異世界で守護竜になりました

みん

文字の大きさ
28 / 46

27 交流会

しおりを挟む
カイルスさんからの突然の告白から3ヶ月。

キース達が交流会の準備に走り回っている間、私はマナーの勉強とダンスの練習と浄化の訓練でクタクタになる毎日で、カイルスさんとの婚約については、カイルスさんに任せっきりだった。
しかも、なんと、リシャールと芽依さんとの婚約の話も出たそうで、ショックを受けたレナルドさんを、お母さんが慰める為に、最近ではレナルドさんの家でご飯を作って一緒に食べたりしている。

「これ、もう、私が『お姉さん』って呼ばれる未来しかなくない?」

それに、何と言ってもお母さんには一番幸せになって欲しい。今迄一人で私を生んで育ててくれたのだから、これからは自分の幸せを一番に考えて欲しい。レナルドさんとなら、きっと幸せになれるだろうし、お母さんを護ってくれるだろう。

兎に角、この数ヶ月の間は、色々と忙しくて大変だったけど、嫌な忙しさではなかった。

交流会まで1週間。参加予定者リストを確認する。
勿論、西領の殆どの貴族が集まる。その為、人数が多くなり過ぎないように、2日に分けて交流会を開く事にした。1日目が子爵、男爵、準男爵、騎士爵。2日目に公爵、侯爵、伯爵を招く事にした。

『普通は、1日目に上位貴族じゃないの?』

と訊けば

『問題が起こる気しかしないので、敢えて2日目にしました』

とキースに言われて納得した。1日目に問題が起これば、2日目の交流会が中止になる可能性があるから。

“ジャスミーヌ=ハイエット公爵”

参加予定者リストの上から2番目にある名前。“トラブル要因”としか読めない名前だ。しかも、このハイエット公爵を推す貴族もまた、同じリストに載っている。

「何かが起こる未来しかみえない」

あのジャスミーヌさんが、あのまま黙っている訳はないだろうし、ジャスミーヌさんを後押ししている貴族が私に難癖をつけてくる可能性もある。私に難癖をつけて来た時点で、色んな意味で終わるだろうけど。

交流会では、2日ともに、カイルスさんとアルマンさんとマイラさんが護衛につき、キースも私の側に控える。役者勢揃い状態だ。

『愉しそうな交流会ね』

ふふっ──と笑ったのは、ローゼさんだった。
交流会に、他の守護竜が参加する事はないけど、何故か、他の3人の側衛が、こっそり潜り込む事になった。『何かあった時の助けになるから』と言われたから、素直に受け入れた。

交流会での服装は、私は守護竜の正装。近衛3人とキースは白と黒の騎士服を着ている。そして、参加者と言うと、私が白竜しろだから、白色以外の服での参加が基本となる。

交流会もまた、ダンスから始まる。ある程度ダンスをしてから、後は軽食を取りながら会話を楽しむ──と言う流れだ。




交流会1日目──


西の宮殿は、西の離宮よりも広大な土地に大きな宮殿が建っていた。交流会の会場もかなりの広さだった。ホールの両サイドには、色んな料理がズラリと並んでいる。なんでも、騎士爵の人達は料理をよく食べるそうで、騎士爵参加のパーティーでは多目に用意するんだそうだ。

1日目は、子爵以下の貴族だからか、華美ではなくシンプルなドレスを着ている人が多い。成人を迎えた子息令嬢も参加しているけど、特に問題も無く迎える事ができた。いくつかの男爵と子爵が、ここ数ヶ月の間に降爵や奪爵されていたけど、理由は──訊かないでおく。
参加者全員が揃ったところで、私が挨拶をした後、私とキースがダンスをして、1曲目が終わると参加者達がダンスを始めた。その間に、私はドリンクで喉の渇きを潤した。

「キース、足を踏んじゃってごめんね。大丈夫?」
「全く問題ありません。踏まれた事すら忘れてました」

へにょっ─と笑うキースは可愛かった。



参加者との挨拶や会話は、意外にも楽しかった。領地の事をより知る事ができたし、何より、リシャールに感謝する声も聞けたからだ。見ている人は、ちゃんと見てくれているのだと思うと嬉しい。だから、私からも『リシャールは本当に良い子』アピールをしておいた。これで更に偏見が無くなれば、芽依さんも安心するだろう。

こうして、私にとっての初めての交流会は何事も無く穏やかな雰囲気のまま終える事ができた。チラチラと、私と息子の仲を結ぼうとする親も居たけど、キースの笑顔には勝てず、そのまま下がって行った。下がらなかったとしても、まだ公表はしていないけど、私には既に婚約者が居るから、仲を結ぶ事は無い。

兎に角、1日目の交流会は無事に成功した。予定通りに。

「はぁー……2日目の明日も、予定通りに……なるんだろうなぁ………」

今からため息しか出ない。貴族社会とは何とも面倒くさい世界だ。ただ、放置する時間が長ければ長い程ややこしくもなるから、最初にキッチリとさせておいた方が良いのは確かだ。

「子竜だからと言って、甘く見られないようにしないとね。頑張ろう!」

と、グッと手に力を入れた。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

どうしてこうなった

恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。 人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。 レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。 ※タイトルとあらすじを一部変更しました。 ※なろうにも公開しています。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...