125 / 203
第五章ー聖女と魔法使いとー
面会②
しおりを挟む何故、隣国の魔法使いがここに居るの?
『本当に何かがおかしい…。』
「ねえ、あんたさぁ。何でそのフェンリルと名を交わせたの?」
「さっきも言ったけど、あなたに答える義理はない。」
「本当に冷たいね─。」
『本当は、そこは彼女の場所なのになぁ。』
ーそこ?彼女?ー
「ねえ、そのフェンリルってさぁ、誰か…人を殺したり…した?」
その問いに、レフコースがピクリッと反応し、少し苛立った様に魔力が乱れる。そんなレフコースの頭を、ヨシヨシと撫でる。
「このフェンリル…レフコースが人を殺す?そんな事は有り得ないし、そんな事をさせる事もない。殺そうとしたのは─人間の方だった。」
ヨシヨシと撫でていると、レフコースも落ち着いたのか、魔力も落ち着いて私の足にスリッと顔を擦り付けて来た。
ーよし、いつもの可愛いレフコースだー
「…ふーん。じゃあ…余程あんたが気に入ったって事なのか?」
その魔法使いは、何かを探るように私を見つめて来る。
「何故…あんたを選んだ?」
ゾクッとする─
「ハル…何故、名を交わせた?」
ーっ!?ー
その魔法使いの黒い瞳が一瞬煌めいたかの様に見えた。その次の瞬間には、私の目の前に黒いモヤが漂っていた。
ー止めて!私に近付かないで!消えて!ー
恐れず、目を逸らさずに快の中でも叫ぶ。すると、黒いモヤは消えた。
「…な…んで…」
勿論、その魔法使いは驚いている。これでハッキリした。黒いモヤの出所は、この魔法使いだ。
その魔法使いは私を瞠目したまま。私もその視線から逸らさずに見据える。
『あぁ…そうか。これが…バグ…なのか?彼女にとっての……ま者か?』
ガラッとその魔法使いの目付きが一変した。
『彼女が幸せになる為に作った筈なのに…でも…』
「俺…やっぱり、あんたの魔力には…興味があるんだよね─。ねぇ、俺と一緒に来ないか?」
私から視線を逸らす事なく、ニヤリと口元を歪ませて問い掛けて来る。
その魔法使いの言葉に、レフコースとダルシニアン様とエディオル様が反応する。
「何処に─かは知らないけど…あなたと一緒に行くなんて事は…無い。」
「そうかな?んー…残念だけど…今は仕方ないか?」
『そろそろ…一旦引くか…』
ー引く?ー
その魔法使いがニヤッと嗤う。
「─っ!ダルシニアン様!」
「えっ?」
「それじゃあーお世話になりましたー。」
魔法使いがそう言うと、ガシャンと音を立てて牢屋の鍵が壊れて扉が開いて、スッと私の側迄来て耳打ちをする。
『本来、そこに居るのは…聖女だったのに。何故…お前が居る?』
「ハル殿─っ」
『主!』
エディオル様とレフコースが、一斉に魔法使いに飛び掛かるが、その寸前で魔法使いは姿を消し去った。
「な…何で…どうなってるんだ?これ…かなり…ヤバくないか?」
ダルシニアン様の顔は…真っ青を通り越して…真っ白だ。そりゃあ、捕えていた罪人が逃げてしまったから仕方無いんだろうけど…怯え方が異常じゃない?
「あー…ダルシニアン様…何と言うか…逃げられても仕方無かったと思いますよ?」
取り敢えず、軽くフォローを入れる。
「“仕方無かった”で済む話じゃ…ないんだ。」
ーだって、今、ゼン殿が登城しているんだろう!?ー
と、叫びたくなるのをグッと我慢するクレイル。
「いえー本当に、仕方無かったんですよ。だって…彼は…隣国の魔法使いだから─。」
「え!?」
「兎に角、私が今知り得た事をお話するので…王城の方に移動しませんか?」
「分かった。私は、この事を父ー魔導師長に話して来る。エディオル、先にハル殿とランバルトの元に行ってくれ。」
そう言うと、ダルシニアン様は急いで部屋から出て行った。
「ハル殿…さっき、最後にあの男に何を言われた?」
さっき言われた事──
『本来、そこに居るのは…聖女だったのに。何故…お前が居る?』
“聖女”とは…宮下香の事だろうか?何故、隣国の魔法使いがこの国の聖女に関わってるの?分からない事は多いけど…でも…
ー私の居る場所が…彼女の…場所?ー
ドグリッ
ーそれが…ゲームのシナリオだとしたら…私は…ー
『主?』
スリッと、レフコースが私の右手に擦り寄る。
『どうした?大丈夫か?』
「あ…レフコース、私は大丈夫。エディオル様も…。最後に何を言われたのか…あまり聞き取れなくて…すみません。」
「…いや…。それなら…仕方無い。兎に角、何もされてはないか?」
「はい。」
少し後ろめたくて、エディオル様の顔をまともに見れなくて俯き加減で返事をすると、また、頭をポンポンと優しく叩かれた。
「さて…と。ランバルトの所に行こうか。ひょっとしたら…ゼン殿も…来るかもしれないな…いや、絶対に来るな。」
「ゼンさんが?」
ー何故?ー
と思い、顔を上げてエディオル様を見ると…心なしか疲れたような顔のエディオル様が居た。
182
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる