異世界で守護竜になりました

みん

文字の大きさ
30 / 46

29 傲岸不遜

しおりを挟む
ーもう、これ以上この2人と話す必要は無いよね?ー

「2人とも、この交流会を楽しんで下さいね」

と言って、その場を離れようとすると

「あの、一つお願いをしてもよろしいでしょうか?」

と、ジャスミーヌさんに行く先を塞がれた。これはこれで、かなり失礼な行動だ。この人、本当に公爵なの?ここにローゼさんやリオナさんが居たら、色んなモノをへし折られてると思う。

「そのお願いを必ず叶えるとは言えないけど、聞くだけなら聞くわ」
「マシ──守護竜様の護衛騎士であるカイルス様とのダンスをお許しいただけませんか?できれば、その後の時間もいただきたいのですが……」

私から少し離れた位置に居るカイルスさん達には聞こえないぐらいの声だ。すぐ側に居るキースには聞こえたようで、より一層笑みを深めた。どうやら、キースは怒りを抑えれば抑える程笑顔になるようだ。

「その願いは聞き入れられないわ。カイルスさんは私の護衛騎士で、今は任務中だから」
「でも、護衛騎士はカイルス様だけではなく、他にも2人も居るのだから、1人ぐらい抜けても問題ありませんでしょう?」
「問題ある、無いの話じゃないの。カイルスさんは今、プライベートではなく、仕事でここに居るから、婚約者でも妻でも無いハイエット公爵に付き合わせる必要が無い──と言う事です」
「なら、カイルス様が私の元婚約者で、これからの話をしたいと言えば、私が言いたい事はお分かりでしょう?」

にっこり微笑んでいるけど、私に圧を掛けているのは明らかだ。“自分の方が守護竜に相応しい”とでも思っているのか?私を見下すのも大概にして欲しい。そもそも、守護竜だから驕っても良いと思っている時点で、守護竜になる可能性が無いと言う事に気付いていない。

「それ以外に話が無いようなら、これで失礼するわ。この場で話すような内容ではないし、話す必要も無いから」
「その様な言い方───」
「ハイエット公爵、無礼が過ぎます。これ以上無礼な態度を取るなら、然るべき対応をさせていただきます」
「………申し訳……ありません………」

一応の謝罪を耳にはしたけど、私はそれに答える事はせずにその場を離れた。

それ以降は特に問題は無く、西領に関する話も聞けて有意義な時間を過ごす事ができた。私の就任と共に魔物や魔獣が目に見えて減少しているそうで、領民も安心して過ごす事ができていると喜んでいた。

これで、分かった事は主に二つ。
子竜な私に不信感を抱いていたいくつかの貴族は居たけど、殆どの貴族が私を受け入れていると言う事。
私を排除しようとしているのは、ハイエット公爵とコルダー公爵だけと言う事。
その二つが公爵だと言う事は残念だけど、公爵なのかもしれない。プライドだけは高そうな2人だから。
ジャスミーヌさんは、まだカイルスさんを諦めてはないだろうし、コルダー公爵がこのまま引き下がるとは思えない。この問題もキッチリ片付けておかないと、お母さんやリシャール達にも火の粉がかかるかもしれない。そうならない為にも、直ぐに片を付けよう。




取り敢えずは、2日目の交流会も特に大きな問題も無く時間が過ぎ去り、後は参加者を見送るだけとなった。
領内の問題も把握できたから、それらに関してはリシャール達と相談しなければいけない。

「今日中に、リシャールにこれを届けてくれる?」
「それなら、俺が届けよう。丁度、離宮に戻る予定だったから」
「それじゃあ、宜しくお願いしますね」

と、私はカイルスさんにお願いすると、カイルスさんはその場で獣化して離宮へと飛び立った。
鷲もまた1mあるかないかで、羽を広げると2m以上になる。

「……だよね……………」

はぁー……と、1人、ため息を吐きながら、二つの影を見送った。





「今日はありがとうございました」
「ゆっくりお話ができて良かったです」

「気を付けて帰って下さいね」
「お疲れ様でした」

私はキースと一緒に挨拶を交わしながら、参加者達を見送っている。手土産として、焼き菓子を配るのが基本なんだそうで、1人1人に手渡して行く。

「100年ぶりの守護竜が子竜で心配しましたが、大丈夫なようですね」
「コルダー公爵………」

見送り最後の人物は、コルダー公爵だった。

「魔物や魔獣の出現が減って何より……ですが、より安心して暮らせるように、守護竜様には一刻も早く浄化の力を完璧にしていただきたいものですな」
「…………」

ーお前の心根を浄化しようか?ー

「助言、ありがとう。でも心ぱ──」

「きゃあー!」
「うわぁー!」
「何事!?」

コルダー公爵の相手をしていると、参加者が馬車に乗り込んでいる辺りから悲鳴が聞こえ、そこに視線を向けると二つの頭を持った魔獣が居た。

「どうして、こんな所にオルトロスが!?やはり、この守護竜では抑えきれないと言う事か!?」

大袈裟に反応したのはコルダー公爵。失礼な物言いに、いい加減にイラッとする。

「本当に、よくも、私の領域内で好き勝手してくれますね……でも、本当に、隙を見せれば予想通りの事をしてくれるから、こっちは大助かりよ!」
「は?何を───」


コルダー公爵が何かを言い返そうとするのを遮るように、私はオルトロスに攻撃を放った。




しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

どうしてこうなった

恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。 人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。 レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。 ※タイトルとあらすじを一部変更しました。 ※なろうにも公開しています。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...