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第四章ー王都ー
黒
しおりを挟むレフコースと名を交わしたお陰で、枯渇しかけていた私の魔力も一気に回復。外傷はなかったので、特に問題はないとの事だったが、今日も念の為、神殿で泊まる事になった。部屋の中なら自由にして良いと言われた。
「今日は、昨日の事を聞きに、誰か来ると言っていました。」
と、昨日から私を診てくれている、神殿付きの医師のマリンさんから聞いていた通り、昼食後、暫くしてからティモスさんと一緒にその人達が部屋にやって来た。
「ルディ、体調は大丈夫か?昨日の話を聞きたいって、言われているんだが…。」
「大丈夫…です…。」
ティモスさんと一緒にやって来たのは…
「やぁ、ルディ殿。私の事は覚えてる?」
「勿論です、ダルシニアン様。お久し振りです。」
「なら良かった。で、今回、王家側としてルディ殿の話を聞きに来たのが…コレなんだ。」
「コレではない。初めまして。私はイリス=ハンフォルト。宜しくお願いします。」
ーベラトリス様の婚約者…だったよね?ー
「初めまして。私は…パルヴァン辺境伯付きの薬師のルディです。こちらこそ、宜しくお願いします。」
ー私…目がおかしくなったんだろうか??ー
私の目の前に居るハンフォルト様。昨日の夜会でベラトリス様と踊っているのを見た時は…なかった。チラリとレフコースを見ると…レフコースも見えているようだ。ジッとハンフォルト様のそれを見ている。
「体調が良いと聞いて、昨日の話を聞ければと思って来たけど…大丈夫ですか?」
「……」
「ルディ?」
「うぇっ!?」
ハンフォルト様のそれが気になって、話を聞いてなくて、ティモスさんに声を掛けられて驚いた拍子に、変な声が出てしまった。
「す…すみません!ちょっと、ボーッとしてしまってました。えっと、私は大丈夫です。」
「ははっ…あー、笑ってしまって失礼…。じゃあ、宜しくお願いしますね。」
と、恥ずかしいな!と逃げたくなるのをこらえながら、話をする準備を始めた。
「これ、本当に第一騎士団は…死ぬ気で調べ上げないと駄目なんじゃないかな? 」
私が一通り話し終えると、ハンフォルト様はスッと口を開いた。
「カテリーナ様の様子がおかしいからと、ランバルトが部屋を用意させたと言う事は、王太子であるランバルトでさえ、予めカテリーナ様の為に部屋を用意していた事を知らなかったって事だよね?それって、その部屋を用意させたのは、王太子以上の者って事だ。なら、それは2人しか居ない。国王陛下か王妃陛下。しかも、殆どの人が知らない─知らされてなかった。それなのに、そのギデルと言う奴は知っていて、その上眠り薬を仕掛けられた。警備に…穴があり過ぎる。」
「…手引きした奴が…居ると言う事だな。」
ダルシニアン様も、グッと眉間に皺を寄せる。
「あいつら、魔導師のローブも手に入れていた…。後ろについているのは…結構な大物かも…しれないな…。」
どうしよう…とても大切?大事な話をしてるんだけど…あれが気になって、話しが頭に入って来ない…。レフコースも、ジッと見詰めたままだ。
何故か分からないけど、ハンフォルト様の首周りに…黒い煙?みたいなものが纏わり付いているのだ。それ自体が、ハンフォルト様を苦しめている…と言う事はないようだけど…じゃあ、何だ?と言われたら…全く分からないのだ。レフコースは、分かっているんだろうか?
『我にもよく分からぬ。』
「うん─っ!?」
「ど…どうした?ルディ。急に」
「ごめんなさい!えっと…ちょっと喉が渇いたなーって…。あの、お茶、淹れてきますね。」
と、慌てて部屋に備え付けられているキッチンへと足を向けると、レフコースも私の後を付いて来た。
「レフコースには、私の考えてる事が、全部筒抜けになってるの!?」
そう、さっき、私は口に出して話した訳じゃないのに、レフコースが返事をしたから驚いたのだ。
『筒抜けではない。飽くまでもハルは我と名を交わした“主”だ。主が我に語り掛けたり許された時しか、我には主の頭の中の声は聞こえぬ。さっきのは、主が我に問い掛けたようなものだから、聞こえただけだ。』
「そうなんだ…それなら良かった…。それと、レフコースの声は…あの3人には聞こえてるの?」
『聞こえていない。我が意識して声を飛ばさなければ、名を交わした主以外には聞こえぬ。』
「それじゃあ、いざと言う時は、私とレフコースは誰にも聞かれずに頭の中?で会話ができるって言う事ね?すごく…便利だね!」
フリフリと動く尻尾は、やっぱり可愛い。
「でも…あの黒いの…なんだろう?」
『…主、魔法で水を出してお茶を淹れられるか?』
「え?勿論できるよ?」
『主の出す水は、浄化作用が強いから、ひょっとしたらあの黒いのも浄化できるかもしれない。』
ーえ!?私が出す水、浄化の効果があるの!?ー
ビックリして、そのままレフコースを見る。
『主…知らなかったのか?』
「知らなかったよ…」
『主は…色々規格外だと思うぞ?』
と、何故か自慢気に言うレフコース。
その顔がまた…可愛かった─。
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