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第七章ー隣国ー
ハル、ミヤ登場
しおりを挟むミヤさんと私が頷いたのを見て、ゼンさんも頷いてから前に向き直りスッと手を挙げた。
「それに関して、我々─パルヴァンからの提案があります。」
「提案?」
「はい。提案と…紹介したい人物も居ますが…よろしいでしょうか?」
「─許す。」
国王様が、首を傾げながらゼンさんに言う。
「では、先ず1人目の紹介を。ハル様─」
私はスッと立ち上がると共に、自身に掛けていた魔法を解いた。
「「「えっ!?」」」
私に反応したのは、国王様と王太子様と宰相様だ。元の世界に還ったと思っていたからだろう。
「パルヴァン付きの、薬師のハルです。」
ペコリと頭を下げて挨拶をする。何人かの貴族院の人が、心なしか顔色が一気に悪くなった。おそらく…“老害”の方々だ。私の横で、ゼンさんがその人達を見ながら微笑んでいるから、間違いではないだろう─。
「は?じゃなくて─。え?あれ?ハル殿?」
ー王太子様、焦り過ぎです。私でコレなら、ミヤさんが出て来たらどうなるんだろう?楽しみですー
「国王様、王太子様、宰相様、お久し振りです。先日は…お騒がせしてしまい、すみませんでした。」
と、取り敢えずペコリと謝っておく。
「ハル様は─何も悪くありませんけどね?」
と、ゼンさんは更に微笑む。
「ゼン、落ち着け。ハル殿は優しいからなぁ。」
と、パルヴァン様も笑っている─が、他の人達はピシッと固まった。
「─んんっ。そ…そのハル殿。また会えて…嬉しく思う。うん。本当に嬉しいんだけど…また、こっちに戻って来てくれたと言う事なのか?」
「はい─」
「エディオルは…この事を?」
「はい、知っています。」
「─そうか!それは…良かった!本当に…良かった─」
王太子様は、くしゃりと泣きそうな顔をしながら笑った。そんな王太子様の背中をポンポンと国王様が叩いてから
「それで?ハル殿がどうしたと?隣国の穢れと、薬師のハル殿と何か関係があるのか?」
「はい。続いて、2人目の紹介を─」
ミヤさんが立ち上がるのと同時に、ミヤさんに掛けていた魔法を解いた。
「皆さん、お久し振りです。ミヤです。」
ガタガタッ─バタンッ
「─────へぁ?」
“へぁ?”の声の主は勿論──王太子様だ。
ミヤさんを目にした瞬間、王太子様が勢いよく椅子から立ち上がった。その勢いで椅子がガタガタッと後ろに下がり、その勢いのまま椅子がバタンッと後ろに倒れたのだ。
ー椅子…壊れてないかなぁ?高そうだけどー
じゃなくて─。
「ふふっ…王太子様、お久し振りです。」
「はぇ?な─で?へ?ミヤ…さま?へ?──あぁ…夢か?」
これ以上無いよね?位の勢いで王太子様がパニクっている。今は、自分の頬をつねっている。
ー何処の世界でも、そうするんですねー
「──あ…の…聖女様─ミヤ様が…どうしてここに?」
驚き固まっている人達の中で、何とか我を取り戻した宰相様が声を出した。それに答えたのはゼンさん。
「実は─先日、色々な理由がありまして。このハル様が一度、ご自身の世界に還ってしまいましてね?あぁ、貴族院方々は知らなかったですか?ハル様は、あの聖女様達と同郷なんです。」
「ひぃ──っ」
と、貴族院の誰かが小さく悲鳴をあげた。
「ハルは、私の可愛い妹みたいな子なんです。ふふっ─色々とお世話になったみたいで…ありがとうございます。」
ゼンさんとミヤさんがニッコリと微笑む。
「───夢じゃない?嬉し…あ!へ?え?コレ…また…ヤバく…無いか?ヤバいよな?」
王太子様は、嬉しいけどヤバい状態だと気付いたようで、更に焦り出している。
「──んんっ…あの、ミヤ様?その、どうして戻って?来られたのでしょう?いえ、変な意味ではなく、聖女様が居ると言う事は、とても有り難く嬉しい事なのですが…。」
「宰相様、変な意味じゃ無い事は分かっていますから。私、一度は自分の世界に還ったけど、還ってからもここでの聖女としての生活が忘れられなくて…。この国に穢れは無いと聞いたけど、聖女は穢れを祓うだけが務めじゃないでしょう?また、この国でこの国の人達の為に何かしたいな─と思って、ハルに─ハルと一緒にこの国に連れて来てもらったんです。」
「そ…そのた…ただの薬師が?どうやっ──ひぃっ」
ーゼンさん、ミヤさん、抑えて下さいー
「えっと、確かに、私はただの薬師なんですけど…その前に…私…私は魔法使いなんです。なので、自分で自分の世界に一度還って、こっちに戻って来る時にミヤさんを一緒に連れて来ました。」
その場が一気にざわついた。
「魔法使い!?」
「それが本当なら、何故パルヴァンは今まで黙っていた!?」
「魔法使いが居るなら、もっと使い用が─」
「「「“使い用”?」」」
ミヤさんとゼンさんは勿論の事、パルヴァン様もその言葉に反応した。
貴族院達は、一気に顔色が青ざめ、国王様と王太子様と宰相様は手で顔を覆っている。
「─はっ。お偉い方がそんなだから、今迄黙ってたんだ。」
ゼンさんが口調を崩して話し出した。
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