123 / 203
第五章ー聖女と魔法使いとー
ラスボス?
しおりを挟むパルヴァン邸で安静にして3日目。
私は今、レフコースと一緒に広い庭を散歩している。カルザイン様は今、あの魔導師の件で王城に行っている。
「パルヴァン邸にも、色んな色のかすみ草が生ってるんだ…」
後で、部屋に飾って良いか聞いてみようかな─と思っていると
「切って、ハル様のお部屋に飾りましょうか?」
「──へっ?」
急に、背後から声が掛かった─けど…この声って…と振り返ると
「ゼンさん!?」
何故か、領地で留守番?をしている筈のゼンさんが立っていた。
「お久し振りですね。ハル様が倒れたと…聞きましたが…お元気そうで良かったです。」
「本当に、お久し振りです。私はこの通り元気ですよ?皆が心配し過ぎなだけですよ?」
とニッコリ笑えば、ゼンさんも優しく笑ってくれた。
「えっと、ところで…会えて嬉しいんですけど、どうして王都に?」
領地にはパルヴァン様が帰ったから、ゼンさんが領地に居なくても…大丈夫なんだろうけど。王都に何か用事でもあるんだろうか?
「少し…王城に用がありまして…グレン様の許可を得て来ました。数日程、こちらに滞在します。」
ーうん?何となく…背中がゾクッとするけど、気のせいかなぁ?ー
「そうなんですね。私も、また明日か明後日には登城すると思うので、一緒ですね?」
と言うと、ゼンさんは「そうですね」と言って、ダンディー然りな微笑みを浮かべた。
「ゼン殿…予想通りだが…早かったな…」
お昼の時間になると、カルザイン様が王城から帰って来た。そして、ゼンさんの姿を認めると、心なしか少し引き攣った様な顔をした。
「いえいえ、少し…遅くなってしまいました。少し…処置に時間を要しまして…。」
「…そう…か…」
ー何だろう…やっぱり背中がスースー?ゾワゾワ?するのは…気のせい…うん。気のせいだよねー
「あー…カルザインさ─」
「ん?」
「…カ…エディオル様…お帰りなさい。えっと…どうでしたか?」
ー何となく…何となく、ゼンさんの前で名前呼びをするのが、いつもの倍程恥ずかしい!ー
と、あわあわと顔を赤くする私を、ゼンさんは優しい顔で見ていた。
「あぁ、その事なんだが…丁度良い。ゼン殿にも聞いてもらいたい。後でグレン様にも連絡をした方が…良いと思う。」
「では、昼食後にお聞き致します。先ずは、昼食に致しましょう。」
「それで…お話とは?」
昼食後、ゼンさんがサロンにお茶を用意してくれていた。そして、3人だけだからと、ゼンさんにも椅子に座ってもらった。
「結論から先に言うと、ハル殿が明日、あの時の魔導師と面会する事になった。」
「…あの時の魔導師…」
ゼンさんが小さい声で囁くと同時に、ゼンさんの雰囲気がガラリと変わる。
「何故…ハル様が面会に?」
スッと細めた目でエディオル様を見据えるゼンさん。
「あ、それについては、私から説明します。」
恐る恐るゼンさんに話し掛けると、ゼンさんは、私にはいつもと同じ様に優しい目を向けてくれた。
「成る程…ハル様と同郷かもしれないと…。」
「はい。今回調べている事とは関係が無いかもしれないんですけど、確認して悪い事は無いと思うので…。それで、私からお願いしたんです。」
ゼンさんは少し思案した後、少し困ったような顔をして
「それで、ハル様は大丈夫なんですか?牢屋に入れられて、手を出される事はないと思いますが…相手はあの時の魔導師でしょう?今回倒れたのも…それが原因と聞きましたが…。」
「そう…ですね…。正直に言うと、怖くないと言えば嘘になりますけど…。でも…えっと…そのー…」
「「?」」
「…カル…エディオル様が…一緒に…付き添いで居てくれるので…あの…大丈夫だと…思い…ます。勿論!レフコースもいるので!!」
ー私、頑張って言い切りましたよ!ー
握り拳を作ってぐぐっと力を入れたポーズの私の足元では、レフコースが丸まったまま尻尾をフリフリしている。
エディオル様は、一瞬キョトンとした後、片手で顔を覆って何やら呻いている。
ゼンさんも一瞬固まった後、優しく微笑んで
「そうですか。それなら…良いのですが…。でも、無理はしないで下さいね。」
と、更にニコリと笑った。
ーパルヴァン様と言い、ゼンさんと言い…本当に…お父さんって感じで…ほっこりするなぁー
*ハルが寝た後、執務室にて*
「女嫌いの“氷の近衛騎士”とは思えない程に…手際がよろしくて…驚きました。」
と、ゼンはニッコリ微笑みながら、目の前に座っているエディオルを見据える。
「王都では、あの氷の近衛騎士が遂に恋に落ちたと…噂になっていましたよ。しかも、ハル様が“エディオル様”とまさかの名前呼び。あぁ…きっと、ハル様は深くは考えていないでしょうけどね?聞くところによると、ルイス様もノリノリだそうですね?もう、ハル様は逃げられない状態ですね?」
「……」
ー最大の障壁は…グレン様ではなく、ゼン殿だったのか?ー
軽くだが、ゼン殿が威圧を掛けて来たが…
「はぁー…。エディオル様、すみません。」
そう言うと、威圧感が無くなり、ゼン殿が困ったように笑う。
「グレン様と私の命の恩人云々は抜きにしても─いつも笑顔のハル様が本当に可愛らしくて、自分の事より他人を優先するハル様を守ってあげなければと思っていました。元の世界に還れなくなった時も…ハル様は泣きませんでした。元の世界の話も…家族の話すら…聞いた事がありません。だから、私は、その分、ハル様を娘のように…見守っていこうと…思っておりました。」
「ゼン殿…」
「ですから─」
ゼン殿の話を聞き、少し切ない気持ちになり掛けたが…また一瞬にしてゼン殿の雰囲気が一変する。
「俺は、ギデルとあの魔導師が…どうしても赦せないんだよね。あぁ、第一にも行くけどね?第一も、ちょっと腑抜けたよね?腑抜けた分絞めないとね?」
「……」
「──と言う事で、明日はエディオル様達と一緒に登城させて頂きますので、宜しくお願い致します。」
「…あ…あぁ…分かった。こちらこそ…宜しく頼みます…。」
ーやっぱり、色んな意味でのラスボスは…ゼン殿だったな。父上…本当に…御愁傷様ですー
そして、今日も夜は更けていった──。
203
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる