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第40話 【一夜で築かれた誓い】
しおりを挟む「余に口答えするとは……この無礼者!もう話す価値も無いっ!!牢屋にぶち込めっ!」
国王の拳が玉座を叩きつけた瞬間、衛兵たちが動いた。
「な、なにっ!? ちょ、ちょっと待って!暴力反対なんですけどどどど!!しかも私まだプレゼン途中なんですけどどどど!!」
『はい。ミサト。プレゼンは強制終了です。強制ログアウト処分ですすすす』
鋼鉄の手枷を掛けられ、引きずられるようにして石の牢へ。
国王の冷酷な声が響いた。
「口の減らぬ者には、沈黙こそ相応しい。牢屋に入ってろ!!」
◇◇◇
冷たい石の床。湿った空気。
ミサトは牢屋の中で膝を抱えていた。
「はぁ~……まさか牢屋に入れられるとはね~…でも、社畜時代に比べたら牢屋って意外とホワイト環境かも??」
『はい。ミサト。比較対象がブラックすぎます』
「え~?だってさ~、ちゃんと定時に消灯するし、残業ゼロだし。水は無料で飲み放題。これ、福利厚生って事でいいんでしょ?」
『はい。ミサト。福利厚生の定義をいま完全に壊しましたね。歴史に残る迷言です』
そんなやり取りをしていると、背後からリュウコクが現れた。
牢の外から覗き込み、彼は意味深な笑みを浮かべる。
「ミサトさん…。本当に……牢の中でもよく喋るんですね」
「あー!盗み聞きしたな!だって~、、暇なんだもん!」
ミサトが頬を膨らませると、リュウコクは肩をすくめる。
「父上は君を処刑したいとすら言っているよ。今、正直、、首の皮一枚だよ??」
「しょ、処刑!?いやいやいや! それヤバいでしょ! ブラック企業でも即クビはなかったよ!? 警告一回ぐらい挟んでよ!」
『はい。ミサト。国王、労基法未適用。ブラック度∞』
ミサトは深呼吸し、笑顔を浮かべた。
「でもね。私は信じてるんだ。里のみんなが必ず待っててくれるって。牢に入れられても、心まで縛られるわけじゃないし!」
彼女の言葉に、リリィが補足する。
『はい。ミサト。帝王学的に言えば、それは“心ある者は、檻にあっても自由である”。これはローマの哲学者の思想に通じます』
「おお~!ナイスリリィ!ついに哲学も学んできましたか!じゃあ私は異世界版ローマ哲学社畜ってことで☆」
リュウコクは吹き出した。
「ぶっ!……やっぱり面白い。普通の人間なら恐怖で震えてるのに、ミサトさんは笑ってる。だからこそ、まだ、、“早いんだよな”…」
そう呟き、リュウコクは牢の鍵を静かに開ける。
「帰って大丈夫だよ。……ただし覚えておいて。君が戻らなかったら、君の村の仲間たちが本当に国へ攻めてくる。それを僕は止められない…。今はね…」
ミサトはハッと目を見開いた。
「あっ……そうだった! ゴブ太郎が“5日経って帰って来なかったら国を攻める”って……!」
「うん。だから言ったでしょう、“まだ早い”と。戦いは避けられないかもしれない。でも、それは今ではない…」
リュウコクの瞳が鋭く光る。
「ミサトさん…。里を離れる準備をするか、戦争に備えるか。どちらを選ぶかは君次第だ。また会えるといいね☆」
ミサトは牢を出てリュウコクに会釈する。
「うん。ありがとうね☆また湯ノ花の里に遊びに来てよ。お礼に温泉まんじゅう奢ってあげるからさ☆」
リュウコクはそっと手を上げると、ミサトに微笑み去り行く背中にポツリと呟いた。
「ふふっ……またね」
◇◇◇
ミサトとリリィは夜の街道を駆け抜ける。
夜の街道を歩きながら、ミサトは息をついた。
「はぁ~、牢屋まで入れられて、私ほんと何やってんだろ……。間一髪、処刑は免れたけどね!私、ついてるね~☆」
『はい。ミサト。今回、牢屋経験を積むことで社畜スキルが監獄スキルに昇格しました』
「えっ??いらないよそんな昇格!私の肩書き、監獄OLになりたくない!」
『はい。ミサト。でも、牢屋から脱出した人材って、企業でも重宝されるんですよ』
「いやいや、それ欲しがるの、どこの闇転職情報サイトだよっ!それ!」
二人の声が冬の夜空に響き、重苦しい道を少しだけ軽くした。
◇◇◇
そして、湯ノ花の里が見えてきた時、、、
ミサトは言葉を失った。
「えっ??な、な、な……何これぇぇぇっ!?」
そこにそびえ立っていたのは、巨大な天守閣。
城壁が張り巡らされ、松明が夜を照らし、堂々たる城郭が完成していたのだ。
「えっ……えっ!?ここ湯ノ花の里だよね…??
私、ちょっと留守にした間に……お城~!? そんな留守にしたっけ??」
湯ノ花の里に入った瞬間、さらにミサトは目を疑った。
広場にずらりと武装したゴブリンたち。
ゴブ太郎は大斧を肩に担ぎ、真剣な顔で吠える。
「さぁ、行くぞっ!今夜、王都を攻める!」
ゴブ次郎が棍棒を振りかざす。
「おうっ!!ボスを奪われたまま黙ってられっか!」
「ちょ、ちょっと、ちょっと待ったぁぁ!」
ミサトが慌てて飛び出し、両手を広げる。
「ただいま!もう帰ってきたから!ほらっ!まだ4日と半日だよっ!戦争早まってるよ!!」
仲間たちの顔に、安堵と驚きが広がった。
ミサトの帰還に広場で笑うのは、村人たちとゴブリンたち。ゴブ次郎が胸を張り、腕を組む。
「ボス?どうせ国と喧嘩してきたんだろ? だからよ、次はオレたちの番だ。攻めも守りは任せろ!」
ゴブ太郎とゴブリンたちがニカッと笑い、石垣を叩く。「はっはっ!どうだ!ミサト。 これで敵が来ても安心だろ!」
エルナも何故か得意げに腕を組み、元村長は涙ぐみながら頷く。
「ミサト……これで、湯ノ花の里は誰にも負けませぬぞぉぉ~!」
「ほらっ!ミサト。お前の家も完成してるぜ!あははっ!大工とゴブリンが頑張ったんだぜ!」
カイルが得意げに城の最上部を指差す。
ミサトは天守閣を見上げ、腰を抜かしそうになりながら叫ぶ。
「んなぁっ!!ちょっ……あれ、、私の家!? なんで天守に組み込まれてんのぉぉぉ!?」
『はい。ミサト。史実に倣えば、これは“墨俣一夜城”のオマージュですね。労働力•村人+ゴブリン=ブラック建築の完成ですね』
「ぷっぎぃぃぃ!!ブラック建築やめろぉぉぉ!」
みんなの笑い声が里に響く。
それは、戦いの影が迫る中での、たしかな団結の証だった。
◇◇◇
、、牢に繋がれ、自由を奪われても。
、、帰れば仲間が、城を築いて待っている。
その光景にミサトは胸を熱くした。
「……よし。もう腹を括るしかないね。このブラック国とブラック王様、今度こそ綺麗なホワイトにしてやる!」
夜空にそびえる一夜城が、戦の幕開けを告げていた。
続
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