巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第五章ー聖女と魔法使いとー

居場所

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「本当に…そうかなぁ?だってさぁ…フェンリルと名を交わしたと言っても、真名じゃないだろ?それ、意味ないからね─」

「─え?」

「本来、真名じゃないと名を交わしても繋がれる事はないんだ。でも、繋がれた。それは、あんたの中に微かだけどパルヴァンの巫女の魔力が流れているから。その魔力に“レフコース”の魔力が反応しただけ。だから…あんた達の繋がりは…とても脆い。そこに、本当に繋がる筈だった宮下香が割り込んで来たら…どうなるんだろうね?」

目の前に居る魔法使いは、本当に愉快そうに嗤う。

「“強制力”って分かる?例え違うように進んだとしても、結局は基在るところに向かうんだよ。あんたが真名で交わさなかったのも…後々あのフェンリルが宮下香と改めて名を交わす為だったんじゃない?あんたは自分で選んだと思ってるかもしれないけど…そうじゃないかもね?」

それから、その魔法使いは「はははっ」と声を出して嗤った後、少し真顔になり

「モブなんて、所詮そんな存在なんだよ。俺だって“魔法使い”だからやりたい放題してるようにみえるけど…俺だって本来はこのゲームに存在しない者なんだ。国に保護されて…自由なんてなかった。居場所もなかった。記憶が戻って…それも腹立たしくなって…。大人しくしてるのも嫌になって…。気が付けば、俺の作ったゲームのシナリオも変わっていて、更に腹が立った。それで思ったんだ。俺がこの世界に転生したのは、そのシナリオを正す為だったんじゃないかって─。」

魔法使いは、両肘を机に着いたまま両手を組んで、その上に自身の顎を乗せ、私をしっかりと見据える。

「─なぁ、ハル。に来い。はハルの場所じゃない。俺が作ってやる。」

お互いに視線を逸らさず、沈黙が続く。
先に視線を逸らしたのは─魔法使いだった。

「…ここまでか…。」

隣の部屋─寝室で寝ているレフコースが、起きた気配がしたのだ。私が軽く眠りの魔法を掛けていたのだけど、その魔法が切れたようだ。

「なぁ、さっき言った事、本気で考えておいて?きっと、これから宮下香は…あんたの居場所を奪って行く筈だから。それと─俺はこの世界では─“リュウ”と呼ばれてる。俺のところに来る気になったら、俺の名前を呼んでくれ。じゃあね。」

そう言って、魔法使い─リュウは一瞬にして姿を消し去った。

『主?』

隣の寝室に繋がる扉が開き、首を傾げながらレフコースが私の足元まで寄って来た。

『どうか…したか?』

スリッと私の左手に顔を擦り付けるレフコース。

ー本当に可愛いなぁー

しゃがみ込んでワシャワシャと撫で回した後、レフコースの首にギュッと抱き付く。

「嫌な…怖い夢を見ちゃって…眠れなくなっちゃって…。」

『ふむ。なら…あの騎士でも呼んで話でもするか?』

「いやいやいや!それは絶対しちゃ駄目だからね!?しちゃ駄目なやつだからね!?」

『?あの騎士なら…喜んで来ると思うぞ?』

と、首をコテンとするレフコース…可愛い筈なのに…何となく小悪魔に見えるのは…私が疲れているから…と言う事にしておこう。






『─なぁ、ハル。に来い。はハルの場所じゃない。俺が作ってやる。』





首をふるふると振り、そっと息を吐く。

ー惑わされるなー

ここは、私が居て良い場所─なんだ。大丈夫。

そっと自分に言い聞かせた。












「やっぱり…ルナさんとリディさんは…ゼンさんと一緒に騎士団の訓練に行ってるんですね…。」

「はい。ロンも行ってますよ。」

今日は予定通り、第一騎士団の訓練に差し入れを持って行く為に、朝早く起きて調理場に向かうとクロエさんが待っていてくれていた。

「クロエさんは行かなくても良かったんですか?」

義父ちちは別として…私は、あの3人程の腕前が無いので、行きたくても行けないんです。」

「…あのー…ひょっとして…ルナさんとリディさんって…んですか?」

と訊けば、クロエさんは何も言わずにニッコリと微笑む。

ーやっぱりかー

うん。分かってました。パルヴァン様の訓練を見に行った時に…あの2人は…元気に立っていたもんね…無傷で。そんな2人が…リスの侍女兼護衛って…可笑しくない?無駄遣いしてない?これはちょっと相談案件だよね?

「あぁ、ハル様は何も気にする必要はありませんよ?あの2人はハル様の侍女になりたくて、勝ち抜いた2人ですから。無駄遣いではありません。」

「…ソウナンデスネ…」

ーだから、何で、皆、私の思ってる事が分かるの!?ー

「ハル様は分かりやすいですからね。まぁ…そこがハル様の可愛いところですよね?ふふっ」

ーえー…“凄い”を通り越して“怖い”ですよ?ー

「えっと…取り敢えず…時間も限られてますから…サクサクと作りましょう!」

と、自分に言い聞かせて差し入れの準備を始めた。



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