異世界で守護竜になりました

みん

文字の大きさ
40 / 46

39 2人の最期とリシャール

しおりを挟む
北領での浄化も予定通り進み、最終日には宴会が開かれて、翌日には最終地である王都に入った。ここでもまた、バージルさんが出迎えてくれた。

「さっきぶりだな」
「バージルさ……竜王陛下も大変ですね」

“竜王”と“守護竜”の掛け持ちは大変だろうと思う。

『竜王はいつでも引退できるから、もう駄目だと思ったら直ぐに引退する』と、笑いながら話していたバージルさん。とは言え、そう簡単には引退する事はないんだろうけど。

「王都は比較的穢れは少ないので、2日もあれば終わる予定です」
「宜しく頼む」

そうして、最終地の浄化巡りを始めた。

実際穢れを確認すると、他の領地よりも穢れも綻びも小さいものばかりだった。流石は王都の結界だ。5年毎に結界を補強しているそうで、王都に魔物や魔獣が侵入して来る事は滅多にないそうだ。

「これなら、明後日には西領に帰れるね」
「離宮に報せを飛ばしておきます」

3ヶ月ぶりの、西領帰還となる。



その日の夕食の時間の時だった。
ネグロさんがバージルさんに何かを報告すると、バージルさんは『そうか……』と呟いた後、手元にあったワインを一気に飲み干した。

「何かあったんですか?」
「北領からの報せだったんだが………幽閉していた者の事だ」
「幽閉………」

あぁ、そうか。バージルさんが言葉を濁すと言う事は、2の事だろう。

「聞きたいか?聞きたくなければ、言わないが…」

どっちでも良い──と言うのが正直なところだけど、やっぱり、知っておく方が良いんだろう。

「聞いておきます」
「分かった。ちなみに、今迄の事は、ユマとリシャールには報告はしていたんだ」

知らなかったのは、私だけと言う事だ。

「ベレニスは、1年前に亡くなっているんだ」
「!?」

それには驚いた。お母さんもリシャールも何も言ってなかったから。更に驚いたのは、イーデンさんとの番の繋がりは切れてしまっていたそうで、切れた事でベレニスさんは狂い竜となってしまい……処されたそうだ。それでも、既に繋がりが切れていたせいか、番のベレニスさんが亡くなっても、イーデンさんが狂い竜になる事はなかったそうで、幽閉先で静かに過ごしていたそうだけど、日に日に衰えが加速したように老けていき、数日前にベッドの上で亡くなっているのが確認されたそうだ。

「番としての繋がりは切れていても、竜心を交わした仲だから、相手を喪った事で老化のスピードが早くなったんだろう」

竜心を交わした相手や番を喪うと、狂い竜になる可能性が高くなるから、相手を喪うと残った者も後を追うようにして亡くなるんだそうだ。
番とは、一生ものの繋がりではなかったのか?切れる事なんてあるのか?色々疑問に思うところもあるけど、それを訊いたところで──と言うのが本音だ。

「リシャールは、大丈夫かな?」

両親が犯罪者となって平民落ちして、貴族から虐げられる事になったけど、それでもリシャールにとっては優しい両親であった筈だ。番で結ばれて幸せになる筈の家族が、私達と関わった事で全てを失ってしまった。

「リシャールなら大丈夫だろう。リシャールには、メイが居るし、ユマやお前も居るんだからな」
「そうだと良いんですけど………」

ー『お姉さん』呼びは諦めよう。せめて、嫌われたり恨まれたりしていなかったら良いなぁー


王都での浄化はアッサリと終わった。
ただ、終わってからが大変だった。私が成竜になった事もあり、王都中の人達がお祝いを兼ねてお祭りをしてくれたのだ。西領に帰るのを1日延ばして、夜のお祭りへ繰り出した。夜店が沢山出ていて、食べ歩きをしながら楽しんだ。お祭りの締めには花火が打ち上げられて、まるで、日本に居るかのような雰囲気に包まれた。

ー女将さんと、大将は元気にしてるかなぁ?ー

第二の親と言っても良い程、私に優しかった2人。私が居なくなった事で気に病んだりしてなければ良いけど。お礼も言えなかった。ただただ、それだけが心残りだ。

「どうか、2人が元気に幸せに過ごしていますように」

私はただ、花火を見ながら祈る事しかできなかった。




******


祭りの翌日の早朝、私達はバージルさんに見送られて、その日のお昼過ぎに3ヶ月ぶりに西領に帰還した。


「マシロ様、お疲れのところすみませんが、少し時間をいただいても良いですか?」

と、声を掛けて来たのはリシャール。

「勿論、大丈夫よ」
「ありがとうございます」





「マシロ様も知っていると聞いたので、話をしておこうかと思って……」

リシャールからの話は両親についての事だった。

「2人が亡くなったと聞いて、悲しみよりもホッとしたと言うのが本音です。勿論、愛されていたし、私も両親の事を愛してはいましたけど、何となく、2人を見ているのが辛い事もあって……被害を受けたマシロ様に言うのも申し訳ないんですが、これで2人は安らかに眠れるのかと思うと、良かったなと」

ーリシャールの目には、そう見えていたのかー

「それに、私には大切で愛しいメイが居るし、ユマ様やマシロ様も居ますから」

ーえ!?何!?急にデレが来た!?ー

真面目な顔のままデレるリシャールが可愛い。

「そっか!うん!メイが居るし、私達も居るね!」
「はい。マシロ様達には、本当に感謝しています。これからも、宜しくお願いします」
「こちらこそ!」

リシャールの意外?な一面を知る事ができて嬉しい限りだ。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

どうしてこうなった

恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。 人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。 レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。 ※タイトルとあらすじを一部変更しました。 ※なろうにも公開しています。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...