【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

文字の大きさ
91 / 179

第39話 【ブラック王と帝王学社畜OLの舌戦】

しおりを挟む

 茶館での会話は、ゆるやかなようで鋭い棘を含んでいた。
 リュカと名乗る青年、、その正体を知らぬまま、ミサトは湯気の立つ茶を前にして試されていた。

「もし……ミサトさんの村が、国の命令で取り潰されることになったら、、従いますか…?」
 リュカの目は柔らかい微笑の裏に冷たい光を宿していた。

「えっ? ん~……従わない、かな?うん。どんな理由があっても従わないね!」
 ミサトは肩を竦めて、にこっと笑う。
「だってさそんなのブラックじゃん? “お前の努力は無駄だから潰すね~”って会社に言われて“はいそ~うですか~”ってなる? ならないよね」

『はい。ミサト。即答で反逆宣言。勇気ある発言ですが転職市場では危険度SSランクです』
「リリィ、解説いらないから!」

 リュカは笑いを漏らし、次の問いを放つ。
「じゃあ、ゴブリンたちが反乱を起こしたら? 人間たちが『やっぱりゴブリンは危険だ』と言い出したら、君はどうする?」

 ミサトは茶杯を回しながら少し考える。
「え~っ?!ゴブちゃんたちはそんな事しないと思うんだけど……ん~、、とりあえず宴会開いて、仲直りしてもらうかな~?」
「んっ?……は?」
「だってさ、お菓子とお風呂と宴会あれば大体の揉め事は解決するよ! “飲んで食べて温まったらまぁいっか”って人、多いでしょ?お腹一杯で幸せなら大体の揉め事は終わるし☆」

『はい。ミサト。根拠薄弱。でも妙に説得力あり。これは異世界版ホワイト社畜理論です』

 リュカは目を細め、やがて小さく笑った。
「あははっ……なるほど。ミサトさんは本当に、面白いですね!」
 そう呟き、立ち上がる。
「、、そろそろ時間ですね…」

「えっ?んっ? 時間って……」
 ミサトが首を傾げると、リュカは意味深に微笑み、軽く頭を下げた。
「凄く面白かったです。また会いましょう☆」
 その言葉とウィンクを残して、茶館を後にする。
 、、そこでミサトははっと思い出した。
(あっ……私、王様に呼び出されてたんだった!)

 あまりにリュカとの会話に集中して、すっかり忘れていた。王からの呼び出し。あの重苦しい封蝋の手紙。
『はい。ミサト。天国あれば地獄あり。ここから完全に国王ルートです。次回予告するなら、次回“ラスボス直行便”です』
「ひぃぃぃ~! カジュアルに国王の事ラスボス呼びやめて!あと次回予告とか今いらないからっ!どーしても次回予告したいんだったら、せめて“私の歴史にまた1ページ”とでも言っとけ!」
『はい。ミサト。“私の歴史に、、』
「うるせぇー!本当に言わんでよろしっ!!」
 リリィとそんな掛け合いをしているうちに、ミサトは城の大扉の前へと辿り着いていた。

◇◇◇

 王城の広間。
 冷たい大理石の床に、赤い絨毯がまっすぐ伸びている。
 その先に座するのは、国王。

 重苦しい威圧感を纏い、彼は鋭い眼光でミサトを見下ろした。
「ほぉ~?お前が……湯ノ花の里の里長の女か?」
「は、はい。異世界社畜OL上がりのミサトです……」

 国王は鼻で笑った。
「シャチク?オーエル?まぁ、良い。お前は人も魔も集め、勝手に市を開き、税も納めぬと聞く。まったく、最近の民は勝手が過ぎるな。王が決めたルールを守るのが“国民の喜び”というものだろうに…民など所詮は税金を納めるためにある」

『はい。ミサト。ブラック臭検出。危険レベルSSS。とても臭いです』
「ぶっっ!臭いって! だよね!? てかさ、“従うのが喜び”とか完全にパワハラ上司だよね!? いやいや、時代錯誤どころか人権錯誤だよ!!これ!?」

 国王は苛立ちを隠さず言葉を続けた。
「何を二人で騒いでおるっっ!!お前達がこれからも余の国で商いをするなら、利益の八割を納めよ。それが嫌なら兵を出して踏み潰すまでだ。民の幸せなど、余の繁栄のためにある。従えぬ者に生きる価値はない」

 その言葉に、ミサトの額に青筋がピキッと浮かんだ。胸の奥で、社畜時代の記憶が蘇る。
 あの、理不尽に残業を強いられた夜。
 上司の【お前らの時間は会社のためにある】という迷言。

「あははっ!……なるほど。王様ってのもブラック企業の社長と同じなんだね~!こりゃわからせてやるしかないな…!」
「あっ?なに?」
「なら、言わせてもらうよ。“社長は社員のためにある。社員が社長のためにあるんじゃない”!分かる??あんたのために民がいるんじゃないんだよっ!」

『はい。ミサト。解説しときますね。ミサトが引用したのはルイ十四世の逆バージョンですね。本来「朕は国家なり」と言った王様ですが、ミサトは完全に真逆を突きつけました』
「リリィ、ナイスフォロー! そう!つまり、ブラック社長にホワイト研修ぶち込んだってわけ!理解出来たかな?国王様っ!!」

 国王は椅子の肘掛けを握り締め、顔を真っ赤にした。
「なっ!この無礼者! 王に向かってその口を……!」

 ミサトは目も逸らさず、一歩も退かない。
「《神の罰より、主君の罰おそるべし。主君の罰より、臣下、万民の罰おそるべし》これは誰だか忘れたけど戦国武将の言葉です! 民がいてこそ国が守られる。民を潰したら国なんて空っぽになるんですよ!あなたは裸の王様なんですよっ!!」

『はい。ミサト。これも解説。これは戦国時代の黒田官兵衛の言葉ですね。神の罰、主君の罰も恐ろしいが、民の不信や不満の罰はより恐ろしいという意味な考えですね』
「そう!それっ!!でしょ! ちゃ~んとブラック社長に教えてあげないと!」

 国王の額に汗が滲む。だが彼はなおも虚勢を張った。
「ふん、言葉遊びは好きにせよ。だが、力を持たぬ者は結局、力ある者に従うしかない。従わねば国と戦だぞ!国を敵に回す覚悟はあるのか?どうなんだ!?答えよっ!!」

 その時だった。
 背後の扉が開き、軽やかな声が広間に響く。

「、、まぁまぁ。そこまででいいんじゃないですか、父上」

 歩み出たのは、綺麗な黒髪の青年。
 変装を解き、王子の威容を纏ったリュウコク。

「えっ?なっ……! リュカ……?ねぇ、、リリィ…リュカの声っぽいよね…??」
 ミサトは思わず声を上げた。
『はい、ミサト。推定的中率99%。先ほどのお茶会の青年+ゴブリンの道案内=この王子です。変装解除イベント発生です』
「えっ?やっぱりかー! 絶対そうだと思ったんだよ!声がリュカそっくりだもんね!」

 リュウコクはミサトにウィンクすると、国王に向き直る。
「父上。このままでは民の支持を失い、国は立ち行かなくなります。彼女の言葉、軽んじるべきではありません」
 国王は歯ぎしりをし、言葉を詰まらせた。
 場の空気が、ようやく落ち着きを取り戻す……はずだった。

 だが、、、ピキッてるミサトは黙らない。

「……でも、リュカ。いや、リュウコク王子。やっぱり私、言いたいことあるから言わせてもらうよ!」
「えっ??ちょ、ちょっと待て!ミサト。ここは収めどころだぞ、、」
「おいっ!国王!“人の上に人を造らず、人の下に人を造らず”。福沢諭吉の言葉だ!しっかり覚えとけ」

『はい。ミサト。解説します。平等主義の精神を示した日本の近代思想ですね。現国王制真っ向否定です』
「あ~はっはっ!!ブラック王制クラッシャー発動って感じだね!あ~!スッキリした☆」

 国王は顔を青ざめさせ、怒りに震える。
 その顔を見たリュウコクはこめかみを押さえ、リリィと同時に呟いた。

『せっかくまとまりかけてたのに……』
「せっかく場を整えたのに……!」

 広間の空気は、再び嵐の前のように張り詰めていた。
 こうしてミサトとブラック王の舌戦は、火花を散らしながら続くのだった。
 王都の行く末を揺るがす、社畜OLの“帝王学プレゼン”。
 それが、いま始まったのである。


          続
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...