に歪む顔も見たくなってね?それで、ターゲットをカテリーナにしたって訳だよ。」
愉悦に浸っているかの様な笑顔で、饒舌に語っている。この人…レオン様やパルヴァン様の事、全く分かってないよね。カテリーナ様に手を出して、自分がどうなるか…それに…。まだ国王陛下以外には知られていないけど、カテリーナ様は妊娠している。ここでカテリーナ様を連れて行かせるわけにはいかない。
「カテリーナ様ではなく、私ではいけませんか?」
「は?何故ただの薬師がカテリーナの代わりになれる?」
本当に分かっていないようだ。
「ただの薬師ならそうですけど…。覚えてませんか?私の事。」
「お前には会った事もないだろう?とにかく早くカテリーナを…」
「あなたが、領地追放処分になった原因の…ハルですよ。」
そう言うと、目をカッと見開いた後、一瞬にして私の目の前迄やって来て、私の首をグッと掴み
「あの時の…お前が…。そうだなぁ…カテリーナも惜しいが…お前をやった方が、私がスッキリするし、グレンの苦痛の顔も拝めるなぁ…ははははっ!」
「─ごほっ…」
急にパッと手を離されて、咳き込む。
「ふん。お望み通りお前にしてやる。これを羽織って、おとなしく付いて来い!」
「こほっ…何処…に?」
「お前を…“贄”にするんだよ。」
チラリとカテリーナ様を見遣る。私が渡したピアスの“防御”の魔法が作動しているのが分かる。恐らく、カテリーナ様は意識を戻している筈。私達が出て行った後、レオン様にこの事を伝えてくれるだろう。だから、少しでもこれから連れて行かれる場所についての情報を引き出しておきたい。
「“にえ”にする─?」
「アレを従属させるには、“贄”が要るらしい。お前一人だけで済むと良いなぁ。」
渡されたローブを羽織る。これは…魔導師のローブだ。色は違うが、これと同じ刺繍が施されたローブを、ダルシニアン様が着ていた。
ーと言う事は、今から行く所は魔導師に関係がある場所なんだろうか?ー
「これ、魔導師のローブ…ですよね?」
「ふんっ。今からは余計な事は口にせず、黙って私に付いて来い。それが守れなかったら…カテリーナも道連れだからな?」
ーこれ位の情報があれば…大丈夫かな?まぁ、いざとなれば、魔法を使おうー
そう、魔法があれば何とかなると思っていた。相変わらずイメージができない攻撃魔法は使えない。でも、防御には自信があるし、逃げようと思えばいくらでも方法があると思っていた。
連れて行かれたのは、召喚の間がある神殿だった。予想外の場所で…少し動揺して、周りが見えていなかった。そこに、もう一人男が居たようで──
カチャリッ
「えっ!?」
自分の首もとで金属音がした。
その瞬間、体が一気に重たくなった。
「…な…に…?」
指一本…動かすのも辛い程に──
181
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる