【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

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第20話 【笑いの裏に隠された薬】

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 バレンティオの怒号と笑い声が、アルガス港の空に響いた。
 その声を浴びて、マリーの顔は一層硬くなっていく。唇を噛みしめ、剣の柄を握る手が白くなる。

 、、、緊張が伝わってくる。

 そんなマリーの様子に、隣に立つミサトは思わず吹き出してしまった。
「ぷっ、、あははっ!……ごめん、マリー! そんな顔してると、まるで映画の悪役に挑むヒーローみたいなんだもん!めっちゃくちゃ気持ち入る~!」

 その笑い声に釣られて、リュウコクがククッと笑い、戦っていたゴブ太郎やゴブ次郎まで「ガハハッ!」と肩を震わせた。
 血気盛んな船員たち、ラインハルトの兵士までが順々に笑い始める。緊張の糸は、味方の間で音を立ててほどけていった。

「……なにがおかしい?何を笑ってるんだっ!!」
 バレンティオが唸るように吐き捨てた。怒気が波のように押し寄せ、場の空気が一瞬にして冷え込む。

 その時。マリーが一歩、前に出た。

「くくくっ!……あ~、あのさ、今まで散々薬を探して貰って、、なんか悪かったな」
 その声音は、嫌味をたっぷりと含んでいる。
「でも、、もういいんだよ……。もう見つかったんだ…その薬はな!!」

 バレンティオの顔色がわずかに揺れた。

 その瞬間、時は巻き戻る、、、。

◇◇◇

 舞台は湯ノ花の天守閣。
 夜の灯が静かに揺れ、窓の外には温泉の湯気が白く立ち上っていた。

「ミサト、、ごめんっ!……本当はね、私はバレンティオに頼まれてここに来たんだ…」
 マリーの声は、低く震えていた。
「病気の妹のため……。あいつに弱みを握られてる。だから裏方に回ることしかできなかった。私、ずっと……」

 ミサトは目を丸くして、、次の瞬間、あっけらかんと笑った。
「あははっ!それ私に言っちゃダメなやつじゃ~ん!」
「っ……!」
 マリーの目が潤む。叱られると思っていたのだ。

 けれどミサトはすぐに真面目な顔に戻り、そっとマリーの肩に手を置いた。
「でも、言ってくれてありがとうね。相談に乗るよ。社畜時代からずっとそうしてきたんだ。自分で抱え込みすぎるより、誰かに頼った方が早いからね」

「……」
 マリーの喉がつまる。

「ん~?妹さんの病気かぁ?どうしたら解決するのかね??」

 その問いに、マリーは堰を切ったように語り出した。
 幼い妹。長く続く原因不明の病。
 バレンティオは「世界中から薬を集めてやる」と囁き、マリーを縛った。

 ミサトは腕を組んで唸る。
「う~ん……難しいなぁ…“世界中を探しても”まだ見つからない…。ん~~……」

 その時。リリィがぽんと口を挟んだ。
『はい。ミサト。答えは簡単じゃないですか? エルフの女王に聞いてみたらいいじゃないですか。自然と薬草の知識は向こうが専門ですよ。何かしらの魔法もありそうですし』

 ミサトは目を丸くし、、ぱっと笑顔になる。
「おっ!ナイスリリィ! それだ!妹さん連れて、手土産持って聞きに行こうか」

◇◇◇

 翌日。
 ミサトとマリーは、妹を背負ってエルフの村へと向かった。
 森の奥、大きな大樹、澄んだ水が流れる村。出迎えたのは緑銀髪の姫リュシアと、静かな威厳を漂わせる女王アエリア。

 事情を説明すると、アエリアは妹の体を診察し、薬草を調合して差し出した。
「これを毎日飲ませなさい。時間はかかるけれど、飲み終わる頃には、やがて元気を取り戻すでしょう」

「……! 本当ですか!」
 マリーの瞳が涙で揺れる。
 その時マリーの妹が目を開ける…。
「ありがとう……お姉ちゃん…」
 マリーはその場に膝をつき、何度も何度もみんなに礼を述べた。
「ありがとう……ありがとう……!」
 ミサトは少し照れながら手をひらひらさせる。
「気にしないで。だって仲間でしょ?」
『はい。ミサト。社畜魂発動ですね~』
 リリィが茶々を入れる。

 その横で、アエリアはというと、、。
 湯ノ花からお土産で貰った温泉まんじゅうをもぐもぐ食べていた。
「ん……これ、これ……美味しい……!」
 女王の頬がほころび、まんじゅうが次々と消えていく。リュシアがポツリと呟く。
「お母様…食べすぎです……」
 緊迫の場面だというのに、妙に温かい空気が流れていた。

◇◇◇

 そして現在に戻る、、、
 アルガス港に仁王立ちするマリーは、堂々とバレンティオに言い放ったのだ。

「そう言うことだからっ!もう薬は要らない!!あんたの指図ももう受けないっ!!」

 バレンティオの目が見開かれる。
 その隣で、リュウコクが一歩前に進み出た。
「くくくっ!滑稽だな~、成金野郎!頼みの綱も切られ、、さぁ……お前の次の“贈り物”はなんだ??早く僕たちを楽しませろっ!!」
 リュウコクは口元を吊り上げる。
「ほらっ!出してみろよ、成金野郎!」
 リュウコクが豪奢なマントを翻し、涼やかに笑った。
「あははっ!さぁ、バレンティオ、、出してみろよっ!!!僕たちの“贈り物”が気に入り過ぎて自分のが出せないのか??」

 その挑発に、港の空気はさらに張り詰める。バレンティオの顔が怒りに赤黒く染まるのを横目に、ミサトは思わず小声でリリィに囁いた。

「ねぇリリィ……あの王子様、めちゃくちゃ自分に酔って、またカッコつけ病が発動してるんだけど」
『はい。ミサト。リュウコク様は毎回クライマックスでカッコつけます。仕様です。しかもミサトの前ではマシマシな様ですね』
「マシマシ仕様ってなにその冷たい分析っ!かわいそっ! ……でもまぁ、確かに決めるとこは決めてくれるんだよね」
『はい。ミサト。その発言は惚れてるでいいんですか??』
「ぶはっ!!? ちょっ!惚れてるとか言わないでって!今そんなこと言う!? 戦場だよ!? みんなに聞かれたらどうすんのよっ!」
『はい。ミサト。聞こえてますよ。貴女の王子も、ゴブ太郎も、カリオスも、マリーも』
「えええっ!? ちょ、絶対聞かれてないって!!」

 慌てふためくミサトに、ゴブ太郎たちが「ククク……」と肩を揺らし、マリーはニヤリと口元を歪めた。
 リュウコクだけが少しだけ顔を赤く染め、涼しい顔で「では……バレンティオ。交渉を始めるとしようか?」と言い放ち、空気を再び引き締める。

 潮風がざわめき、空気がさらに熱を帯びる、、
 笑いと緊張が交錯する中、アルガスの運命を決する対話が幕を開けようとしている、、
 交渉の幕は、いよいよ切って落とされようとしていた、、。


          続
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