28 / 62
再会①
しおりを挟むゆらゆらと動く体に、何となく─懐かしい?温もりがそこにあるのに、まぶたが重くて上げる事ができない。その代わりに、その温もりにスリッと頬を寄せてみると、今度は安心感が広がった。
ー私は、この温もりを…知っている?ー
安心するのに、キュッとした痛み?もあって…私はその温もりに手を伸ばしてギュッと握りしめた。
目が覚めると、自分の部屋のベッドの上だった。
「夢──だった?ん?」
フワリと香る、シトラス系の爽やかな香りに、また、胸がキュッと痛みを訴える。それから─
「かすみ草?」
ふと視界に入ったのは、水色のかすみ草だった。
昨日、私が寝る時にはなかった。それが、ベッドサイドのテーブルに飾られている。私の瞳の色によく似た色のかすみ草。
誰が飾ってくれたかは分からないけど嬉しくて、胸の痛みが薄らいで、自然と笑みが溢れた。
『ミヤさんが……王太子様と……!?』
これまた、驚きの事実を聞かされました。
ーいや、本当に驚きです!ー
『婚約が成立したのは最近なんだけどね。』
ふふっ─と、ミヤさんは嬉しそうに笑う。
ーあれ?確か…日本に彼氏さんが…居たよね?ー
むうっ─と考えていると、ミヤさんが更に微笑んだ。
ーあ、コレは…訊いてはいけないヤツかな?ー
『えっと…そ…それで、その王太子様が…何故パルヴァンに来るんですか?あ、婚約者のミヤさんに会いに来るんですか?』
『今回も非公式なんだけど、念の為に森を浄化する事になったから、それに同行する為に来る事になったのよ。そのついでに、ハルにも会ってもらおうかと思ってね。勿論、ハルが無理だと言うなら、無理強いはしないから。』
ーでも、相手は王太子様だよね?拒否権って…無いのでは?ー
『身分的な事を気にする必要は無いわよ?一応、王太子より…聖女である私の方が身分は上だから(おそらく、ランバルト様よりも私よりも、ハルの方が…ある意味強い立場に居るんだけどね─なんて、口に出して言わないけど)。』
と、ミヤさんは綺麗な笑顔をする。
背中がゾクゾクするのは…気のせいにしておきます。
『怖くない─とは言えないけど…大丈夫だと…思います。召喚された時と、謁見した時の印象しか無いんですけど…何となくですけど、以前程心が拒否反応?しないので…。記憶は無くても、身体?感覚?が“大丈夫”だった頃の事を覚えているかもしれませんね。』
嘘じゃない。以前なら、男の人だと思っただけでも体が緊張して固まり震え出していたのに、今では震える事がない。
『なら、一応、会う─と言う事で予定しておくけど、どうしても無理だと思ったら言ってちょうだいね?あ、そうだ、その時、ネージュかネロに、側に居てもらおうか?』
『あ、それ、とっても心強いですね!私からネージュにお願いしてみます!』
ーうん!ネージュとネロが居れば大丈夫な気がする!ー
“会う”と決めて、ミヤさんが王太子様に手紙を飛ばすと、ミヤさんによる浄化を1週間後に行う事が決まり、その2日前に王太子様がお忍びでパルヴァン辺境地へとやって来る事が決まった。
*浄化2日前*
「ランバルト様、いらっしゃいませ。」
「あぁ、ミヤ様…久し振りだな。元気そうで良かった。」
転移魔法陣を使ってやって来た王太子様は、私が記憶していた顔立ちよりも、更に大人の色気を含んだイケメンさんになっていた。
ー王太子様とミヤさんが並ぶと…物語に出て来そうな王子様とお姫様みたいだよねー
そんな2人を少し離れた場所から眺めていると
「あー…ハル殿も久し振り─と言いたいところだが…私の事は……」
王太子様はこの世界の言葉で話し掛けて来た。それでも、今日は私が作ったらしい翻訳機能付きのピアスを着けているから、何を喋っているのか、しっかり聞き取れた。
「えっと…すみません…。」
「違う、謝らなくて良い。その…ハル殿も元気になって良かった。遅くなってしまったが、パルヴァンの森を守ってくれてありがとう。」
「それも、記憶…ない…ですけどね。」
と、言うと王太子様も困った様な顔で笑った。
そんな王太子様とミヤさんの少し後ろには、もう一人男の人が立っていた。
ーあの人も…召喚された時と謁見した時に居た人だよね?ー
銀髪で長い髪を襟足で一つに束ねている。目は切れ長で、少し冷たい印象だった彼も、更にクール系の美男子になっていた。
そんな彼を何となく見ていると、ふいに視線が合った。
視線が合った瞬間、彼は驚いたように軽く目を見開いた。
ビクッ─と、自分の体が震えた事が分かり、手をギュッと握りしめていると、彼がフワリと優しく微笑んだ。
ーっ!?ー
「ハル!?どうしたの!?」
「え?」
何故か、ミヤさんが少し慌てながら私の方へとやって来る。
「どうしたの?何で…泣いてるの?」
「え?泣いて??」
ミヤさんに言われて、ようやく気が付いた。
本当に、何故だが分からない。分からないのに、私は涙を流していた。
87
あなたにおすすめの小説
わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。
バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。
そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。
ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。
言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。
この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。
3/4 タイトルを変更しました。
旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」
3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です
※小説家になろう様にも掲載しています。
男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~
百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。
放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!?
大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。
氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!
屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。
どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。
そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。
そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。
望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。
心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが!
※あらすじは時々書き直します!
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。
愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。
ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。
ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。
二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。
時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し……
全ては、愛する人と幸せになるために。
他サイトと重複投稿しています。
全面改稿して投稿中です。
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる