43 / 46
42 蜜月
しおりを挟む
*茉白視点*
結婚の翌日の朝は、比較的ゆっくりと始まった。
昼からのお披露目会も、格式張ったものではなく、『これから夫婦でよろしくね!』みたいな感じの食事会のようなもので、私の服装も白色のワンピース。
招待客も、女性はワンピースタイプのシンプルなドレスで、男性もフォーマルスーツタイプの服で、招待客は竜王国の人限定だから、リオナさん達には手紙を送った。
交流会の時とは違って、私を見下すような人が居ないから、会場は穏やかな空気に包まれている。
「守護竜様、おめでとうございます」
「ありがとう」
「カイルス様も、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
招待客の人達と挨拶を交わしていく。
私の隣に立つのは、真っ白な騎士服を着たカイルスさん。
ーカッコ良過ぎる!ー
この人が私の旦那さん。結婚したと言っても、宣言して紙にサインをしただけだから、いまいち実感はなかったけど、こうして並んで立って祝ってもらえると、結婚したのか──と、じわじわと来る。そうしてカイルスさんを意識しだすと、ドキドキして落ち着かなくなり、普段通りの様子のカイルスさんが恨めしい。少しだけ心の中で愚痴ってから、また気持ちを切り替えて挨拶回りを続けた。
招待客との挨拶が終わると、私とカイルスさんがダンスをして、1曲目が終わると、他の人達もダンスや食事や会話を始めた。
「マシロ、何か食べる?」
「少しお腹が空いてるから、何か食べようかな」
「それじゃあ、俺が取って来るから、マシロは椅子に座って待ってて」
と言うと、カイルスさんは私を椅子に座らせた後、食事を取りに行ってくれた。
「はい」
「えっと……自分で食べれ─んぐっ!」
お皿に数種類のデザートを乗せて戻って来たカイルスさん。私の横に座ってからお皿を受け取ろうとすると、フォークに刺したデザートを、私の口元に差し出して来た。人前での『あーん』は流石に恥ずかしいから、拒否ろうかと口を開けば、問答無用で口に突っ込まれた。
「これは、旦那の特権だから、マシロにも譲れ無い。馴れてもらうしかない」
「特権………」
ー『あーん』に特権があるとは思わなかったー
周りを見てみると、微笑ましい目で見られていた。『あーん』は、竜人や獣人の夫婦にとっては普通の事なのかもしれない。なら、恥ずかしいけど、ここは素直に受け入れるしかない。
「えっと……ありがとう……」
「どういたしまして」
と、それからもニコニコしているカイルスさんからの『あーん』攻撃は、最後迄続いた。
*カイルス視点*
シンプルな白色のワンピースを着たマシロは、本当に可愛い。黒色の髪は、より一層綺麗に見える。
マシロとの初めてのダンスは、今迄して来たダンスの中で一番緊張した──と言うよりも、あまりに意識がマシロに集中し過ぎて、『このまま攫ってしまおうか?』と言う欲を抑えるのでやっとだった。
給餌行動
おそらく、マシロはその意味を理解していない。竜人や獣人にとっては大切なものだ。愛する人や番に対しての求愛行為だ。俺が差し出した物を食べるマシロは、俺の求愛を受け入れたと言う事だ。もう、既に結婚して夫婦になっているから問題は無いし、周りに居る者達も、ただただ微笑ましく見ているだけだった。
昼過ぎから始まったお披露目会も、3時間程でお開きになり、招待客の見送りが終わると、俺はアルマンの背に乗り離宮に向かい、マシロは少し遅れてからキースと一緒に離宮へと戻って来た。
それからも、俺とマシロは夜までは別行動となる。
「女性は色々と準備がありますから」
と、イネスがそう言いながらマシロを連れて行った。
その、色々な準備をしているらしい間、俺は、キースとからこれからの1ヶ月の予定の再確認をする。
1ヶ月の蜜月の間、離宮での使用人は最低限のみとする。
緊急時以外の来客の受け入れや執務は行わない事。
食事は1日3回必ず摂る事。
「そして、一番大事なのは、“無理をさせない事”です。宜しくお願いします」
と、キースが軽く俺に圧を掛けて頭を下げた後、部屋から出て行った。
そのキースが出て行ったドアとは反対側の奥にあるドアの前に立つ。そのドアを開けて入ると、そこは夫婦の寝室で──
「あ、カイルスさん………お疲れ様です」
「マシロ……」
ベッドの端に座っているマシロが居た。
ーやっと、マシロと2人になれたー
「ふわあっ──」
俺はマシロの隣に座ってから、マシロを俺の膝の上に抱き上げて、マシロの肩に顔を埋めて抱きしめた。
「やっとマシロを捕まえた」
「ん?」
ここ数日は、すぐ側に居たのに、手に触れる事すらできなかった。どうやら、それが、かなりのストレスになっていた──と言う事に気付いた。
「ふふっ…やっとって……もうずっと前から捕まってたのに?」
「この……無自覚………」
「え?」
無自覚に可愛いマシロには、そろそろ自覚してもらわないといけない。
「俺を煽るとどうなるか……分かってもらわないとな」
「あおる?なにを────」
更に何かを言いかけたマシロの口を塞いで、長い───長い蜜月が始まった。
結婚の翌日の朝は、比較的ゆっくりと始まった。
昼からのお披露目会も、格式張ったものではなく、『これから夫婦でよろしくね!』みたいな感じの食事会のようなもので、私の服装も白色のワンピース。
招待客も、女性はワンピースタイプのシンプルなドレスで、男性もフォーマルスーツタイプの服で、招待客は竜王国の人限定だから、リオナさん達には手紙を送った。
交流会の時とは違って、私を見下すような人が居ないから、会場は穏やかな空気に包まれている。
「守護竜様、おめでとうございます」
「ありがとう」
「カイルス様も、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
招待客の人達と挨拶を交わしていく。
私の隣に立つのは、真っ白な騎士服を着たカイルスさん。
ーカッコ良過ぎる!ー
この人が私の旦那さん。結婚したと言っても、宣言して紙にサインをしただけだから、いまいち実感はなかったけど、こうして並んで立って祝ってもらえると、結婚したのか──と、じわじわと来る。そうしてカイルスさんを意識しだすと、ドキドキして落ち着かなくなり、普段通りの様子のカイルスさんが恨めしい。少しだけ心の中で愚痴ってから、また気持ちを切り替えて挨拶回りを続けた。
招待客との挨拶が終わると、私とカイルスさんがダンスをして、1曲目が終わると、他の人達もダンスや食事や会話を始めた。
「マシロ、何か食べる?」
「少しお腹が空いてるから、何か食べようかな」
「それじゃあ、俺が取って来るから、マシロは椅子に座って待ってて」
と言うと、カイルスさんは私を椅子に座らせた後、食事を取りに行ってくれた。
「はい」
「えっと……自分で食べれ─んぐっ!」
お皿に数種類のデザートを乗せて戻って来たカイルスさん。私の横に座ってからお皿を受け取ろうとすると、フォークに刺したデザートを、私の口元に差し出して来た。人前での『あーん』は流石に恥ずかしいから、拒否ろうかと口を開けば、問答無用で口に突っ込まれた。
「これは、旦那の特権だから、マシロにも譲れ無い。馴れてもらうしかない」
「特権………」
ー『あーん』に特権があるとは思わなかったー
周りを見てみると、微笑ましい目で見られていた。『あーん』は、竜人や獣人の夫婦にとっては普通の事なのかもしれない。なら、恥ずかしいけど、ここは素直に受け入れるしかない。
「えっと……ありがとう……」
「どういたしまして」
と、それからもニコニコしているカイルスさんからの『あーん』攻撃は、最後迄続いた。
*カイルス視点*
シンプルな白色のワンピースを着たマシロは、本当に可愛い。黒色の髪は、より一層綺麗に見える。
マシロとの初めてのダンスは、今迄して来たダンスの中で一番緊張した──と言うよりも、あまりに意識がマシロに集中し過ぎて、『このまま攫ってしまおうか?』と言う欲を抑えるのでやっとだった。
給餌行動
おそらく、マシロはその意味を理解していない。竜人や獣人にとっては大切なものだ。愛する人や番に対しての求愛行為だ。俺が差し出した物を食べるマシロは、俺の求愛を受け入れたと言う事だ。もう、既に結婚して夫婦になっているから問題は無いし、周りに居る者達も、ただただ微笑ましく見ているだけだった。
昼過ぎから始まったお披露目会も、3時間程でお開きになり、招待客の見送りが終わると、俺はアルマンの背に乗り離宮に向かい、マシロは少し遅れてからキースと一緒に離宮へと戻って来た。
それからも、俺とマシロは夜までは別行動となる。
「女性は色々と準備がありますから」
と、イネスがそう言いながらマシロを連れて行った。
その、色々な準備をしているらしい間、俺は、キースとからこれからの1ヶ月の予定の再確認をする。
1ヶ月の蜜月の間、離宮での使用人は最低限のみとする。
緊急時以外の来客の受け入れや執務は行わない事。
食事は1日3回必ず摂る事。
「そして、一番大事なのは、“無理をさせない事”です。宜しくお願いします」
と、キースが軽く俺に圧を掛けて頭を下げた後、部屋から出て行った。
そのキースが出て行ったドアとは反対側の奥にあるドアの前に立つ。そのドアを開けて入ると、そこは夫婦の寝室で──
「あ、カイルスさん………お疲れ様です」
「マシロ……」
ベッドの端に座っているマシロが居た。
ーやっと、マシロと2人になれたー
「ふわあっ──」
俺はマシロの隣に座ってから、マシロを俺の膝の上に抱き上げて、マシロの肩に顔を埋めて抱きしめた。
「やっとマシロを捕まえた」
「ん?」
ここ数日は、すぐ側に居たのに、手に触れる事すらできなかった。どうやら、それが、かなりのストレスになっていた──と言う事に気付いた。
「ふふっ…やっとって……もうずっと前から捕まってたのに?」
「この……無自覚………」
「え?」
無自覚に可愛いマシロには、そろそろ自覚してもらわないといけない。
「俺を煽るとどうなるか……分かってもらわないとな」
「あおる?なにを────」
更に何かを言いかけたマシロの口を塞いで、長い───長い蜜月が始まった。
231
あなたにおすすめの小説
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…
藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。
契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。
そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全9話で完結になります。
どうしてこうなった
棗
恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。
人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。
レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。
※タイトルとあらすじを一部変更しました。
※なろうにも公開しています。
悪役だから仕方がないなんて言わせない!
音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト
オレスト国の第一王女として生まれた。
王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国
政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。
見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。
えっ私人間だったんです?
ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。
魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。
頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。
月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。
まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが……
「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」
と、王太子が宣いました。
「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」
「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」
「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」
設定はふわっと。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる