99 / 203
第四章ー王都ー
エディオル=カルザイン
しおりを挟むー何故、彼女が…騎士団訓練場に居る?ー
少しずつおかしくなっていったランバルトを、グレン様が訓練に引き摺り出して行った日。そのランバルト─王太子としてからの命を受け、聖女様の護衛をしていた。
「エディオル様、私…ランバルト様の訓練の様子が見てみたいです。」
と願われた。
ー誰が、いつ、名前呼びを許した?ー
その言葉を呑み込むように口にグッと力を入れ、ソレとは違う言葉を吐き出す。
「分かりました。では、聖女様の準備が整い次第…訓練場に向かいましょう。」
今日の指導者はグレン様だ。きっと…皆、やられているだろう…。
そう思いつつ、聖女様を訓練場迄案内した。
「エディオル!」
訓練場に着くと、第一騎士団団長である父に名を呼ばれる。すると、ビックリするように目の前に居る女性が振り向いた。
また、ドクンッと、心臓が反応する。
2日前に見た時は気を失っていて、見れなかった─淡い水色の瞳。
ーあぁやっぱり彼女だ。本当に綺麗な瞳だー
と見惚れてしまっていると
「まぁ…今日は酷い惨状ですね?誰がこんな酷い事を?怖いです…」
と言いながら、聖女様は俺の腕にしがみついてきた。
思わず眉間に皺が寄る。
それから、グレン様がキレかけたのを、彼女がなんとかその場を収めてくれた。
『あのパルヴァン伯付きの薬師は天使だった』
と、第一騎士団の騎士達の間で言い広がって行った。勿論、否定はしない。
それから数日後、彼女が改めてグレン様と共に国王陛下に謁見する為に王城にやって来た。何故か、俺も同席するようにと言われた。
そして、彼女はこれからこの世界で、“ルディ”ではなく、“ハル”として生きて行く為に来たと言う。
ーそうか、彼女は、もう逃げずにこの世界で前に進む事にしたのかー
ならば、俺は動くだけだ。
次があれば間違えないと、手放さないと決めていた。
すぐにパルヴァン辺境地に帰ってしまうだろうから、どうやって引き留めるか…と思案していたが…ランバルト達に感謝…だな…。
特に酷く影響が出ているのがランバルト。それと、第一と近衛の騎士数名と、イリス。調べると言うのなら、案内と護衛も兼ねていて、ランバルトと第一と近衛の騎士にイリスと、全て俺と接点がある所ばかりだから、俺が適任だろうと思い、付き添いを申し出た。そこに、魔導師としてクレイルも口を出してくる。
彼女からは、どっちでも良いとか…他の人でも良いとか言われたが…。
国王陛下や宰相、グレン様の生暖かい目は、正直居たたまれなかったが、彼女と共に行動ができる事になったから、よしとする。
クレイルは、彼女を気に入っている…と言うか、好きなんだろう。クレイルの彼女を見る目は、とても優しい。俺は、クレイルの事は幼馴染であり友であり、これからランバルトを共に支えて行く、よき仲間だと思っているし、魔導師としてのクレイルを尊敬している。
だけど─
ー彼女だけは譲れない。譲る気なんて微塵も無いー
そんな時、クレイルに声を掛けられた。
「確かに…ハル殿の事は、好きなんだと思う。でも、それ以上に、エディオルがハル殿と幸せになれれば良いのにと思ってるんだ。」
「クレイル…」
本当に、こう言う奴の事を“男前”と言うんだろう。
「でもね…エディオル…」
「ん?」
「私が、ハル殿を“可愛い”と思う位は許して欲しい。」
ー…は?ー
「好きとか、ハル殿とどうこうなりたいとかは関係無く、可愛いと思ってしまうのは仕方無いだろう?その度に、お前が目で私を殺しに掛かって来るのは…止めて欲しい!可愛いと思う事位は許して欲しい!」
「……」
「…何か反応してくれる?コレ、言ってて結構恥ずかしいんだよ!?」
「あぁ…恥ずかしい自覚はあったんだな…」
「流石にあるよ!」
顔を真っ赤にするクレイルなんて、初めて見た気がする。女性に関しては、比較的自由奔放だったクレイルだが、浄化の旅以降は浮いた話一つとしてなかった。その事に、クレイル本人は気付いているんだろうか?
ー彼女だけは譲らないけどー
「ははっ…許すも何も、思うのは自由だ。それに反応してしまうのも…自由だと思うが?」
「嗤うな!自由って事も分かってるよ。でもね、お前のあの目、本当に怖いんだよ!だから、恥を忍んでお願いしているんだ!」
「必死になってるお前も、ある意味怖いけどな…」
「──っ!!煩いよ!と…兎に角、可愛いと愛でる事位は許してもらうからな!はい!この話はコレでおしまい!」
それじゃあ、神殿に帰るから!と言って、早足で去って行った。
6歳程年下の女の子に、2人揃って振り回されるなんて…誰が予想できただろうか?と、思わず笑みがこぼれた。
「では、明日、王太子様のお話を聞かせて下さい。」
そう言って、彼女はグレン様と王都のパルヴァン邸へと帰って行った。
ー明日ー
明日もまた、彼女─ハル殿に会える。挨拶も正式に交わした。もう、この世界から消えることはない。
「ハル…殿──」
愛しい人の名前を──ようやく呼ぶ事ができた。
216
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる