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28 マウントは、取らせません
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交流会2日目は、少しピリッと空気が張り詰めた状態で始まった。
一番早くやって来たのは、西領に居る三つの公爵家のうちの一つ、トルドラル公爵夫妻だった。彼等は私に好意的な家門だ。見た目の年齢で言えば、お母さんよりも少し年上で、雰囲気も話し方もとても落ち着いている。筆頭貴族と言うにも関わらず奢った感じも全く無い。公爵であれば、来訪時間も遅目で良いのだけど、今日は100年ぶりの西の守護竜との初対面だから、いち早く来て挨拶がしたかったと言われた。その上で、気を遣わせてしまって申し訳無いとも言われた。貴族の鑑のような人達だった。
それからは、伯爵家の人達が来訪し、ちらほら侯爵家の人達もやって来た。後二つの公爵家はまだ来る気配も無い。おそらく、最後に──時間ギリギリか過ぎる頃にやって来るんだろう。“自分達の方が上なんだ”と言うかのように。そうなっても、キースには我慢するように言ってある。取り敢えずは、交流会を始める為に。
「ジャスミーヌ=ハイエットです。お目にかかれて光栄です」
「ありがとう」
ジャスミーヌさんがやって来たのは、交流会が始まる5分前。
「これはこれは……本当に人の姿の時は黒色なんですね」
「…………」
そのジャスミーヌさんと一緒にやって来たのが、コルダー公爵。挨拶をされていないのは、気のせいじゃないよね?私が黒色だから何?髪と瞳は黒色だけど、竜化すれば白色だし、紛れもなく私は白竜だけど?
挨拶も無く、不躾な事を言われたのだから、私も笑顔で出迎える必要は無いよね?と、キースに視線を向けると、笑顔で頷いていた。ホールに居る他の側衛3人からも、ピリッとした空気が漂っている。
「どうして人の姿では黒色なのか、本当は─」
「それでは、これでようやく参加者が揃いましたので、今から交流会を開始いたします」
コルダー公爵が更に話し始めたのを遮るように、キースが交流会の開始を宣言した。
「なんと礼儀のなっていない側衛だ。これなら、本当に──」
ー礼儀がなってないのはどっちだ!?ー
年齢で言えば、コルダー公爵の方が上だろうけど、身分で言えば私とキースの方が上だ。無礼を働いたのもコルダー公爵が先だ。この場で追い出しても良いんだけどね?それでもそうしないのは、コルダー側の者達を把握する為だ。ある程度調べは済んでいるけど、実際どうかは分からない。私と直接対面する事で、私を受け入れる者も居るかもしれないと、ニーロンさんに言われたからでもある。
だから、今はキースにも我慢させて、会話をしながら探りを入れる予定だ。
ー頑張ろうー
気合を入れ直してから、キースとダンスをした。
話し掛ける順番はキッチリと決まっている訳ではないけど、基本は高位順からになる。
「子竜姿での飛行は、何とも初々しいものでしたわ。飛行には、もう慣れましたか?」
「全く問題無いわ」
「まだ子竜ですから、浄化をするのも大変なのではありませんか?」
「今の所、問題無いわ」
「子竜なら、伴侶を探すのもまだ先になりそうですね」
「それは巡り合わせの問題だし、子竜とは関係無いと思ってるわ」
チクチクとマウントを取ろうとしているのは、勿論ジャスミーヌ=ハイエット公爵だ。一番最初に話しをしたトルドラル公爵夫妻との会話は、穏やかでとても楽しいものだった。終始私に気を遣ってくれていた。『後に、若い者達が待ってますから』と言って、下がってしまい、その後に私に声を掛けて来たのが、ジャスミーヌさんだった。
本来なら、守護竜が声を掛けるのがルールだ。
ー本当に、私も舐められたものだよねー
「まだまだ竜王国には不慣れでしょうから、私がいつでもお力添えしますわ」
「側衛をはじめ、私には優秀な側仕えがいるから大丈夫よ。でも、その気持ちはありがとう」
「ハイエット公爵なら、十分にマシロ様のお力になれますよ」
はははっ!と、意気揚々と話に割り込んで来たのはコルダー公爵。守護竜が声を掛けてもいないのに割り込んで来た上、まさかのマシロ呼び。異世界生まれの異世界育ちの私より、礼儀作法を知らないらしい。あの温和な感じのトルドラル公爵夫妻が眉を顰めている。
「守護竜様を、名呼びするのは無礼です。控えて下さい」
「あぁ、それは申し訳無い。この守護竜様が孫のように可愛らしいから、思わず名呼びしてしまいました」
ー褒めているようで見下してるよね?ー
「まだ挨拶も交わしていなかったけど、私の名前は知っていたんですね。ありがとう」
「な───それは、失礼しました。私はグストン=コルダーです」
謝罪を口にしてはいるけど、苛ついている感情は隠すつもりはないようだ。ずっと私を睨みつけたままだ。
ー全く怖くもないけどー
この世界に来てから、私に対する色んな目を見て来た。私を本気で殺そうとする人の目と比べたら、コルダー公爵の目は可愛いもんだ───と思ったのは内緒だ。
一番早くやって来たのは、西領に居る三つの公爵家のうちの一つ、トルドラル公爵夫妻だった。彼等は私に好意的な家門だ。見た目の年齢で言えば、お母さんよりも少し年上で、雰囲気も話し方もとても落ち着いている。筆頭貴族と言うにも関わらず奢った感じも全く無い。公爵であれば、来訪時間も遅目で良いのだけど、今日は100年ぶりの西の守護竜との初対面だから、いち早く来て挨拶がしたかったと言われた。その上で、気を遣わせてしまって申し訳無いとも言われた。貴族の鑑のような人達だった。
それからは、伯爵家の人達が来訪し、ちらほら侯爵家の人達もやって来た。後二つの公爵家はまだ来る気配も無い。おそらく、最後に──時間ギリギリか過ぎる頃にやって来るんだろう。“自分達の方が上なんだ”と言うかのように。そうなっても、キースには我慢するように言ってある。取り敢えずは、交流会を始める為に。
「ジャスミーヌ=ハイエットです。お目にかかれて光栄です」
「ありがとう」
ジャスミーヌさんがやって来たのは、交流会が始まる5分前。
「これはこれは……本当に人の姿の時は黒色なんですね」
「…………」
そのジャスミーヌさんと一緒にやって来たのが、コルダー公爵。挨拶をされていないのは、気のせいじゃないよね?私が黒色だから何?髪と瞳は黒色だけど、竜化すれば白色だし、紛れもなく私は白竜だけど?
挨拶も無く、不躾な事を言われたのだから、私も笑顔で出迎える必要は無いよね?と、キースに視線を向けると、笑顔で頷いていた。ホールに居る他の側衛3人からも、ピリッとした空気が漂っている。
「どうして人の姿では黒色なのか、本当は─」
「それでは、これでようやく参加者が揃いましたので、今から交流会を開始いたします」
コルダー公爵が更に話し始めたのを遮るように、キースが交流会の開始を宣言した。
「なんと礼儀のなっていない側衛だ。これなら、本当に──」
ー礼儀がなってないのはどっちだ!?ー
年齢で言えば、コルダー公爵の方が上だろうけど、身分で言えば私とキースの方が上だ。無礼を働いたのもコルダー公爵が先だ。この場で追い出しても良いんだけどね?それでもそうしないのは、コルダー側の者達を把握する為だ。ある程度調べは済んでいるけど、実際どうかは分からない。私と直接対面する事で、私を受け入れる者も居るかもしれないと、ニーロンさんに言われたからでもある。
だから、今はキースにも我慢させて、会話をしながら探りを入れる予定だ。
ー頑張ろうー
気合を入れ直してから、キースとダンスをした。
話し掛ける順番はキッチリと決まっている訳ではないけど、基本は高位順からになる。
「子竜姿での飛行は、何とも初々しいものでしたわ。飛行には、もう慣れましたか?」
「全く問題無いわ」
「まだ子竜ですから、浄化をするのも大変なのではありませんか?」
「今の所、問題無いわ」
「子竜なら、伴侶を探すのもまだ先になりそうですね」
「それは巡り合わせの問題だし、子竜とは関係無いと思ってるわ」
チクチクとマウントを取ろうとしているのは、勿論ジャスミーヌ=ハイエット公爵だ。一番最初に話しをしたトルドラル公爵夫妻との会話は、穏やかでとても楽しいものだった。終始私に気を遣ってくれていた。『後に、若い者達が待ってますから』と言って、下がってしまい、その後に私に声を掛けて来たのが、ジャスミーヌさんだった。
本来なら、守護竜が声を掛けるのがルールだ。
ー本当に、私も舐められたものだよねー
「まだまだ竜王国には不慣れでしょうから、私がいつでもお力添えしますわ」
「側衛をはじめ、私には優秀な側仕えがいるから大丈夫よ。でも、その気持ちはありがとう」
「ハイエット公爵なら、十分にマシロ様のお力になれますよ」
はははっ!と、意気揚々と話に割り込んで来たのはコルダー公爵。守護竜が声を掛けてもいないのに割り込んで来た上、まさかのマシロ呼び。異世界生まれの異世界育ちの私より、礼儀作法を知らないらしい。あの温和な感じのトルドラル公爵夫妻が眉を顰めている。
「守護竜様を、名呼びするのは無礼です。控えて下さい」
「あぁ、それは申し訳無い。この守護竜様が孫のように可愛らしいから、思わず名呼びしてしまいました」
ー褒めているようで見下してるよね?ー
「まだ挨拶も交わしていなかったけど、私の名前は知っていたんですね。ありがとう」
「な───それは、失礼しました。私はグストン=コルダーです」
謝罪を口にしてはいるけど、苛ついている感情は隠すつもりはないようだ。ずっと私を睨みつけたままだ。
ー全く怖くもないけどー
この世界に来てから、私に対する色んな目を見て来た。私を本気で殺そうとする人の目と比べたら、コルダー公爵の目は可愛いもんだ───と思ったのは内緒だ。
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