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38 ダミアンの最期
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*プラータ視点*
綻びに仕掛けられていたのは、魔力や竜力を吸収する魔法陣と、魔獣を召喚する魔法陣だった。
「穢れを浄化する力を吸収して魔法陣を展開させて、綻びを大きくさせて魔獣を召喚するつもりだったんですね。叔父上」
魔法陣の描き方には個人によって特徴があり、その魔法陣には個人の魔力の跡が残る。それは僅かなものだから、ある程度の魔力持ちでなければ気付かない。
マシロが再び魔獣に襲われたと聞いて驚いた。それがまた、叔父のダミアン絡みだと判明した時は、怒りが込み上げた。2年前から、ゆるゆると叔父を放置していた自分にも腹が立った。
ダミアンが仕込んでいた魔法陣は、いつでも作動できるように、微かながらもダミアンと繋がっていた。だから、ダミアンが死ねば、その魔法陣も無効となって作動する事はなかった。
「一応は血の繋がった叔父だから、生かしておきましたけど、そんな情は一切必要ありませんでしたね」
「…………プラ……タ………」
生かしている──とは言え、“戒めの拘束”で魔力をギリギリ迄奪っているから、自由に動く事はできない体になっている。声を聞いたのも久し振りだ。
「そもそも、魔王国は竜王国と問題を起こしたいなんて微塵も思ってないんですよ。それに、父上も今の竜王とは懇意にしているから、本当にいい迷惑でしかないんですよ。それでも──と、父上は叔父上を生かすように言ってましたけど……」
それは良い意味ではなく、“直ぐに殺すのは優し過ぎるから”と言う意味だけど。
「私もお気に入りににまた手を出されて、黙っていられる性格じゃないんですよね」
シュルシュルと、再びダミアンの体に戒めの拘束を巻き付ける。その反対側に魔法陣を組み込む。
「叔父から吸収された魔力が、この魔法陣に流れるようになっています。そして、この魔法陣が発動するのに必要な魔力が溜まると、この魔法陣が発動されます」
発動するとどうなるか?
その魔法陣からワームが召喚される。ワームなんて、魔族の王族からすれば小虫以下の魔獣だ。子供だって簡単に消す事ができる。でも、魔力が殆どないダミアンでは、どうしても勝てないだろう。例え、ここに剣があったとしても、魔法に頼る事しかして来ず、剣術はからっきしだから結果は同じ。
父上に継いでの魔力持ちと言われた男の最期が、ワームにやられるなど…………
「本当に愉快でたまらないですね」
「…………っ」
魔法陣から逃れようとすればするほど、ダミアンの魔力は奪われて魔法陣に吸収される。勿論、戒めの拘束が体から外れる事はない。この蔦は、魔力を取って元気になるのだから。
ーこれが攻撃じゃないって、本当に思ってる魔法使いはおかしいよね?天然だけどー
「おそらく、叔父上とは今日で最後になると思うので、ご挨拶をさせてもらいますね。今迄、色々とありがとうございました。色々と、勉強させていただきました。これからの事は、父上と私にお任せ下さい。さようなら」
「っ!」
恭しく頭を下げて礼をする。ダミアンは私を睨みつけて何か言いたそうにしているが、もう声は出ないようだった。そんなダミアンに背を向けて、振り返る事なく地下牢を後にした。
******
「ダミアンの仕掛けたものだった。本当に、申し訳ありません」
「プラータのせいじゃないし、怪我人もでなかったし、お陰で成竜にもなれたから」
と、笑っているのはマシロ。側衛と近衛3人からは睨まれているけど、マシロの笑顔が可愛いから許す事にする。マシロは相変わらずお人好しだ。
「ダミアンには、それ相応の処罰を下しました。もう二度と迷惑はかけないと思います」
「他にも仕込まれてないか、調査は引き続きしているが、おそらく他には無いだろうと思う」
竜王国と魔王国の精鋭の者達で調査を続けているが、もう大丈夫だろうと報告があった。それなりの複雑な魔法陣の組み合わせだったから、いくつも仕掛けるのは無理だと言う事もある。
「分かりました。バージルさん、プラータ、ありがとうございます」
「あ、マシロ、遅くなったけど、成竜になれたんだよね?おめでとう」
「ありがとう」
20代で成竜になるとは、驚きはしたけど意外な事ではなかった。子竜の頃から異様な竜力を秘めていたから。きっと、うまく竜力が体内を流れきれず、体も対応し切れていなかったんだろう。今のマシロは、以前よりもスッキリした竜力に包まれている。
ー竜人にしても、鳥獣人にしても、生まれて来る子は普通ではないんだろうなー
とは、マシロの前では言わない方が良いだろう。
異種族結婚は子が出来難いけど、カイルスにも竜人の血が引き継がれているから、意外とあっさり子ができそうな気がしているのは、私だけではないだろう。
まあ、子ができてもできなくても、マシロが幸せであれば問題無い事だ。
綻びに仕掛けられていたのは、魔力や竜力を吸収する魔法陣と、魔獣を召喚する魔法陣だった。
「穢れを浄化する力を吸収して魔法陣を展開させて、綻びを大きくさせて魔獣を召喚するつもりだったんですね。叔父上」
魔法陣の描き方には個人によって特徴があり、その魔法陣には個人の魔力の跡が残る。それは僅かなものだから、ある程度の魔力持ちでなければ気付かない。
マシロが再び魔獣に襲われたと聞いて驚いた。それがまた、叔父のダミアン絡みだと判明した時は、怒りが込み上げた。2年前から、ゆるゆると叔父を放置していた自分にも腹が立った。
ダミアンが仕込んでいた魔法陣は、いつでも作動できるように、微かながらもダミアンと繋がっていた。だから、ダミアンが死ねば、その魔法陣も無効となって作動する事はなかった。
「一応は血の繋がった叔父だから、生かしておきましたけど、そんな情は一切必要ありませんでしたね」
「…………プラ……タ………」
生かしている──とは言え、“戒めの拘束”で魔力をギリギリ迄奪っているから、自由に動く事はできない体になっている。声を聞いたのも久し振りだ。
「そもそも、魔王国は竜王国と問題を起こしたいなんて微塵も思ってないんですよ。それに、父上も今の竜王とは懇意にしているから、本当にいい迷惑でしかないんですよ。それでも──と、父上は叔父上を生かすように言ってましたけど……」
それは良い意味ではなく、“直ぐに殺すのは優し過ぎるから”と言う意味だけど。
「私もお気に入りににまた手を出されて、黙っていられる性格じゃないんですよね」
シュルシュルと、再びダミアンの体に戒めの拘束を巻き付ける。その反対側に魔法陣を組み込む。
「叔父から吸収された魔力が、この魔法陣に流れるようになっています。そして、この魔法陣が発動するのに必要な魔力が溜まると、この魔法陣が発動されます」
発動するとどうなるか?
その魔法陣からワームが召喚される。ワームなんて、魔族の王族からすれば小虫以下の魔獣だ。子供だって簡単に消す事ができる。でも、魔力が殆どないダミアンでは、どうしても勝てないだろう。例え、ここに剣があったとしても、魔法に頼る事しかして来ず、剣術はからっきしだから結果は同じ。
父上に継いでの魔力持ちと言われた男の最期が、ワームにやられるなど…………
「本当に愉快でたまらないですね」
「…………っ」
魔法陣から逃れようとすればするほど、ダミアンの魔力は奪われて魔法陣に吸収される。勿論、戒めの拘束が体から外れる事はない。この蔦は、魔力を取って元気になるのだから。
ーこれが攻撃じゃないって、本当に思ってる魔法使いはおかしいよね?天然だけどー
「おそらく、叔父上とは今日で最後になると思うので、ご挨拶をさせてもらいますね。今迄、色々とありがとうございました。色々と、勉強させていただきました。これからの事は、父上と私にお任せ下さい。さようなら」
「っ!」
恭しく頭を下げて礼をする。ダミアンは私を睨みつけて何か言いたそうにしているが、もう声は出ないようだった。そんなダミアンに背を向けて、振り返る事なく地下牢を後にした。
******
「ダミアンの仕掛けたものだった。本当に、申し訳ありません」
「プラータのせいじゃないし、怪我人もでなかったし、お陰で成竜にもなれたから」
と、笑っているのはマシロ。側衛と近衛3人からは睨まれているけど、マシロの笑顔が可愛いから許す事にする。マシロは相変わらずお人好しだ。
「ダミアンには、それ相応の処罰を下しました。もう二度と迷惑はかけないと思います」
「他にも仕込まれてないか、調査は引き続きしているが、おそらく他には無いだろうと思う」
竜王国と魔王国の精鋭の者達で調査を続けているが、もう大丈夫だろうと報告があった。それなりの複雑な魔法陣の組み合わせだったから、いくつも仕掛けるのは無理だと言う事もある。
「分かりました。バージルさん、プラータ、ありがとうございます」
「あ、マシロ、遅くなったけど、成竜になれたんだよね?おめでとう」
「ありがとう」
20代で成竜になるとは、驚きはしたけど意外な事ではなかった。子竜の頃から異様な竜力を秘めていたから。きっと、うまく竜力が体内を流れきれず、体も対応し切れていなかったんだろう。今のマシロは、以前よりもスッキリした竜力に包まれている。
ー竜人にしても、鳥獣人にしても、生まれて来る子は普通ではないんだろうなー
とは、マシロの前では言わない方が良いだろう。
異種族結婚は子が出来難いけど、カイルスにも竜人の血が引き継がれているから、意外とあっさり子ができそうな気がしているのは、私だけではないだろう。
まあ、子ができてもできなくても、マシロが幸せであれば問題無い事だ。
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