巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

文字の大きさ
135 / 203
第五章ー聖女と魔法使いとー

買い物

しおりを挟む

「ゼンさんは、また騎士団の訓練に行くんですか?」

と、気になっている事を訊いてみると

「いえ。もう訓練には行きません。今回の事で、ルイス様─第一騎士団長様も、と思いますから。これ以上腑抜ける事はないでしょう。」

と、ニッコリと微笑む。

「ソウナンデスネ…。」

ー第一騎士団長様、本当に、本当にお疲れ様でした!今度、体に良いポーション、持って行きますね!ー



「じゃあ、この一週間は、パルヴァンとしの仕事があるんですか?」

「それもあるのですが、宰相様にお願いされた仕事もあるので、明日以降も登城はしなければいけないのです。ハル様については、王女殿下との面会以外の予定はないので、自由に過ごして頂いて良いですよ?」

ー“自由に”と言われると、逆に悩むんだよねー

あ、そうだ、パルヴァンでお世話になった人達へのお礼を考えて用意しようかな?

「あのー、また街に買い物に行っても良いですか?」

「それは勿論構いませんが、必ず誰かを連れて行って下さいね。1人では行かないようにして下さいね?」

「勿論です!」

ゼンさん、何となく目が笑ってませんからね?これは、絶対守らなければいけない約束ですね?“誰か”と言う事は、レフコース以外にと言う事ですね?了解です!

「ハル様は物分かりが良くて助かります。」

ーおぅ…ゼンさんも私の考えてる事が…分かるんですね…いや、私が分かりやすいんでしたねー











「ハル殿、すまない。私も数日、登城する事になった。」

買い物に行きたい─と相談しようとする前に、エディオル様がそう言って来た。

「あーいえ、私の方は大丈夫なので、お仕事?を優先して下さい。と言うか…私はもうスッカリ元気なので…このまま近衛に復帰しても─」

と言い掛けると、エディオル様がそっと私の頬に手を滑らせて─

「一週間後には、パルヴァンに帰ってしまうんだろう?それ迄は、近衛に復帰しないし付き添いも辞めない。」

「っ!!わ…分かりました!!」

「ん。分かってもらえて良かった。」

ニコリと、微笑むエディオル様。

ーこの世界の人達は、笑顔で圧を掛けてくるのが標準なんだろうか?ー

「そう言えば、レフコース殿が居ないが…どうかしたのか?」

「あー、レフコースなら、お散歩に行ってます。なんでも、お昼寝するのに良い場所を見付けたみたいで、今日も行って来るって言ってました。」



『パルヴァンに帰る前に、主を連れて行きたい。』 



と言ってくれたレフコース。一緒に行って一緒に昼寝…大きくなってもらって、モフモフに埋もれて寝かせてもらえるだろうか?

「そうか…。なら、俺もレフコース殿も居ない時は、ルナ殿かリディ殿と一緒に行動するように。」

「ふふっ。ゼンさんにも同じ事を言われました。1人では行動しません。」

ー買い物は、ルナさんとリディさんと行こうー








『主、ただいま─』

フワリと、お花?の香りが漂った。

「レフコース、お帰りなさい。お花?の良い香りがするね。お気に入りの所には、お花も咲いてるの?」

『あぁ、沢山咲いている。主にも見てもらいたい。』

と、嬉しそうに話すレフコースは…本当に、安定に可愛い。

ー擬人化したレフコースー 

一体、どんな容姿をしているんだろう?アレ?レフコースって…一体何歳なんだろう?え?まさかのおじいちゃん!?

と、1人脳内でワチャワチヤしたのは…レフコースには内緒にしておく。












「では、買い物は明日、行きましょうか?」

就寝の準備をしている時に、買い物に行きたいと、ルナさんに相談すると、すぐに了承してくれた。

『主が買い物に行くなら、散歩に行って来ても良いか?』

「レフコースは、よっぽどその場所が気に入ったんだね?」

『気に入っている。なんとなく、昔のパルヴァンのあの森の雰囲気に似ているのだ。きっと、主も気に入ると思うぞ?』

と、尻尾をフリフリしながら嬉しそうに笑う。そんなレフコースをワシャワシャて撫で回してからベットに潜り込んだ。












*翌日*


「何を買うかは決まってるんですか?」

「はい。ある程度は決めてあるので、後は選ぶだけですね。」

特にお世話になった、パルヴァン様とシルヴィア様とルナさん、リディさん、ティモスさんには、防御魔法を掛けた魔石を加工して、アクセサリーを。他の人にはハンカチを…と。
魔石を選んでいる途中、レフコースの瞳の色とよく似たアイスブルーの魔石を見付けたので、それも一緒に購入した。

ーレフコースにも、何かプレゼントをしようー

たまに裏切られる事もあるけど、レフコースにはいつも助けられている。本当に…有り難くもあり、大切な存在だなと思う。



『本来、真名じゃないと名を交わしても繋がれる事はないんだ。でも、繋がれた。それは、あんたの中に微かだけどパルヴァンの巫女の魔力が流れているから。その魔力に“レフコース”の魔力が反応しただけ。だから…あんた達の繋がりは…とても脆い。そこに、本当に繋がる筈だった宮下香が割り込んで来たら…どうなるんだろうね?』


ふと、魔法使いリュウの言葉を思い出す。

ーレフコースは…その事を知ってるんだろうか?ー

いつも私に真っ直ぐなレフコース。
うん。レフコースには…本当の事…を話してみよう。

そう思いながら、ルナさん達と買い物をして、少し早目にパルヴァン邸へと帰った。



    
しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

処理中です...