巻き込まれではなかった、その先で…

みん

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29 対面③

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イーレンは、もともとデライト王国だった国が滅びた後、三つに別れて成り立った国の一つだ。
デライト王国も、王族や貴族は魔力持ちではあったが、平民の3分の1は魔力無しで、その魔力無し達は決められた領地に住まわされ、その周りに魔力無しを守るように魔力持ちの平民達を住まわせていた。
その、魔力無しが住んでいた領地が、今のイーレン王国に含まれている。そして、その土地は魔素が特に少ない─と言うか、殆どないらしい。その他の土地に於いても、イーレン王国は王都以外の土地は、他国に比べて極端に魔素が少ない為、国民の殆どが魔力無しになってしまったのだそうだ。

魔素が少ないと、余る魔素が無い。余分な魔素が無いと言う事は、穢れが出ない。魔素が少なく、穢れが出ないと言う事は魔獣や魔物が現れないと言う事。

と言う事は───

「イーレン王国には、聖女はって事よ。」

「でも……それでも、王都から離れた所では穢れがあって、最近では魔獣も現れると─」
「それは、イーレンの魔道士達が傲慢になり過ぎて、民達の為に魔力を使わなくなったからよ。」

数年前迄は、まだ魔道士も1年に数度は魔素の溜まりやすい所を巡り、溜まった魔素を魔石などに吸収させていた。穢れにはなっていないから、それだけで十分だった。
それが、数年前から、魔道士達はそれすらする事がなくなり──穢れまではいかないけど、溜まった魔素のせいで魔獣が現れるようになったそうだ。

「調べてみると、ニコル王女が魔道士のトップになって以降、魔獣の出現率が上がっていたわ。それでも、他国よりは低いから、ちゃんと魔道士達がするべき事をしていれば、態々聖女を召喚なんてする必要はないのよ。だから…ニコル王女が聖女の召喚を成功させたとしても、褒められる事ではないわ。寧ろ、その聖女の人生を狂わせた罪の方が大きいのかも…しれないわね。」

「それでも、聖女は…“癒やし”を使えるわ!」

「訓練をすれば─できるようになるかもね。癒やしは、聖女と言うだけでできるモノではないのよ。その訓練の指導を、ニコル王女ができるとも思えないけど……」

さっきから、驚きの連続だ。
正直、私も、聖女とは─聖女、穢れの浄化や癒やしが使えるのだと思っていた。

過去に一度も聖女を召喚した事がないから、その訓練の指導をする事は……魔法使いであるお姉様でも無理だろう。

「確かに、聖女として召喚されたから、そこの彼女にも多少なりとも光の魔力があるみたいだけど、光の魔力は訓練しなければ自分のとはならないし、訓練して自分のとして得なければ……その魔力を失うだけよ。」

「……失う?」

聖女が光の魔力を失う──

“光の魔力持ち=聖女”なのだから、その光の魔力を失えば、その聖女は、聖女ではなくなるだけではなく、“魔力無し”になると言う事だ。

「そんな……」

ショックを受けた様に呟いたのは…清水さんだ。
それはそうだろう。もう既に、ミヤ様に、清水さんの魔力は少ししかない─と言われたようなものだ。

「自分勝手な理由だけで、イーレンに必要のない聖女を召喚した上、まともな訓練も受けられずに、その聖女は聖女としての役割を果たす事なく魔力無しになる。これで、一体誰が……ニコル王女を褒めると言うの?本当に……無知とは……罪よね?罪は……ちゃんと償わないとね?」

ニッコリ微笑んではいるのに、今のミヤ様の目は全く笑ってはいない。冷たく感じる程の視線をお姉様に向けている。

「嫌よ…私は…償わなければいけないような罪は犯していないわ!それに、聖女のナギサが可哀想だと言うなら、お兄様と結婚でもすれば良いのよ!」

ーえ?何故そこでお兄様が?ー

と思ったところで……清水さんの視線がお兄様へと向いている事に気付く。なるほど…どうやら、清水さんはお兄様をいるようだ。つい最近、セオ君に絡んでいたのに……。

『本当に……本当に……話の通じない馬鹿ね…。』

ミヤ様がニッコリ微笑んだまま毒づいた言葉は、日本語だった。

『本物の馬鹿だな。見てて聞いてて愉しいな。』

『…………』

リュウさんも日本語で答えるが、日本語が分かる清水さんは黙ったままミヤ様を睨みつけている。

「何故、私が聖女と結婚しなければいけないんだ?お前も知っているだろうが、既に、私には婚約者が居るんだ。彼女は長い時間を掛けて王族となるべき教育を受け、誰にも文句を言われる事のない素晴らしい女性となった。そんな彼女を置いて、私が聖女と結婚するなど……有り得ない。」

「お兄様の婚約者……アーニャは魔力無しの無能で、お父様に反対されていたでしょう!?そのアーニャより、聖女のナギサの方が王族入りするのに相応しいわ!」
「もう、父上の許可を取る必要はないし、ましてや、ニコルに言われる筋合いは無い。貴族達の了承は得ているし……何より、隣国とウォーランド王国を含めた近隣国からも支持を得ているからな。」

と、お兄様は、お姉様を見据えたまま、ニヤリ─と微笑んだ。









❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ଘ(੭ˊ꒳​ˋ)੭✧


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