126 / 203
第五章ー聖女と魔法使いとー
ゼン無双
しおりを挟む王太子様の執務室に行き、神殿での出来事を話すと、国王様と宰相様にも聞いてもらった方が良いと言う事で、急遽、国王様の執務室に行く事になった。
準備が整い、国王様の執務室に向かうと─
「ハル様、大丈夫でしたか!?」
「ゼンさん!?」
エディオル様の言う通り、ゼンさんが居た。
「はい。私は大丈夫です。何もされたりはしていないので…。」
「それなら良かった…。まぁ…エディオル様が一緒に居たのですから…当然ですね?」
と、ニッコリ笑うゼンさん。
ーやっぱり背中がスースー?ゾワゾワ?するのは…気のせいにしておこうー
「待たせてすまないな。」
と、国王様と宰相様が最後にやって来た。
今、この国王様の執務室に居るのは─
ダルシニアン親子(クレイル、魔導師長)、カルザイン親子(エディオル、第一騎士団長)、ハンフォルト親子(イリス、宰相)、国王親子(ランバルト、国王)、そして、ゼンさんと私ーハルーである。
ーDNAって…凄いんですねー
「あの魔導師は…魔法使いだったのか…。」
私は、彼が同郷の者である事、彼が隣国で保護されているであろう魔法使いである事、黒いモヤを出した張本人である事を話した。
国王様はピリッとした空気を纏い
「…ならば、今回の事は…隣国の仕業と言う事か?もしそうであれば…王太子であるランバルトも被害を受けたのだ…看過できる事ではない。」
「あー…そこなんですけど…多分、隣国の王族?王様?は関与していないと思います。おそらく…あの魔法使いの単独行動だと思います。」
「何故そう思う?」
ーですよね?何故?って思うよねー
あの魔法使いがゲームを知っていて、そのゲームのシナリオ通りにしたくて動いているだけだからです…何て…言えるわけがないよね?頭がおかしい認定されてしまうよね?
「…誰か─までは口にしませんでしたけど、あの魔法使いは“彼女を幸せにする為に”と言っていたんです。」
取り敢えず、宮下香の事は黙っておこう。まだ、2人の関係がよく分からないから─。
「…ふむ…。」
国王様は眉間に皺を寄せて黙り込む。
「…ですが、国として関与していないと言っても、国が保護している魔法使いが、他国の者に手を出したのです。何もしない─と言う訳にはいきません。」
と、宰相様が言うと…
「そうですね。だって、ハル様が居なければ…王太子殿下がその黒いモヤに纏わり付かれていた事に気付かず、思考を奪われた廃人になっていた可能性があったのでしょう?それだけでも…アウトでしょうね。」
と、ニッコリ微笑むゼンさん。
「…分かっている。個人で動いていたとしても…先ずは抗議の手紙は送る。それで、国としてどう出て来るかによって、対応はその時に決める。」
「ハル殿、質問…しても?」
と、魔導師長であるセルレイン=ダルシニアン様が口を開いた。
「はい…何でしょうか?」
「その黒いモヤの事だが…それが一体何だったのか…分かったのだろうか?」
「あの魔法使いは、私にもソレを使おうとしたんです。」
『ハルー何故、名を交わせた?』
そう、彼は、私の名前を呼んでから尋ねて来た。
「名前を…呼んだんです。その時に、一瞬にして黒いモヤが広がりました。」
「やはり、禁忌の魔法の行使か…尚更、看過出来ない話だな。」
と魔導師長様は言うけど…あなたが言える立場ではないよね?と思ってしまうのは許して欲しい。
「魔導師長様の口から、その様な言葉を聞けるとは…思いませんでした。意外と…正常だったんですね?」
と、やっぱりニッコリ微笑むゼンさん。
はい、魔導師長様は固まってます。
「第一騎士団も…相手が魔法使いだったから仕方がなかった─なんて思っていませんよね?最近…少し…緩んでませんか?私、丁度、数日は王都に居ますので…明日、ゆっくりと、緩みを…正しに来ますね?楽しみ…ですね?」
「「「「「「……」」」」」」
ーあれ?ボスは…パルヴァン様じゃなかったの?え?ゼンさんって…ラスボスだったの!?ー
チラリとエディオル様を見ると…
やっぱり首をふられた─。
あ、ダメだ…王太子様の顔色が真っ白だ…。えー…あれ以上のものになるんだろうか…。
「あ!すみません!すっかり忘れてましたけど、私が、彼が魔法使いだって分かったのは…彼が私と同郷で、元の世界の言葉で呟いていたのを聞いたからで…。さっき私が話した事も、私だけが理解して聞けただけで…証明できる物が何もないんです。ですから…隣国に抗議文を送っても…無駄かもしれません。」
白を切られると、どうしようもないから。
「あー…確かに。私も一緒に居たけど、あいつが何か呟いてるな…としか…何を言ってるか、サッパリ分からなかった。」
と、ダルシニアン様も困り顔だ。
「それなら、抗議文ではなく、違う形でやるだけですね。その辺は、我々大人の仕事ですから、ハル殿は気にしなくて大丈夫ですよ?勿論、ハル殿の事は他言しませんから。」
と、宰相様は、私の気にしているだろう事も含めてそう言ってくれた。
「宰相様、ありがとうございます。」
ニコリと笑うと、横に居るゼンさんが、少しだけ…ピリッとした空気を和らげた。
182
あなたにおすすめの小説
水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います
黒木 楓
恋愛
伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。
異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。
そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。
「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」
そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。
「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」
飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。
これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる