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第1章ー前世ー
第二王子と聖女と彼と
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「正直、私は、彼が隣国に行くと聞いてホッとしたよ。」
ふぅーと、父が軽く息を吐く。
彼は廃嫡され、もう、結婚も無理だろう。将来、良くて領地に引き籠もり。悪くて幽閉だったのが、まさかの隣国ではあるが、公爵家への婿入り。三度の結婚離婚歴があろうが、これ以上の相手は見付からない─と言う事で、侯爵夫妻は喜んで婚約を結んだが、彼本人は納得はしていなかった。それに──未だに私を探しているそうだ。
「だから、彼がこの国から居なくなると聞いて……もう二度とお前の目の前に現れる事が無いと思って、安心した。」
「………」
ー彼は何故、そこまで私に執着しているの?彼は…私より、子爵令嬢を取ったくせにー
「何故…私を?彼は……あの子爵令嬢とは……どんな関係だったの?」
結局、彼女は第二王子と関係を持っていた。でも、あの時の彼も、彼女に好意を持っていたから─の、あの行動だったのでは?私に簡単に手を上げたぐらいだから、それ程までに彼女が好きだったのかと思っていた。
それなのに、何故、私を未だに探しているか─
私を見付けて、どうしたいのか─
「まさか……まだ、私を……痛めつけたいの?」
少しずつ消化されていっていた、あの時の、あの恐怖が蘇る。
「いや、それは無いと思う。ただ単に……お前に“会いたい”、“やり直したい”と言う……執着だと思う。それと、彼と聖女の関係だが……これは、私と公爵殿しか知らない事なんだが………彼だけではないが…あの聖女は…学生時代に、第二王子以外の令息とも関係を持っていたようだ。」
「………何て……事を…………」
私は、まんまと…騙されていた─と言う事だ。
あの、儚げな容姿に。
あの時の、彼女の私に縋るような行動は……彼を煽る為だった?そして、彼は、彼女の思い通りに私に手を上げた?あぁ、叩く迄いくとは思わず、驚いて顔色が悪くなった─と言う事か……。
「卒業後は、聖女も第二王子以外の令息達とは一切の縁を切ったようだが、今お腹に居る子が第二王子との子なのかどうか…。それでも、過去に色んな令息と関係を持っていた─と言う事は…伏せておく事にした。曲がりなりにも…聖女だ。どうせ、報告したところで、“聖女だから”と、王家と神官は揉み消すだろうからな。」
既に第一王子が立太子しているから、第二王子が国王になる事は無い。それに、王家としては、光属性を持つ聖女とは繋がりを持ちたい筈。喩え、その聖女に問題があったとしても、相手が第二王子なら……最悪の場合、切り捨てる事もできる。大きな障害だった王太后が居なくなり、聖女の本性を知らなければ、誰もが歓迎する婚姻となる。
「まぁ……ある意味での……私達からの些細な復讐…だな。どんな子が生まれるか……楽しみだ。」
ふんっ─と、父は小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
第二王子は勿論の事、彼を含め他の令息達も、お互いが彼女と関係を持った事がある─と言う事は知らないそうだ。
それだけ、彼女は上手く立ち回っていた─と言う事なんだろう。
ー私は…そんな彼女のせいでー
さぞ滑稽だっただろう。彼女の思い通りに動いていた私は。私は、そんな彼女の心配すらしていたのだ。
だけど──
ある意味、感謝もしている。怖い思いもしたけど、あの婚約者と結婚せずに済んだ事。そして、何より……貴族の柵がない自由を得られた事。侯爵令嬢だった時も、両親から愛され何不自由なく暮らせていて幸せだった。でも、今、平民となって色々と大変だけど……自分の意思で動いて生きている事が楽しいのだ。
彼女には……分からないだろうし、私が平民─修道女になった事を嘲笑っているかもしれないけど……
「兎に角、これで、もう王家や彼がお前に関わって来る事はないだろう。あぁ、そうだ。ジョアンヌ様がな、隣国に嫁ぐ前に、アドリーヌに会いたいと言っていたから、一度…手紙でも送ってあげなさい。」
「はい。丁度、手紙を書こうかと思っていたので、すぐに書いてみます。」
「ならば、私がその手紙を預かろう」と父に提案された為、私はその場で直ぐに手紙を書いて父に預ける事にした。
そして、「また来るから」と父と母は私の手紙を受け取ると、また王都へと帰って行った。
その日の夜は、何となく1人になりたくて、同室のアーニーさんが寝たのを確認してから、私は1人こっそりと部屋を抜け出して、修道院の裏側にある庭へとやって来た。
「きれい……」
今日は満月。いつもよりも明るい夜だ。
侯爵令嬢だった頃は、毎日時間に追われていて、夜空なんて見上げる事もなかった。
「アドリーヌ………」
「───え?」
ゾクッ─と、何かが背中を這い上がるような不快な声。もう二度と耳にする事は無い─と思っていた声。
「やっと…見付けた…やっと…会えた…」
「──ひぃ───っ!」
そして、私はその声の主に……抱きしめられた。
ふぅーと、父が軽く息を吐く。
彼は廃嫡され、もう、結婚も無理だろう。将来、良くて領地に引き籠もり。悪くて幽閉だったのが、まさかの隣国ではあるが、公爵家への婿入り。三度の結婚離婚歴があろうが、これ以上の相手は見付からない─と言う事で、侯爵夫妻は喜んで婚約を結んだが、彼本人は納得はしていなかった。それに──未だに私を探しているそうだ。
「だから、彼がこの国から居なくなると聞いて……もう二度とお前の目の前に現れる事が無いと思って、安心した。」
「………」
ー彼は何故、そこまで私に執着しているの?彼は…私より、子爵令嬢を取ったくせにー
「何故…私を?彼は……あの子爵令嬢とは……どんな関係だったの?」
結局、彼女は第二王子と関係を持っていた。でも、あの時の彼も、彼女に好意を持っていたから─の、あの行動だったのでは?私に簡単に手を上げたぐらいだから、それ程までに彼女が好きだったのかと思っていた。
それなのに、何故、私を未だに探しているか─
私を見付けて、どうしたいのか─
「まさか……まだ、私を……痛めつけたいの?」
少しずつ消化されていっていた、あの時の、あの恐怖が蘇る。
「いや、それは無いと思う。ただ単に……お前に“会いたい”、“やり直したい”と言う……執着だと思う。それと、彼と聖女の関係だが……これは、私と公爵殿しか知らない事なんだが………彼だけではないが…あの聖女は…学生時代に、第二王子以外の令息とも関係を持っていたようだ。」
「………何て……事を…………」
私は、まんまと…騙されていた─と言う事だ。
あの、儚げな容姿に。
あの時の、彼女の私に縋るような行動は……彼を煽る為だった?そして、彼は、彼女の思い通りに私に手を上げた?あぁ、叩く迄いくとは思わず、驚いて顔色が悪くなった─と言う事か……。
「卒業後は、聖女も第二王子以外の令息達とは一切の縁を切ったようだが、今お腹に居る子が第二王子との子なのかどうか…。それでも、過去に色んな令息と関係を持っていた─と言う事は…伏せておく事にした。曲がりなりにも…聖女だ。どうせ、報告したところで、“聖女だから”と、王家と神官は揉み消すだろうからな。」
既に第一王子が立太子しているから、第二王子が国王になる事は無い。それに、王家としては、光属性を持つ聖女とは繋がりを持ちたい筈。喩え、その聖女に問題があったとしても、相手が第二王子なら……最悪の場合、切り捨てる事もできる。大きな障害だった王太后が居なくなり、聖女の本性を知らなければ、誰もが歓迎する婚姻となる。
「まぁ……ある意味での……私達からの些細な復讐…だな。どんな子が生まれるか……楽しみだ。」
ふんっ─と、父は小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
第二王子は勿論の事、彼を含め他の令息達も、お互いが彼女と関係を持った事がある─と言う事は知らないそうだ。
それだけ、彼女は上手く立ち回っていた─と言う事なんだろう。
ー私は…そんな彼女のせいでー
さぞ滑稽だっただろう。彼女の思い通りに動いていた私は。私は、そんな彼女の心配すらしていたのだ。
だけど──
ある意味、感謝もしている。怖い思いもしたけど、あの婚約者と結婚せずに済んだ事。そして、何より……貴族の柵がない自由を得られた事。侯爵令嬢だった時も、両親から愛され何不自由なく暮らせていて幸せだった。でも、今、平民となって色々と大変だけど……自分の意思で動いて生きている事が楽しいのだ。
彼女には……分からないだろうし、私が平民─修道女になった事を嘲笑っているかもしれないけど……
「兎に角、これで、もう王家や彼がお前に関わって来る事はないだろう。あぁ、そうだ。ジョアンヌ様がな、隣国に嫁ぐ前に、アドリーヌに会いたいと言っていたから、一度…手紙でも送ってあげなさい。」
「はい。丁度、手紙を書こうかと思っていたので、すぐに書いてみます。」
「ならば、私がその手紙を預かろう」と父に提案された為、私はその場で直ぐに手紙を書いて父に預ける事にした。
そして、「また来るから」と父と母は私の手紙を受け取ると、また王都へと帰って行った。
その日の夜は、何となく1人になりたくて、同室のアーニーさんが寝たのを確認してから、私は1人こっそりと部屋を抜け出して、修道院の裏側にある庭へとやって来た。
「きれい……」
今日は満月。いつもよりも明るい夜だ。
侯爵令嬢だった頃は、毎日時間に追われていて、夜空なんて見上げる事もなかった。
「アドリーヌ………」
「───え?」
ゾクッ─と、何かが背中を這い上がるような不快な声。もう二度と耳にする事は無い─と思っていた声。
「やっと…見付けた…やっと…会えた…」
「──ひぃ───っ!」
そして、私はその声の主に……抱きしめられた。
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