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2 出会い
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職場である大学には、19歳で大学生として入学してから、卒業と同時に事務員として働き出して2年で6年通い続けている。色々と大変な事も多いけど、職員の人達が良い人ばかりで仕事でもプライベートでもよく助けてもらっている。
特に、上司の事務局長である小南さんには、娘さんと同年代と言う事もあり、夫婦揃って良くしてくれている。
ある1人を除いては
「相変わらず暗いよね」
「…………」
「暗い子が作るお弁当は、茶色になるんだね?」
「…………」
こうやって、私に色々と嫌味を言ってくるのは─清水渚沙。学生の時の同じ学部に居た同級生で、今は大学院に進んでいる。私とは真反対の位置に居る彼女とは、学生時代では同じ学部であっても関わる事など殆どなかった。
ぱっちり目の“美人”と言うよりは“可愛い”女性で、私の知っている学生生活4年の間だけでも、彼氏が何人か変わっていた。彼氏がいない時もきる時でも、数人の男女でつるんでいたのをよく目にしていた。見目の良い集りだったから、よく人目を引いていた。
そんな清水さんが、何故私にこんな悪態をつくのか……
『清水さんが狙ってた男の子が、吉岡さんに気があったらしいよ。』
と、清水さんの知り合いが教えてくれたけど…私には一切身に覚えのない事だった。誰かに告白された事はないし、学生時代に授業で班で行動する時以外で男の子と言葉を交わした事も殆どなかったのに。完全なるとばっちりだ。
ー嫌味ぐらいなら、どうって事は無いけどー
「清水さん、こんにちは。今日はオープンキャンパスで、どこも忙しいようですけど…清水さんの研究室は……暇なんですか?態々、それだけを言いに事務室迄来たんですか?」
今現在お昼休みで、事務員の殆どが食堂や購買部に行っていて出払っている中、私は事務室の自分の机でお弁当を食べている。こうした、周りに人目が無い時にやって来るのが……清水渚沙である。
「暇な訳ないじゃない。教授に頼まれた書類を提出しに来ただけよ。何で私が、態々吉岡さんに会う為だけに事務室に来なきゃいけないのよ。自意識過剰ちゃんなの?」
ー本当に、相変わらず一言も二言も多い人だよねー
「はい。しっかり仕事、して下さいね。ただの事務員さん。」
と、手に持っていた書類の束を軽く投げるようにカウンターに置いた後、清水さんは事務室から出て行った。
“ただの事務員さん”─で、何が悪いと言うのか。自分が院生だから偉いと言いたいのか……。
「そろそろ、私の事忘れてくれないかなぁ?」
「また、あの子に何か言われたの?」
「─っ!?あ…小南さん!」
「さっき、そこの廊下であの子とすれ違って…。あの子も、本当にある意味、翠ちゃんの事好きよね。」
「やめて下さいよ……。あ、事務局長なら、今食堂に行ってますよ。このまま、ここで待ちますか?」
「2時に約束してたのよ。待たせてもらって良い?それで──」
今目の前にいるのは、私を可愛がってくれている小南事務局長の奥さん。50歳を超えているが、とても可愛らしい人だ。その奥さんが振り返ると、そこには──
「この子ね、私の知り合いの子で、暫くの間ウチで預かる事になったの。」
「春野…セオ…です。」
「どうも。吉岡翠です。えっと……ハーフ…とかですか?」
身長180cm以上ありそうな長身で、銀髪?で青色の瞳なのに、まさかの“春野”。しかも、流暢な日本語で違和感が半端無い。
「翠ちゃんが気になるのはそこなのね?」
ふふっ─と笑う小南さん。
「え?普通に気になりませんか?“スミス”とか“ウィリアムズ”だったらしっくりくるんですけど…」
「そんな翠ちゃんだから大好き!」
と、何故か小南さんにハグをされた。いつもの事だけど、「可愛い!」と言ってはハグをされ、事務局長が笑っていたりする。
それから直ぐに事務局長も戻って来て、私を含めた4人で話をする事になり、事務局長の個室へと移動した。
春野セオ、25歳。私と同い年とは思えない程落ち着きと威厳?のようなものを持っている男性。前述の通り、奥さんの知り合いの子で、ちょっと色々あって、暫くの間預かると言う事になったのが3日前。そして、今日、この大学にやって来たのは、オープンキャンパスだったから。何でも、春野君の母親がこの大学のOGらしく、見学しに来たらしい。因みに、小南さん夫婦もこの大学の卒業生だ。
「もうね、ここに来る迄大変だったのよ。道を歩いていても電車に乗ってても、私が居るのに逆ナンされるし、スカウトらしき人に引き止められるし…恐るべしDNAよね……」
心なしか、疲れているように見えたのは、そのせいか…。“恐るべしDNAよね”と言う事は、両親が美男美女なんだろう。
「それなのに、この顔に全く反応しない翠ちゃんが、あまりにも翠ちゃんらしくて、ここ迄来るのに疲れた気持ちが吹っ飛んだわ。」
「……あぁ、なるほど……」
さっき笑っていたのは、そう言う意味か。
確かに、春野君はどこをどう見てもイケメンだ。きっと、半目で寝ていたとしてもイケメンかもしれない。
でも───
「顔だけでは、他人を判断する事はできませんからね。」
イケメンだからと言って、皆が皆、良い人とは限らない──と言う事を、私は身をもって知っているから。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(*´꒳`*)۶°˖✧
特に、上司の事務局長である小南さんには、娘さんと同年代と言う事もあり、夫婦揃って良くしてくれている。
ある1人を除いては
「相変わらず暗いよね」
「…………」
「暗い子が作るお弁当は、茶色になるんだね?」
「…………」
こうやって、私に色々と嫌味を言ってくるのは─清水渚沙。学生の時の同じ学部に居た同級生で、今は大学院に進んでいる。私とは真反対の位置に居る彼女とは、学生時代では同じ学部であっても関わる事など殆どなかった。
ぱっちり目の“美人”と言うよりは“可愛い”女性で、私の知っている学生生活4年の間だけでも、彼氏が何人か変わっていた。彼氏がいない時もきる時でも、数人の男女でつるんでいたのをよく目にしていた。見目の良い集りだったから、よく人目を引いていた。
そんな清水さんが、何故私にこんな悪態をつくのか……
『清水さんが狙ってた男の子が、吉岡さんに気があったらしいよ。』
と、清水さんの知り合いが教えてくれたけど…私には一切身に覚えのない事だった。誰かに告白された事はないし、学生時代に授業で班で行動する時以外で男の子と言葉を交わした事も殆どなかったのに。完全なるとばっちりだ。
ー嫌味ぐらいなら、どうって事は無いけどー
「清水さん、こんにちは。今日はオープンキャンパスで、どこも忙しいようですけど…清水さんの研究室は……暇なんですか?態々、それだけを言いに事務室迄来たんですか?」
今現在お昼休みで、事務員の殆どが食堂や購買部に行っていて出払っている中、私は事務室の自分の机でお弁当を食べている。こうした、周りに人目が無い時にやって来るのが……清水渚沙である。
「暇な訳ないじゃない。教授に頼まれた書類を提出しに来ただけよ。何で私が、態々吉岡さんに会う為だけに事務室に来なきゃいけないのよ。自意識過剰ちゃんなの?」
ー本当に、相変わらず一言も二言も多い人だよねー
「はい。しっかり仕事、して下さいね。ただの事務員さん。」
と、手に持っていた書類の束を軽く投げるようにカウンターに置いた後、清水さんは事務室から出て行った。
“ただの事務員さん”─で、何が悪いと言うのか。自分が院生だから偉いと言いたいのか……。
「そろそろ、私の事忘れてくれないかなぁ?」
「また、あの子に何か言われたの?」
「─っ!?あ…小南さん!」
「さっき、そこの廊下であの子とすれ違って…。あの子も、本当にある意味、翠ちゃんの事好きよね。」
「やめて下さいよ……。あ、事務局長なら、今食堂に行ってますよ。このまま、ここで待ちますか?」
「2時に約束してたのよ。待たせてもらって良い?それで──」
今目の前にいるのは、私を可愛がってくれている小南事務局長の奥さん。50歳を超えているが、とても可愛らしい人だ。その奥さんが振り返ると、そこには──
「この子ね、私の知り合いの子で、暫くの間ウチで預かる事になったの。」
「春野…セオ…です。」
「どうも。吉岡翠です。えっと……ハーフ…とかですか?」
身長180cm以上ありそうな長身で、銀髪?で青色の瞳なのに、まさかの“春野”。しかも、流暢な日本語で違和感が半端無い。
「翠ちゃんが気になるのはそこなのね?」
ふふっ─と笑う小南さん。
「え?普通に気になりませんか?“スミス”とか“ウィリアムズ”だったらしっくりくるんですけど…」
「そんな翠ちゃんだから大好き!」
と、何故か小南さんにハグをされた。いつもの事だけど、「可愛い!」と言ってはハグをされ、事務局長が笑っていたりする。
それから直ぐに事務局長も戻って来て、私を含めた4人で話をする事になり、事務局長の個室へと移動した。
春野セオ、25歳。私と同い年とは思えない程落ち着きと威厳?のようなものを持っている男性。前述の通り、奥さんの知り合いの子で、ちょっと色々あって、暫くの間預かると言う事になったのが3日前。そして、今日、この大学にやって来たのは、オープンキャンパスだったから。何でも、春野君の母親がこの大学のOGらしく、見学しに来たらしい。因みに、小南さん夫婦もこの大学の卒業生だ。
「もうね、ここに来る迄大変だったのよ。道を歩いていても電車に乗ってても、私が居るのに逆ナンされるし、スカウトらしき人に引き止められるし…恐るべしDNAよね……」
心なしか、疲れているように見えたのは、そのせいか…。“恐るべしDNAよね”と言う事は、両親が美男美女なんだろう。
「それなのに、この顔に全く反応しない翠ちゃんが、あまりにも翠ちゃんらしくて、ここ迄来るのに疲れた気持ちが吹っ飛んだわ。」
「……あぁ、なるほど……」
さっき笑っていたのは、そう言う意味か。
確かに、春野君はどこをどう見てもイケメンだ。きっと、半目で寝ていたとしてもイケメンかもしれない。
でも───
「顔だけでは、他人を判断する事はできませんからね。」
イケメンだからと言って、皆が皆、良い人とは限らない──と言う事を、私は身をもって知っているから。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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