異世界で守護竜になりました

みん

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34 浄化巡り

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浄化巡りは、先ず西領から始める。その後は南領、東領、北領と続き、最後が王都となる。

「王都が最初じゃないの?」と訊けば、王都は国内一の結界が張られていて、穢れが現れる事は滅多に無く、魔獣や魔物が出現する事も滅多に無いから、王都は最後で大丈夫なんだそうだ。

キースとリシャールとイネスとジュストに、各領地の綻びや穢れの報告書を纏めてもらった結界、100年空いていると言う割には、緊急を要するような酷い穢れがある所は無かった。ただ、一度魔物が送り込まれた西領の何ヶ所かは優先的に浄化をした方が良いだろうと判断した。そこは、王弟ダミアンが穢れと綻びを利用して穴を作って魔物達を送り込んで来た所だ。これが西領で良かったと思う。子竜な私だと、一番距離のある東領迄飛行するとなると、それなりの日数が必要になるけど、自分の領であれば直ぐに行けるから。

「それじゃあ、西領は準備ができ次第始めよう!」
「承知しました」




1ヶ月後──

優先的に浄化する場所は3ヶ所。そのうちの1ヶ所は西領の辺境地にある為、そこだけは西領の最後に浄化をする事になった。
1日に何ヶ所かの浄化を行いつつの移動で、夜は野宿でも有りだと言ったけど『守護竜様にそんな事はさせられません!』と言われてしまい、その領地の貴族の邸に宿泊する事になった。

「小さい頃は、お母さんとキャンプもしたのに…」
「キャンプと野宿は違いますし、おそらく、危険度具合も違いますから」

それもそうか。日本では、盗賊や魔獣は居なかったし、整備された所でのキャンプだった。平和だった。

「浄化が終わったら、俺がマシロをキャンプに連れて行ってあげるから」
「ありがとう、カイルスさん」

こうして、浄化巡りが始まった。




この浄化巡りは、私、キース、カイルスさん、アルマンさん、マイラさんの5人で行う。
子竜わたしキースカイルスさんの飛行スピードに、成竜アルマンさん成竜マイラさんが合わせてゆっくり飛行する。私が成竜なら、キースもカイルスさんも背に乗せて一気に飛行できるのに、私が子竜なばかりに、どうしても時間がかかってしまって申し訳無い限りだ。

『でも、マシロ様は子竜の割には、飛行スピードが速いんですよね』

と褒めてくれるのはキースだ。それが本当なのかどうかは分からないけど、取り敢えず必死に頑張って飛ぶだけだ。それでも、やっぱり疲れてくると、マイラさんが私を両手で掴んで飛んでくれたりする。カイルスさんとキースは、アルマンさんの背中に乗っている。

ー成竜はカッコイイよねー

本当に憧れる。アルマンさんの青色は、青空の色と同じで爽やかで、マイラさんの若草色は、青空に広がる葉の様に綺麗だ。バージルさんの黒色は圧巻的な黒で、ローゼさんの赤は温かい色だった。
50歳ぐらいで成竜になる。まだまだ先の話だ。





西領の浄化巡りは順調に進み、残すは最後の1ヶ所のみとなった。

「どの領でも、マシロ様の歓迎ぶりは凄かったですね」
「ありがたい事だね」

マイラさんが言う通り、どこに行っても歓迎してくれて、滞在先の邸でのおもてなしも凄かった。特に一番凄かったのは、鱗のお手入れ。いつも離宮でもお手入れをしてくれているけど、滞在先でのお手入れの仕方は、その土地それぞれに少し違っていて、どれもこれも気持ち良かった。お手入れの後は、女性陣から撫でられまくって、それがまた気持ち良くて、気が付けば寝落ちしていた。相変わらず、子竜になると眠気には勝てないようだ。

「ここが、西領最後の場所か……確かに、今迄の中では……穢れよりも綻びが大きいね」

穢れはそれ程酷くはないけど、魔物が通り抜けたと言うだけあって綻びが大きい。これまでの体感として、穢れの浄化よりも綻びの修正の方が竜力の消費が多い。この綻びの大きさから言うと、ここが最後で良かったのかもしれない。

「マイラさん、ここからの帰りは私を運んでもらう事になると思う」
「了解です。お任せください」
「ありがとう」

とマイラさんにお礼を言ってから、浄化を始める。

「──────?」

浄化は順調に進んでいるのに、何か違和感がある。

ー穢れの浄化と反比例して、綻びが大きくなってる!?違う、これはー

「綻びから何か来る!」
「「「「マシロ様!!」」」」

ズズズッ──と綻びから現れたのは

「ベヒモス!」

成竜よりも大きい巨体のカバのような魔獣。対抗する為にアルマンさんとマイラさんが竜化して、カイルスさんとキースが私を庇うように前に出る。

ーどうして魔獣が?ここに仕組まれていた?ー

考えるのは後だ。今は、この魔獣─ベヒモスを逃すことなく仕留める事に集中する。

アルマンさんとマイラさんが、ベヒモスに一気に飛び掛かる。ベヒモスもかなりの大きさがあるけど、2頭の竜の同時攻撃からは逃れる事はできないだろう。

「マシロ様!」
「キース!?」

ベヒモスは仕留めたか?と少し気が緩んだ時、綻びから新たに魔獣がもう一体現れた。

「ケルベロス!?」

ケルベロスの攻撃を、キースが辛うじて受け止めていた。



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