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31 従の枷
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「………有り得ない………シルヴィ!来なさい!」
「シルヴィ?」
どうしてお姉様が、その名を呼ぶのか。シルヴィはシルヴィでも、違うシルヴィなのか……
そんな考えを裏切るかのように、お姉様の目の前に展開された魔法陣から、白い光と共に現れたのは、魔獣ハティのシルヴィだった。そのシルヴィは、いつもの犬のような容姿でありながら、いつもは優しい目をしているのに、目を釣り上げて焦点が定まらないかのようにキョロキョロと動いている。そして、口から鋭い牙を剥き出しにして唸り、そこから涎がタラタラと垂れている。
何より、今にでも私達に襲い掛かって来そうな程の殺気が溢れている。
「魔獣……ハティか?」
リュウさんの雰囲気がガラリと変わり、魔力が溢れ出す。この部屋に居た騎士は、セオ君を省いて2人。その2人は、お兄様とミヤ様を護るように2人の前に出て、剣を構えている。
ー何故…シルヴィがお姉様に?ー
ジッ─とシルヴィを見つめると、シルヴィの首に魔法陣で出来た枷のようなものが嵌められているのが分かった。
「リュウ、ここは…私に任せてくれる?」
この場にそぐわない穏やかな声を出したのは、ハルさんだった。
「王太子様とミヤさんと、そこの聖女を安全な所に転移させて。ブルーナ様は、ここに居た方が良いから、セ───そこに控えている護衛さんが、しっかりブルーナ様を護って下さい。」
「分かりました。」
「分かった」
「ハル、大丈夫だと分かってるけど、気を付けてね。」
ハルさんの指示に、セオ君とリュウさんは素直に頷き、ミヤ様はハルさんに声を掛けてニッコリ微笑んだ。
そんな3人の落ち着いた様子とは逆に、お兄様と私は焦っている。
ー何でこんなに落ち着いていられるの!?ー
「翠、落ち着いて。シルヴィは母上に任せておけば大丈夫だから。翠も、俺が護るから大丈夫だ。」
そっと耳元でセオ君がつぶやいた。その声と言葉に、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
ー“護られる”と言う事は、これほどまでに…安心するものなんだなぁー
セオ君とは、まだ会ってからそんなに月日が経ったわけでもないのに、そこには安心と信頼がある。ミヤ様とハルさんとリュウさんに対しても、この人達なら大丈夫だろう─と思えている。
私の気持ちが落ち着いた頃、リュウさんがミヤ様とお兄様と騎士2人と清水さんと一緒に魔法陣を展開させて転移して行った。
そして、お姉様とシルヴィが対峙しているのは、ハルさん1人となった。
そのハルさんは、相変わらず穏やかな顔をしたままで、お姉様ではなく、シルヴィをジッ─と見つめている。
「ふん…お前みたいなお子様が、魔法使いの私と魔獣に何ができると言うの?大丈夫?さっさと片付けて……お兄様達を何とかしないと……シルヴィ、そこのお子様と……ブルーナをサクッとやりなさい。」
『───っ!!』
お姉様の言葉に、シルヴィの体がビクッと反応するが、シルヴィは何かに耐えるように、体を震えさせながらその場に留まっている。
「何をしているの?シルヴィ!私─ニコルの言う事に、今すぐ従いなさい!」
『─っ!!』
お姉様の言葉に、シルヴィが今度は素早く反応して、後ろ足を勢いよく蹴り出した。
「──ネージュ!」
そのシルヴィが、ハルさんに向かって駆け出したのと同時に、ハルさんが「ネージュ」と誰か?の名を呼ぶと、ハルさんとシルヴィの間に淡い水色と白色の光が溢れ出し、そこから1匹の犬が現れた。
その犬は、ゴールデンレトリバー程の大きさで、真っ白な綺麗な毛並みをしていて、ハルさんの前でチョコンとお座りをしている。
危ない!─と口にする前に、シルヴィの足がピタリと止まって、そこから微動だにする事なく、その場に留まっている。
「シルヴィ!何をしているの!?早く、その犬を始末して、あの子をやってしまいなさい!」
『──誰が誰に……何をするのだ?』
お姉様の言葉に反応したのは誰なのか──
『ハティと……名ばかりの魔法使い如きが……我と、我が主に手を出すのか?身の程知らずが────』
ブワッ──と、その犬から一気に魔力が溢れたかと思うと、その犬と思っていた犬がどんどん大きくなり、2m以上の大きさになった。
「あれは、母上と名を交わしている魔獣のフェンリルなんだ。」
「フェンリル!?」
それは、この世界ではない日本人だってよく知っているだろう、伝説級な魔獣じゃなかっただろうか?
ハティであるシルヴィも、フェンリルの血が入っているやらいないやら…と言っていたけど、どう見ても……格が違い過ぎる。
『あぁ、だが、感謝もしてやろう。我がまた、この地に戻って来るとは思わなかったが……色々とケリをつけるのには、良かったかもしれぬ故な。』
ニタリ─と嗤うフェンリル。そのフェンリルに「シルヴィは助けて!」と叫びたいのに、そのフェンリルの威圧が凄過ぎて声が出ない。
「ネージュ、落ち着いて?そのシルヴィと言う子は、ニコル王女に“従の枷”を嵌められているだけで、その子は本来、ブルーナ王女を護っている魔獣だから、その子は傷付けたりしては駄目よ?」
『“ブルーナ王女”?では、コレが、小さき騎士の彼女の魔獣か?』
「そう。だから、この子は、今必死にニコル王女からの従に抗ってるの。」
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
ポワーン(꒪ˊ꒳ˋ꒪)ꕤ*.゚
「シルヴィ?」
どうしてお姉様が、その名を呼ぶのか。シルヴィはシルヴィでも、違うシルヴィなのか……
そんな考えを裏切るかのように、お姉様の目の前に展開された魔法陣から、白い光と共に現れたのは、魔獣ハティのシルヴィだった。そのシルヴィは、いつもの犬のような容姿でありながら、いつもは優しい目をしているのに、目を釣り上げて焦点が定まらないかのようにキョロキョロと動いている。そして、口から鋭い牙を剥き出しにして唸り、そこから涎がタラタラと垂れている。
何より、今にでも私達に襲い掛かって来そうな程の殺気が溢れている。
「魔獣……ハティか?」
リュウさんの雰囲気がガラリと変わり、魔力が溢れ出す。この部屋に居た騎士は、セオ君を省いて2人。その2人は、お兄様とミヤ様を護るように2人の前に出て、剣を構えている。
ー何故…シルヴィがお姉様に?ー
ジッ─とシルヴィを見つめると、シルヴィの首に魔法陣で出来た枷のようなものが嵌められているのが分かった。
「リュウ、ここは…私に任せてくれる?」
この場にそぐわない穏やかな声を出したのは、ハルさんだった。
「王太子様とミヤさんと、そこの聖女を安全な所に転移させて。ブルーナ様は、ここに居た方が良いから、セ───そこに控えている護衛さんが、しっかりブルーナ様を護って下さい。」
「分かりました。」
「分かった」
「ハル、大丈夫だと分かってるけど、気を付けてね。」
ハルさんの指示に、セオ君とリュウさんは素直に頷き、ミヤ様はハルさんに声を掛けてニッコリ微笑んだ。
そんな3人の落ち着いた様子とは逆に、お兄様と私は焦っている。
ー何でこんなに落ち着いていられるの!?ー
「翠、落ち着いて。シルヴィは母上に任せておけば大丈夫だから。翠も、俺が護るから大丈夫だ。」
そっと耳元でセオ君がつぶやいた。その声と言葉に、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
ー“護られる”と言う事は、これほどまでに…安心するものなんだなぁー
セオ君とは、まだ会ってからそんなに月日が経ったわけでもないのに、そこには安心と信頼がある。ミヤ様とハルさんとリュウさんに対しても、この人達なら大丈夫だろう─と思えている。
私の気持ちが落ち着いた頃、リュウさんがミヤ様とお兄様と騎士2人と清水さんと一緒に魔法陣を展開させて転移して行った。
そして、お姉様とシルヴィが対峙しているのは、ハルさん1人となった。
そのハルさんは、相変わらず穏やかな顔をしたままで、お姉様ではなく、シルヴィをジッ─と見つめている。
「ふん…お前みたいなお子様が、魔法使いの私と魔獣に何ができると言うの?大丈夫?さっさと片付けて……お兄様達を何とかしないと……シルヴィ、そこのお子様と……ブルーナをサクッとやりなさい。」
『───っ!!』
お姉様の言葉に、シルヴィの体がビクッと反応するが、シルヴィは何かに耐えるように、体を震えさせながらその場に留まっている。
「何をしているの?シルヴィ!私─ニコルの言う事に、今すぐ従いなさい!」
『─っ!!』
お姉様の言葉に、シルヴィが今度は素早く反応して、後ろ足を勢いよく蹴り出した。
「──ネージュ!」
そのシルヴィが、ハルさんに向かって駆け出したのと同時に、ハルさんが「ネージュ」と誰か?の名を呼ぶと、ハルさんとシルヴィの間に淡い水色と白色の光が溢れ出し、そこから1匹の犬が現れた。
その犬は、ゴールデンレトリバー程の大きさで、真っ白な綺麗な毛並みをしていて、ハルさんの前でチョコンとお座りをしている。
危ない!─と口にする前に、シルヴィの足がピタリと止まって、そこから微動だにする事なく、その場に留まっている。
「シルヴィ!何をしているの!?早く、その犬を始末して、あの子をやってしまいなさい!」
『──誰が誰に……何をするのだ?』
お姉様の言葉に反応したのは誰なのか──
『ハティと……名ばかりの魔法使い如きが……我と、我が主に手を出すのか?身の程知らずが────』
ブワッ──と、その犬から一気に魔力が溢れたかと思うと、その犬と思っていた犬がどんどん大きくなり、2m以上の大きさになった。
「あれは、母上と名を交わしている魔獣のフェンリルなんだ。」
「フェンリル!?」
それは、この世界ではない日本人だってよく知っているだろう、伝説級な魔獣じゃなかっただろうか?
ハティであるシルヴィも、フェンリルの血が入っているやらいないやら…と言っていたけど、どう見ても……格が違い過ぎる。
『あぁ、だが、感謝もしてやろう。我がまた、この地に戻って来るとは思わなかったが……色々とケリをつけるのには、良かったかもしれぬ故な。』
ニタリ─と嗤うフェンリル。そのフェンリルに「シルヴィは助けて!」と叫びたいのに、そのフェンリルの威圧が凄過ぎて声が出ない。
「ネージュ、落ち着いて?そのシルヴィと言う子は、ニコル王女に“従の枷”を嵌められているだけで、その子は本来、ブルーナ王女を護っている魔獣だから、その子は傷付けたりしては駄目よ?」
『“ブルーナ王女”?では、コレが、小さき騎士の彼女の魔獣か?』
「そう。だから、この子は、今必死にニコル王女からの従に抗ってるの。」
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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