異世界で守護竜になりました

みん

文字の大きさ
23 / 46

22 フラグ?

しおりを挟む
「祖父母共に平民だったが、祖父も父も騎士爵を得ていた」

騎士爵は、基本は一代限りの爵位だ。カイルスさんのお祖父さんもお父さんも、立派な騎士なんだろう。勿論、竜騎士のカイルスさんも騎士爵を得ている。

「彼女とは、特に問題もなく穏やかに過ごせていたと思っていた。でも、学生生活が始まってから、彼女の態度がよそよそしいものになっていったんだ」

竜王国では、13歳から17歳迄の4年間の義務教育がある。特に問題がある場合は別として、貴族平民問わず、最低でも2年は学校に通わなければならない。平民に関しては無料で受け入れられる為、竜王国の平民は他国よりも教養が高いと言われている。
学校のクラス分けも、身分は関係無く実力順で、実力があれば高位貴族の子息令嬢の目に留まり、卒業後の進路にも影響を与えたりもする。だから、竜王国は平民でもそれなりの地位を得ている人が多かったりもする。

「彼女は成績優秀で俺は普通だったから、彼女とはクラスが違っていてね。彼女のクラスには、それなりの貴族の子息が居たから……しかも、彼女の見目がだから…」

ジャスミーヌさんは綺麗な上に白竜だ。しかも優秀となれば──


 
『婚約を解消したいの』

そう言われたのが、学校を卒業する半年前。

『ヴィクター様との子を授かったの』

“ヴィクター=ハイエット”

ハイエット公爵家の嫡男だった。

「まさか、彼女が他の男とそう言う仲になっていたなんて、全く知らなかったんだ。しかも、入学して半年も経たないうちから」
「半年!?」

ー早過ぎない!?ー

しかも、公爵家嫡男と平民女性だから、簡単に事が進む筈は───

「あ……白竜?」
「そうだ。竜人にとって、黒竜の次に貴いとされる白竜だから、身分なんて問題にはならないどころか、歓迎される立場なんだ。それに、西の守護竜が不在だったから、彼女こそがその守護竜なのでは?とも言われていた」

西の守護竜は白竜と決まってはいるが、白竜守護竜ではない。側衛に選ばれなければならない。そして、その側衛が主を違える事は無い。

「公爵家の子息との子を授かったと言われれば、騎士爵でしかない祖父や父が拒否できる訳もない。直ぐに婚約が解消されて、彼女は卒業後直ぐに結婚して子を生んだ」

それから暫くすると、ヴィクターさんが爵位を引き継ぎ、ヴィクターさんが公爵、ジャスミーヌさんは公爵夫人となった。



「それからも、祖父が俺の為に婚約者を決めようとしていたが、俺はそれを断り続けた。他人に振り回されるのが嫌だった。そんな思いもあって、もう誰にも振り回される事がないように、竜騎士になろうと思ったんだ」

学校を卒業した後、直ぐに竜騎士団の入団試験を受けて竜騎士となったカイルスさん。竜騎士ともなれば、色んな貴族と接触する事も多くなり、そこで色々と知る事もあったそうだ。

『もともと、祖父に言われただけの婚約であって、カイルス様に想いなどなかった』
『何の面白味も無い男性だ』
『白竜の私が、何故鳥獣人と結婚しなければいけないのか?』

「俺も、彼女に対して恋愛感情なんて無かったが、普通に上手くやっていけると思っていた。でも、彼女は違っていたらしい。そんな事に、俺は全く気付かずに………情けない限りだろう?」

どう見ても、ジャスミーヌさんが悪い。お互いに良ければ─と言われていたのだから、嫌なら嫌だと言えば良かったんだから。婚約者が居ながらの浮気も、婚約者が居ると知ってて手を出す男も有り得ない。でも、その男─ヴィクターさんは、数年前に病死し、ジャスミーヌさんが女公爵となったそうだ。何故、2人の子が公爵を引き継がなかったのか?2人の子は女の子で、普通の赤竜だったから。そんな普通の竜よりも、白竜であるジャスミーヌさんが引き継いだ方が良いから──だったそうだ。

「そんな俺に、また近付いて来る理由はただ一つ。俺が竜騎士になって、更に西の守護竜の近衛になったからだろうな」

“カイルス=サリアス”ではなく、“西の守護竜の近衛”に近付いて来たと言う事なんだろう。でも、それだけじゃない可能性もある。2人は美男美女で、並んだ姿はお似合いだった。今の所、カイルスさんがジャスミーヌさんに恋愛感情を抱いていないのは確かだけど、これからどうなるかは分からない。

「これ以上、俺に絡んで来ない事を祈っている」

ーそれ、フラグではないだろうか?ー

あのタイプの女性が、あのまま黙って引き下がるかなぁ?引き下がってくれる気がしない。靡かなかったカイルスさんに執着して来る未来しか見えないのは……私だけじゃない。目の前のカイルスさんも、『祈る』と言いながら微妙な顔をしている。

「そうですね……このまま、平和に過ごせれば良いですね」





そんな訳……ないよね?






しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

どうしてこうなった

恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。 人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。 レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。 ※タイトルとあらすじを一部変更しました。 ※なろうにも公開しています。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...