【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

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第19話 【港に集う三隻】

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 朝霧に包まれたアルガス港の中央に、三隻の船がゆっくりと並び立った。
 一隻は湯ノ花の象徴、工夫と連帯が詰まった頑丈な木造船。
 一隻はラインハルトの威厳を背負った軍船。
 そしてもう一隻は髑髏の海賊旗がなびく、海賊マリーが率いる荒々しき船員たちの海賊船。

 港に集う人々は息を呑み、その光景を見守った。
 潮風にたなびく旗が、異なる勢力の共闘を高らかに告げていた。

 船の甲板で三人は顔を合わせる。
 マリーが口を開いた。
「……やっぱりお前らの頭の中バケモンかよ。こんなの考えたって、普通は出来ねぇだろ」

 その口調は驚きと呆れが入り混じっていた。
 ミサトは肩を竦め、あっけらかんと笑った。

「あははっ! 出来ちゃったんだから細かいことは気にしない。“為せば成る”って言うでしょ?」

 ミサトのポケットからリリィの声が響いた。
『はい。ミサト。ミサトは相変わらずノリだけで突っ走りますね。《為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり》なんて、上杉鷹山標語ですか?そんな言葉部下に言ったら、あと三年もしたらパワハラですよ』

「ちょ、ちょっとリリィ! 偉人をディスるのはやめなさい!炎上するよっ!」
『はい。ミサト。私はディスってません。時代錯誤だと指摘してるだけです。時代は常に流れて行くものです。私から一言。《やるだけいいじゃん やったらいいじゃん 来るだけマシじゃん》これでどうですか??炎上しますか??』
「うわっ!なんかイヤっ!? まぁ、、いいじゃない、今回“為せば成る精神”でちゃんと結果出してるんだから!」

 マリーが目を瞬かせる。
「……なんて言葉の応酬だ……何言ってるかさっぱりわからん??」
 リュウコクも苦笑しつつ説明する。
「ははは、ミサトの“知恵袋”さ。頼りになるだろう?僕も誰の事を言ってんのか分からない時もあるけど……」

「リリィは頼りになるけど毒舌も過ぎるのよ!」
 ミサトは頬をぷくぅっと膨らませる。
『はい。ミサト。毒舌ではありません、事実です。しかも今回の計画の六割は私が組んでるんですから」
「ちょ、それは言うなぁぁぁっ!私もちゃんとやってるってっ!!」

 船員やゴブリンたちがクスクス笑い、重苦しい港の空気がわずかに和らいだ。
 マリーは肩をすくめ、「あはは、、……やっぱりバケモンは二人じゃなくて三人だな」とぼやいた。

 今から殺し合いが始まるかもしれないのに笑い話をする胆力に、マリーは逆に背筋を寒くした。
 一方でリュウコクは涼しい顔を浮かべ、豪奢なマントを翻す。

「さぁ!そろそろ着くよ!“交渉”に行こうか?」
 その芝居がかった仕草に、ミサトが思わず小声でツッコむ。
「……あんた、ほんとにカッコつけ癖直んないわね」
「あははっ!妻に見られてるから、少しぐらい格好つけたっていいじゃないかっ!!」
「うぉっいっ!誰が妻じゃいっ!!」
『はい。ミサト。貴女に言ってない可能性があります。ですが答えてしまったのでその気ありとみなします』
「ぐぬぅぅぅ!確かに、、咄嗟に返してしまったじゃないか…」
 息もつかぬ掛け合いにマリーがため息を吐く。
 だが、緊張をほぐすかのように笑いがこぼれ、港の空気がわずかに揺らいだ。

◇◇◇
 
 やがて三人は船を降りる。
 ミサトの背後には、ゴブ太郎とゴブ次郎を先頭にしたゴブリン軍団。粗野ながら秩序を守るその行進は、彼らの成長を物語っていた。
 マリーの背後には、荒波を生き抜いてきた血気盛んな船員たち。海風に焼けた肌と鋭い視線が、彼女の覚悟を支えている。
 そしてリュウコクの背後には、カリオス率いるラインハルト兵士団。整然と並ぶ姿は軍隊の矜持そのものだった。

 戦場に似た港に降り立ちながら、ミサトはゴブリンたちに向き直る。
「ゴブちゃんたち、始まるけど……殺しちゃダメだからね…」
 ミサトの真剣な声に、ゴブ太郎とゴブ次郎は不満げに鼻を鳴らしつつも頷いた。
 それを見たカリオスがリュウコクに小声で問いかける。
「なぁ?……こっちはどうするんだい?」
「あははっ!同盟国が殺しちゃダメなら、、うちも、だよ」
 リュウコクの即答に、カリオスは微笑み頷く。
 その二人のやり取りを聞いたマリーが豪快に笑い、両手を腰に当てた。
「はははっ!なら、うちもだよ! わかった、死人は出さねぇ!お前らわかったなっ!!」
 船員達は拳を上に挙げ「「「おぉぉぉ」」」と声をあげた。
 そして三人は視線を交わし、同時に歩き出した。

◇ ◇◇

 、、その光景はまるで映画のワンシーンだった。
 真ん中を堂々と進む三人。その周囲では傭兵たちと兵士、船員、ゴブリンが入り乱れて戦いを繰り広げる。だが時間がゆっくりと流れるように、誰一人として三人の進路を塞ぐことは出来ない。
 敵の剣が振るわれ、盾がぶつかり合う。火花が散り、悲鳴が飛ぶ。だが三人の足取りは揺るがない。スローモーションのように、、まるでパレードのように、、ただ一直線に。

 やがて港の奥、聳え立つ立派な宮殿の入り口から、一人の男が現れた。
 金と権力に酔いしれた成金、、バレンティオだ。

 脂ぎった顔に嘲笑を貼り付け、両手を広げる。

「……よく来たな。アルガスへようこそ!今回は変装して来なかったんだなっ!!ラインハルトの坊ちゃんよぉぉっ!!」

 その姿を見て、リュウコクが口角を上げた。
「あははっ!変装?あっちの僕のがお気に入りだったかい?? それよりどうだい? 僕の“贈り物”は気に入ってくれたかい??、、成金野郎!」

 挑発に、バレンティオの目がギラリと光る。
 空気が一気に張り詰めたが、ミサトが前に出て手を広げる。

「ちょっ、ちょっと待ってよ!私たち交渉に来てるの。出来たら、、その、話し合いで解決したいんだけど、、ほら、税率とかそう言うのさ!?」

 その真っ直ぐな声に、港の喧噪が一瞬だけ止んだ。
 しかしバレンティオは嘲るように嗤う。

「ハッ……交渉? 笑わせるな!!ここまでコケにされて、『はい、その税率で仲良くやりましょう』、なんて言うわけねぇだろうがぁぁぁ!!」
 
 バレンティオはわざと視線をマリーに向ける。
「くっくっくっ!なぁ、マリー??この俺に牙を向くってことは、、妹はもう諦めたのかい? 今なら間に合うぞ。そいつらの首を刎ねろ!!そしたら許してやるよ!あははは!」

 バレンティオの怒号と笑い声が響いた瞬間、戦場の空気はさらに重くなる。
 顔色の変わるマリー。マリーの背後で船員たちがざわめき、ゴブリンたちも武器を構える。カリオスの兵士たちは緊張し、視線を主君に投げた。

 、、運命を分ける一瞬が訪れようとしていた。


          続
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