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39 2人の最期とリシャール
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北領での浄化も予定通り進み、最終日には宴会が開かれて、翌日には最終地である王都に入った。ここでもまた、バージルさんが出迎えてくれた。
「さっきぶりだな」
「バージルさ……竜王陛下も大変ですね」
“竜王”と“守護竜”の掛け持ちは大変だろうと思う。
『竜王はいつでも引退できるから、もう駄目だと思ったら直ぐに引退する』と、笑いながら話していたバージルさん。とは言え、そう簡単には引退する事はないんだろうけど。
「王都は比較的穢れは少ないので、2日もあれば終わる予定です」
「宜しく頼む」
そうして、最終地の浄化巡りを始めた。
実際穢れを確認すると、他の領地よりも穢れも綻びも小さいものばかりだった。流石は王都の結界だ。5年毎に結界を補強しているそうで、王都に魔物や魔獣が侵入して来る事は滅多にないそうだ。
「これなら、明後日には西領に帰れるね」
「離宮に報せを飛ばしておきます」
3ヶ月ぶりの、西領帰還となる。
その日の夕食の時間の時だった。
ネグロさんがバージルさんに何かを報告すると、バージルさんは『そうか……』と呟いた後、手元にあったワインを一気に飲み干した。
「何かあったんですか?」
「北領からの報せだったんだが………幽閉していた者の事だ」
「幽閉………」
あぁ、そうか。バージルさんが言葉を濁すと言う事は、あの2人の事だろう。
「聞きたいか?聞きたくなければ、言わないが…」
どっちでも良い──と言うのが正直なところだけど、やっぱり、知っておく方が良いんだろう。
「聞いておきます」
「分かった。ちなみに、今迄の事は、ユマとリシャールには報告はしていたんだ」
知らなかったのは、私だけと言う事だ。
「ベレニスは、1年前に亡くなっているんだ」
「!?」
それには驚いた。お母さんもリシャールも何も言ってなかったから。更に驚いたのは、イーデンさんとの番の繋がりは切れてしまっていたそうで、切れた事でベレニスさんは狂い竜となってしまい……処されたそうだ。それでも、既に繋がりが切れていたせいか、番のベレニスさんが亡くなっても、イーデンさんが狂い竜になる事はなかったそうで、幽閉先で静かに過ごしていたそうだけど、日に日に衰えが加速したように老けていき、数日前にベッドの上で亡くなっているのが確認されたそうだ。
「番としての繋がりは切れていても、竜心を交わした仲だから、相手を喪った事で老化のスピードが早くなったんだろう」
竜心を交わした相手や番を喪うと、狂い竜になる可能性が高くなるから、相手を喪うと残った者も後を追うようにして亡くなるんだそうだ。
番とは、一生ものの繋がりではなかったのか?切れる事なんてあるのか?色々疑問に思うところもあるけど、それを訊いたところで──と言うのが本音だ。
「リシャールは、大丈夫かな?」
両親が犯罪者となって平民落ちして、貴族から虐げられる事になったけど、それでもリシャールにとっては優しい両親であった筈だ。番で結ばれて幸せになる筈の家族が、私達と関わった事で全てを失ってしまった。
「リシャールなら大丈夫だろう。リシャールには、メイが居るし、ユマやお前も居るんだからな」
「そうだと良いんですけど………」
ー『お姉さん』呼びは諦めよう。せめて、嫌われたり恨まれたりしていなかったら良いなぁー
王都での浄化はアッサリと終わった。
ただ、終わってからが大変だった。私が成竜になった事もあり、王都中の人達がお祝いを兼ねてお祭りをしてくれたのだ。西領に帰るのを1日延ばして、夜のお祭りへ繰り出した。夜店が沢山出ていて、食べ歩きをしながら楽しんだ。お祭りの締めには花火が打ち上げられて、まるで、日本に居るかのような雰囲気に包まれた。
ー女将さんと、大将は元気にしてるかなぁ?ー
第二の親と言っても良い程、私に優しかった2人。私が居なくなった事で気に病んだりしてなければ良いけど。お礼も言えなかった。ただただ、それだけが心残りだ。
「どうか、2人が元気に幸せに過ごしていますように」
私はただ、花火を見ながら祈る事しかできなかった。
******
祭りの翌日の早朝、私達はバージルさんに見送られて、その日のお昼過ぎに3ヶ月ぶりに西領に帰還した。
「マシロ様、お疲れのところすみませんが、少し時間をいただいても良いですか?」
と、声を掛けて来たのはリシャール。
「勿論、大丈夫よ」
「ありがとうございます」
「マシロ様も知っていると聞いたので、話をしておこうかと思って……」
リシャールからの話は両親についての事だった。
「2人が亡くなったと聞いて、悲しみよりもホッとしたと言うのが本音です。勿論、愛されていたし、私も両親の事を愛してはいましたけど、何となく、2人を見ているのが辛い事もあって……被害を受けたマシロ様に言うのも申し訳ないんですが、これで2人は安らかに眠れるのかと思うと、良かったなと」
ーリシャールの目には、そう見えていたのかー
「それに、私には大切で愛しいメイが居るし、ユマ様やマシロ様も居ますから」
ーえ!?何!?急にデレが来た!?ー
真面目な顔のままデレるリシャールが可愛い。
「そっか!うん!メイが居るし、私達も居るね!」
「はい。マシロ様達には、本当に感謝しています。これからも、宜しくお願いします」
「こちらこそ!」
リシャールの意外?な一面を知る事ができて嬉しい限りだ。
「さっきぶりだな」
「バージルさ……竜王陛下も大変ですね」
“竜王”と“守護竜”の掛け持ちは大変だろうと思う。
『竜王はいつでも引退できるから、もう駄目だと思ったら直ぐに引退する』と、笑いながら話していたバージルさん。とは言え、そう簡単には引退する事はないんだろうけど。
「王都は比較的穢れは少ないので、2日もあれば終わる予定です」
「宜しく頼む」
そうして、最終地の浄化巡りを始めた。
実際穢れを確認すると、他の領地よりも穢れも綻びも小さいものばかりだった。流石は王都の結界だ。5年毎に結界を補強しているそうで、王都に魔物や魔獣が侵入して来る事は滅多にないそうだ。
「これなら、明後日には西領に帰れるね」
「離宮に報せを飛ばしておきます」
3ヶ月ぶりの、西領帰還となる。
その日の夕食の時間の時だった。
ネグロさんがバージルさんに何かを報告すると、バージルさんは『そうか……』と呟いた後、手元にあったワインを一気に飲み干した。
「何かあったんですか?」
「北領からの報せだったんだが………幽閉していた者の事だ」
「幽閉………」
あぁ、そうか。バージルさんが言葉を濁すと言う事は、あの2人の事だろう。
「聞きたいか?聞きたくなければ、言わないが…」
どっちでも良い──と言うのが正直なところだけど、やっぱり、知っておく方が良いんだろう。
「聞いておきます」
「分かった。ちなみに、今迄の事は、ユマとリシャールには報告はしていたんだ」
知らなかったのは、私だけと言う事だ。
「ベレニスは、1年前に亡くなっているんだ」
「!?」
それには驚いた。お母さんもリシャールも何も言ってなかったから。更に驚いたのは、イーデンさんとの番の繋がりは切れてしまっていたそうで、切れた事でベレニスさんは狂い竜となってしまい……処されたそうだ。それでも、既に繋がりが切れていたせいか、番のベレニスさんが亡くなっても、イーデンさんが狂い竜になる事はなかったそうで、幽閉先で静かに過ごしていたそうだけど、日に日に衰えが加速したように老けていき、数日前にベッドの上で亡くなっているのが確認されたそうだ。
「番としての繋がりは切れていても、竜心を交わした仲だから、相手を喪った事で老化のスピードが早くなったんだろう」
竜心を交わした相手や番を喪うと、狂い竜になる可能性が高くなるから、相手を喪うと残った者も後を追うようにして亡くなるんだそうだ。
番とは、一生ものの繋がりではなかったのか?切れる事なんてあるのか?色々疑問に思うところもあるけど、それを訊いたところで──と言うのが本音だ。
「リシャールは、大丈夫かな?」
両親が犯罪者となって平民落ちして、貴族から虐げられる事になったけど、それでもリシャールにとっては優しい両親であった筈だ。番で結ばれて幸せになる筈の家族が、私達と関わった事で全てを失ってしまった。
「リシャールなら大丈夫だろう。リシャールには、メイが居るし、ユマやお前も居るんだからな」
「そうだと良いんですけど………」
ー『お姉さん』呼びは諦めよう。せめて、嫌われたり恨まれたりしていなかったら良いなぁー
王都での浄化はアッサリと終わった。
ただ、終わってからが大変だった。私が成竜になった事もあり、王都中の人達がお祝いを兼ねてお祭りをしてくれたのだ。西領に帰るのを1日延ばして、夜のお祭りへ繰り出した。夜店が沢山出ていて、食べ歩きをしながら楽しんだ。お祭りの締めには花火が打ち上げられて、まるで、日本に居るかのような雰囲気に包まれた。
ー女将さんと、大将は元気にしてるかなぁ?ー
第二の親と言っても良い程、私に優しかった2人。私が居なくなった事で気に病んだりしてなければ良いけど。お礼も言えなかった。ただただ、それだけが心残りだ。
「どうか、2人が元気に幸せに過ごしていますように」
私はただ、花火を見ながら祈る事しかできなかった。
******
祭りの翌日の早朝、私達はバージルさんに見送られて、その日のお昼過ぎに3ヶ月ぶりに西領に帰還した。
「マシロ様、お疲れのところすみませんが、少し時間をいただいても良いですか?」
と、声を掛けて来たのはリシャール。
「勿論、大丈夫よ」
「ありがとうございます」
「マシロ様も知っていると聞いたので、話をしておこうかと思って……」
リシャールからの話は両親についての事だった。
「2人が亡くなったと聞いて、悲しみよりもホッとしたと言うのが本音です。勿論、愛されていたし、私も両親の事を愛してはいましたけど、何となく、2人を見ているのが辛い事もあって……被害を受けたマシロ様に言うのも申し訳ないんですが、これで2人は安らかに眠れるのかと思うと、良かったなと」
ーリシャールの目には、そう見えていたのかー
「それに、私には大切で愛しいメイが居るし、ユマ様やマシロ様も居ますから」
ーえ!?何!?急にデレが来た!?ー
真面目な顔のままデレるリシャールが可愛い。
「そっか!うん!メイが居るし、私達も居るね!」
「はい。マシロ様達には、本当に感謝しています。これからも、宜しくお願いします」
「こちらこそ!」
リシャールの意外?な一面を知る事ができて嬉しい限りだ。
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