巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第五章ー聖女と魔法使いとー

途切れた繋がり

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「別に…あのハルって人が居なくなっても…問題はないんじゃないかしら?」

と、俺の横に居る女…聖女様が口を出した。

また、レフコース殿の耳がピクリッと動き、アイスブルーの瞳で聖女様を一瞥する。ハル殿と一緒に居る時の優しい目ではない。こんな目もするのか─と、思う程の冷たい目だった。

なのに、この聖女様は、そんなレフコース殿の様子を気にする事なく話し続ける。

「だってそうでしょう?あの人はただの薬師。もともと存在しない筈の人。巻き込まれて来ただけの人なんでしょう?レフコースと名を交わすのも…本当は私だったんだもの。これで、元に戻っただけなのよ。」

ブワッと、一瞬にしてレフコース殿が殺気を膨らませる。

「レフコース殿!」

サッと聖女様を背に庇い、レフコース殿に呼び掛ける。

『騎士よ、そこを退け─。いくら我がお前を気に入っていると言っても…主を馬鹿にする其奴を庇うと言うなら─…』

「レフコース殿、、ハル殿は、あの魔法使いに何と言ったか覚えているか!?」




『このフェンリル…レフコースが人を殺す?そんな事は有り得ないし、そんな事をさせる事もない。殺そうとしたのは─人間の方だった。』




『……』

「今のその大きさで暴れれば…どうなるか…分かるだろう?落ち着いてくれ─。」

そう言うと、レフコース殿は何かを堪えるように苦しい顔をした後、殺気を収め、また犬のサイズに戻った。ホッとしたところで、後ろに庇っていた聖女様が俺の背中にしがみついて来た。

「エディオル様、怖かったです!助けてくれて、ありがとうございます!」

「……」

俺は、この聖女様を助けた訳じゃない。レフコース殿が誰かに怪我を負わせてしまったら…その事で、ハル殿が辛い思いをするのが…嫌だっただけだ。

「…聖女様…移動したいので…離れていただいても?」

「エディオル様、何度も言ってますけど、名前で呼んで下さい!私、カオルです!」

「…聖女様を名前で呼ぶのは…一介の騎士である私には烏滸がましい事ですから…。」

ー誰が…名前呼びなんて…ー

『騎士よ…我は…主を探して来る─』

レフコース殿はそう言うと、姿を消した。




『…主の魔力を感じぬ─主が…何処にも居ない─』




一体、どう言う事だ?不安に襲われそうになる気持ちを抑える。俺も動きたいのに動けない。

ー大丈夫だ…取り敢えず、今は…落ち着いて、レフコース殿の帰りを…待つだけだー


『カル─エディオル様…』

きっと、レフコース殿は、顔を真っ赤にして俺の名前を呼ぶハル殿と一緒に帰って来るだろう─。そう思うと。心が少し温かくなった。










ーそんな思いは、その日のうちから、少しずつ崩れていくとも知らずにー













ー宮下 香ー

彼女には、不幸な生い立ちを詰め込んだ。それでも人を恨む事なく、自分を磨き続ける努力家の彼女。勝手に召喚された先でも、嘆く事も泣く事もせず聖女としての務めを果たし、異世界で幸せになる。彼女が幸せにならないと、報われないじゃないか。ここは、彼女が幸せになる為の世界なんだ。
ハルの魔力には興味があった。魔力量が多いけど、強すぎる感じはなくて…何となく心地良い魔力だった。

「まさか…ハルも俺と同じで、モブの魔法使いだったとはね…。」

ハルが発動させたのは、帰還の魔法陣。しかも、同時に結界の様な魔法も発動させていた。

「ホントに…格上どころか、チートだろ…」

そんな力があったら、俺はこの世界で好き勝手に過ごすのに。日本に還ったら、魔法なんて一切無くなるのに…。



『私は…例え報われなくても、失敗しても辛い事があっても…自分の意思で選んだ道を歩く事ができない─そんな世界で生きていくなんて…嫌だ。』



ーそんなの…綺麗事だろー

ハルは…日本ではぬくぬくとした環境の中で育って来たんだろう。勿論、病気で死んだりもしていない。まぁ…顔は可愛かったし…手に入れる事ができなかったのは、ちょっと残念だけど…邪魔者は居なくなった。

「よし。ちょっと宮下香がどうなってるのか…見に行くか。」

そう囁いた後、リュウはパルヴァンの森から王都へと転移した。













「ハル様?」

ルナが声を掛けながら、ハルの部屋の扉を開けて中へと入る。1人になりたいからと、部屋に閉じ籠っている筈のハルが、そこには居なかった。
寝室に続く扉が開いていた為、寝室で寝ている?と思い、ルナはそのまま寝室に向かうが─そこにもハルは居なかった。

「ハル様…何処に行ったのかしら?」

と、思案しているところにレフコースが現れた。

『主!?主は居るか!?』

「レフコース殿?そんなに慌てて…どうしたんですか?」

『侍女か…主を見なかったか?』

「ハル様ですか?ちょうど、私も今、ハル様を探していたところなんです。邸に…居ないんですよ。レフコース殿も、知らないんですか?」

『急に…主の魔力が感じられなくなったのだ。』

「え?」

『もう一度…外を探して来る故、侍女も心当たりを探してくれ。』

「わ…分かりました!」

ルナは早足でハルの部屋から出て行った。




『主─何処に居る?』





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