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第五章ー聖女と魔法使いとー
続編
しおりを挟む「なーんだ。気付いてたんだ?ははっ。やっぱり、あんたは面白いね─。」
ーこっちは全然面白くないけどー
「そんなに警戒しないでよ。あんたに何かしに来た訳じゃないし…。話をしに来ただけだから。それに、あんたの事気に入ってるからね。」
ーいやいや、それこそ要らないし迷惑でしかないー
「取り敢えず…中に入っても良い?このままだと、誰かに見られるよ?良いの?」
ー見られて困るのはあなたでしょう?ー
と言いたいところだけど、私だって訊きたい事があるから、仕方無く中に入らせた。
「あんたさぁ…日本人だろ?」
寝室ではなく、私室の椅子に、お互い机を挟んで座り、座った途端にその魔法使いが話し出した。
ーどうする?もう、それは肯定しても良いかな?ー
「…だとしたら?」
「やっぱり…おかしいと思ったんだ。“ハル”なんて俺は作ってないから。」
「…作ってない?」
「俺ね、このゲーム…続編の製作者の1人だったんだよ。」
「…ゲーム?続編?」
ドグリッと心臓が音を立てる。
実際、私はこのゲームどころか、お姉さん達の居たゲームも知らなかった。それに、そのゲームはもう終わったと思っていた
なのに──
「あれ?ひょっとして…知らなかった?あぁ…だから、余計にうまく進まなかったのか?」
と、魔法使いは思案するように少し黙った後
「なら…教えてあげる。」
と言って、ゲームの話をしだした。
この続編の設定は、前作で聖女様達がノーマルエンドを迎え、誰とも恋に落ちずに浄化の旅を終えて元の世界に還った1年後の話になる。
続編は、パルヴァンの森で眠りに就いていたフェンリル─レフコース─が目覚めるところから始まる。目覚めたフェンリルが暴れて…その暴れるフェンリルをやっとの思いで拘束する事に成功するのだが、グレン=パルヴァン辺境伯が犠牲となり亡くなってしまうのだ。
そして、浄化から1年程経つと、何故かパルヴァンの森が異常な程のスピードで穢れが溢れ、魔導師達では手に負えなくなり、また、聖女様を召喚する事になった。そこで召喚されたのが─宮下香─だった。
彼女は1人だったが、異世界に召喚された事を恨む事も嘆く事せず、一生懸命に勉強し、浄化にも成功する。
そして、主だった巫女を失い、グレンを殺してしまい心を閉ざしたフェンリル。そのフェンリルに寄り添い、その心を癒し、心を通じ合わせ─2人は名を交わす事になる。
宮下香は、元の世界ではごくごく普通の女子高生だったが、両親が交通事故で亡くなり親戚筋に引き取られたが、そこで義姉と義妹から苛められていた。
そのせいもあり、宮下香は浄化を終えても元の世界には還らないと断言。この世界で宮下香は、聖女を務めながら攻略対象者達と関係を深めていき、幸せになる。
隠しルートでは、心が通じ合い奇跡が起きて、擬人化したフェンリルと結ばれるらしい。
ーレフコースが…擬人化?それはちょっと見てみたい…かも?じゃなくてー
「分かる?ここは…宮下香を幸せにする為に作った世界なんだ。それなのに…。」
うっそりと笑いながら語っていた顔が、今度はギュッと眉間に皺を寄せて語り出す。
「前の聖女達が完璧に浄化するわ、フェンリルも誰も殺さず拘束されるし…。1年経っても穢れが出ないから…当たり前だけど、宮下香が召喚されない。何でだって思ってたんだ。」
「あなたは…どうやってこの世界に来たの?そんなに宮下香が気になるなら…隣国ではなく、ウォーランド王国に居れば良かったんじゃないの?」
「はっ!そんなの、最初から分かってたらそうしていたよ!でも…俺は…召喚とかそんなんじゃなくて、転生者なんだ。俺は、日本では…多分…病気で死んだんだと思う。日本人としての記憶が戻ったのは3年位前で、その時にはもう、隣国で“魔法使い”として保護─国の管理下に居たんだ。」
ー転生者。本当に…そんな人が居るんだー
「もしかして…ストーリーが進まないから…あなたが自分の魔力で、隣国からウォーランド王国に宮下香を…召喚した?」
「─そうだよ。魔法使いには…それができるだけの魔力があるからね。まぁ、それでも、できるのは1回だけだろうけどね。2度目は多分…魔力が足らなくて死んじゃうかもしれないからね。」
ー魔法使いはレアで色んな意味で狙われるー
たった1人で召喚の魔法陣を発動させられる。確かに…凄過ぎると言うか、チートだよね…。
兎に角、誰が何故新たな聖女を召喚したのか、これでハッキリと分かった─けど…コレ…どうやって説明すれば良いの?いや、絶対無理だよね?ゲームの世界とか…うん。無理だ。
「だからさぁ…、あんたが居るその場所は、本当は宮下香が居る筈の場所なんだよね。」
「…それは…ゲームの話であって、現実は違う。私は、私の意思を持って…ここに居る。」
レフコースは、ハルが良いと言ってくれた。だから、私は今、ここに居るのだ。
「本当に…そうかなぁ?だってさぁ…フェンリルと名を交わしたと言っても、真名じゃないだろ?それ、意味ないからね─」
と、その魔法使いは愉快そうに嗤った─
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