巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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第六章ー帰還ー

レフコースと騎士

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『ハルは…元の世界に還ったんだよ─。』



一気に俺の世界から色が失くなった。







魔法使い─リュウ─は、この世界が前世の自分が作ったゲームの世界である事は伏せ、自分は聖女と同じ世界からの転生者であると前置きをした。そして、自国の為に自分の判断で聖女を召喚したが、その彼女が隣国であるウォーランド王国に飛ばされてしまったのだと─。

「その際、彼女の聖女としての力が少なかったから、聖女の力が上がるようにと、この世界で幸せになれるようにと、俺の─魔法使いの魔力を少し分け与えた。ただ、その魔力で“魅了”等の魔法を行使しているとは…思わなかった。」

これについては、本当の事だろう。寧ろ、彼女の行動を知ってショックを受け、自分の仕出かした事の大変さに気が付いたようだった。過去の自分とゲームに固執し過ぎた─と。


「隣国が、国としては関わっていないと?」

「あぁ、全く関係無い。ただ、都市から離れた町では穢れが目立ってきていて…それを俺が勝手に何とかしようと思っただけだ。国が…その穢れを、都市から離れていると言う理由で…何もしないから…。」

これも、本当の事のようだ。隣国の今の王族は、あまり評判が良くない。自分達は贅沢三昧の暮らしをし、民達の事は後回し。特に辺境地に行く程穢れが増して来ているそうだが、放ったらかし状態だと言う。


「─そうか…ならば、お前の国の民にとっては…聖女は必要な人間─と言う事になるのか?」

と、国王陛下がリュウに尋ねると

「─聖女として働いてくれるのであれば…必要な人間です。」

「…そうか…。」

「では、フェンリルの贄の件は…どうして、あのような事を?」

と、宰相様がリュウに訊く。

「アレは、本当にただの遊びのつもりだった。フェンリルに興味があったって言う事もあるけど、今のパルヴァン伯をよく思っていない…俺の国の貴族が…ギデルを遣ってやらせたんだ。その貴族については…そこに居るゼンに、全て話しておいたから、後で聞いてくれ。」

これも本当のようだ。これに関しては、既にグレン様に報告を飛ばした。報告が届けば、直ぐに動くだろう。

「では…我が国の薬師─ハル殿については?」

「ハルの事は…フェンリルの時に初めて会って、その不思議な魔力に…興味を持っただけ。そして、牢屋で会った時に、ハルも、俺やあの聖女と同じ世界の人間じゃないのか─と気付いて、更に興味が湧いて…ハルを俺のものにしようかと思った。それで、ハルと恋仲だと言われていた騎士と、聖女の噂を利用して…ハルを手に入れようとしたら…拒絶されたんだ。」

ーハル殿ー

リュウは、チラリと、ゼン殿に視線を向けると、ゼン殿は冷たい視線をリュウに向けたまま首を縦に振った。


「俺は…知らなかったし、全く気付きもしなかったんだけど…ハルも魔法使いだったんだ。」

「「「え??」」」

「それで、ハルは、俺が聖女を召喚した事を知っていたから。召喚できるなら、還れると気付いて…。それで…ハルは─自分で自分の世界に…還ったんだ。」















『─主が…この世界には…居ない?』

パルヴァン邸でその話を聞いた後、そう言って、レフコース殿はノロノロとした足つきで部屋を出て行った。
今も、ずっと、ハル殿の部屋のベットの上で丸まっているそうだ。








で、聖女と一緒に居た時にハル殿と出くわした時─

『騎士。我はまた後で戻って来る故…話を聞かせてもらうぞ?』

と、レフコース殿に言われた。

それから聖女を部屋まで送り、まだ一緒に居て欲しいと迫って来る聖女を何とか引き剥がし、再びあの庭に足を向けた。


ーアレを見て、どうして俺と聖女が恋仲だと思えるんだ?ー


あの時は、まだそう思っていた。











『主に内緒で、何をしている?』


レフコース殿は、戻って来るなり、そう訊いて来た。


レフコース殿なら大丈夫か─と思い、今の俺の置かれている状況を説明した。

『ふむ─。それは、主にとっては逆効果だな─。主は、自分の知らぬ処で誰かを犠牲にした上、ぬくぬくと守られて喜ぶ人間ではない。逆に…傷付くだけだ。』

ーそんな事は…俺だって分かっているー

『騎士が理解している事は、我も分かっておる。上の人間が─阿呆なんだろう。それで─、あの聖女は、何やら変な…気持ち悪い魔力を使っているな…。』

「“気持ち悪い魔力”?しかし─先程のレフコース殿は、聖女に撫でられて喜んでいなかったか?」

『あぁ…最初はな…。主と同郷なのだろう?主と同じ様な感覚がして嬉しくてな?ただ、撫でられているうちに、どんどん気持ちの悪い何かが纏わりついて来る感じがして来たのだ。それで、騎士、お前を見れば、お前の腕にもその気持ち悪い何かが纏わりついていた。それが、気になったのだ。』

と言い、レフコース殿が俺の腕にフッと息を掛けた。

『ふむ。そこまで強い物ではないが…主のピアスでも無理なのか?』

このピアスを身に着けていても…残る

『主は、騎士に何かあれば…心配するだろう?故に、我が時々お前の所に来て、それを祓ってやろう。騎士よ、十分に気を付けよ。そして─主を悲しませるなよ?』

それだけ言うと、レフコース殿は姿を消し去った。






    
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