【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

文字の大きさ
124 / 179

第19話 【港に集う三隻】

しおりを挟む

 朝霧に包まれたアルガス港の中央に、三隻の船がゆっくりと並び立った。
 一隻は湯ノ花の象徴、工夫と連帯が詰まった頑丈な木造船。
 一隻はラインハルトの威厳を背負った軍船。
 そしてもう一隻は髑髏の海賊旗がなびく、海賊マリーが率いる荒々しき船員たちの海賊船。

 港に集う人々は息を呑み、その光景を見守った。
 潮風にたなびく旗が、異なる勢力の共闘を高らかに告げていた。

 船の甲板で三人は顔を合わせる。
 マリーが口を開いた。
「……やっぱりお前らの頭の中バケモンかよ。こんなの考えたって、普通は出来ねぇだろ」

 その口調は驚きと呆れが入り混じっていた。
 ミサトは肩を竦め、あっけらかんと笑った。

「あははっ! 出来ちゃったんだから細かいことは気にしない。“為せば成る”って言うでしょ?」

 ミサトのポケットからリリィの声が響いた。
『はい。ミサト。ミサトは相変わらずノリだけで突っ走りますね。《為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり》なんて、上杉鷹山標語ですか?そんな言葉部下に言ったら、あと三年もしたらパワハラですよ』

「ちょ、ちょっとリリィ! 偉人をディスるのはやめなさい!炎上するよっ!」
『はい。ミサト。私はディスってません。時代錯誤だと指摘してるだけです。時代は常に流れて行くものです。私から一言。《やるだけいいじゃん やったらいいじゃん 来るだけマシじゃん》これでどうですか??炎上しますか??』
「うわっ!なんかイヤっ!? まぁ、、いいじゃない、今回“為せば成る精神”でちゃんと結果出してるんだから!」

 マリーが目を瞬かせる。
「……なんて言葉の応酬だ……何言ってるかさっぱりわからん??」
 リュウコクも苦笑しつつ説明する。
「ははは、ミサトの“知恵袋”さ。頼りになるだろう?僕も誰の事を言ってんのか分からない時もあるけど……」

「リリィは頼りになるけど毒舌も過ぎるのよ!」
 ミサトは頬をぷくぅっと膨らませる。
『はい。ミサト。毒舌ではありません、事実です。しかも今回の計画の六割は私が組んでるんですから」
「ちょ、それは言うなぁぁぁっ!私もちゃんとやってるってっ!!」

 船員やゴブリンたちがクスクス笑い、重苦しい港の空気がわずかに和らいだ。
 マリーは肩をすくめ、「あはは、、……やっぱりバケモンは二人じゃなくて三人だな」とぼやいた。

 今から殺し合いが始まるかもしれないのに笑い話をする胆力に、マリーは逆に背筋を寒くした。
 一方でリュウコクは涼しい顔を浮かべ、豪奢なマントを翻す。

「さぁ!そろそろ着くよ!“交渉”に行こうか?」
 その芝居がかった仕草に、ミサトが思わず小声でツッコむ。
「……あんた、ほんとにカッコつけ癖直んないわね」
「あははっ!妻に見られてるから、少しぐらい格好つけたっていいじゃないかっ!!」
「うぉっいっ!誰が妻じゃいっ!!」
『はい。ミサト。貴女に言ってない可能性があります。ですが答えてしまったのでその気ありとみなします』
「ぐぬぅぅぅ!確かに、、咄嗟に返してしまったじゃないか…」
 息もつかぬ掛け合いにマリーがため息を吐く。
 だが、緊張をほぐすかのように笑いがこぼれ、港の空気がわずかに揺らいだ。

◇◇◇
 
 やがて三人は船を降りる。
 ミサトの背後には、ゴブ太郎とゴブ次郎を先頭にしたゴブリン軍団。粗野ながら秩序を守るその行進は、彼らの成長を物語っていた。
 マリーの背後には、荒波を生き抜いてきた血気盛んな船員たち。海風に焼けた肌と鋭い視線が、彼女の覚悟を支えている。
 そしてリュウコクの背後には、カリオス率いるラインハルト兵士団。整然と並ぶ姿は軍隊の矜持そのものだった。

 戦場に似た港に降り立ちながら、ミサトはゴブリンたちに向き直る。
「ゴブちゃんたち、始まるけど……殺しちゃダメだからね…」
 ミサトの真剣な声に、ゴブ太郎とゴブ次郎は不満げに鼻を鳴らしつつも頷いた。
 それを見たカリオスがリュウコクに小声で問いかける。
「なぁ?……こっちはどうするんだい?」
「あははっ!同盟国が殺しちゃダメなら、、うちも、だよ」
 リュウコクの即答に、カリオスは微笑み頷く。
 その二人のやり取りを聞いたマリーが豪快に笑い、両手を腰に当てた。
「はははっ!なら、うちもだよ! わかった、死人は出さねぇ!お前らわかったなっ!!」
 船員達は拳を上に挙げ「「「おぉぉぉ」」」と声をあげた。
 そして三人は視線を交わし、同時に歩き出した。

◇ ◇◇

 、、その光景はまるで映画のワンシーンだった。
 真ん中を堂々と進む三人。その周囲では傭兵たちと兵士、船員、ゴブリンが入り乱れて戦いを繰り広げる。だが時間がゆっくりと流れるように、誰一人として三人の進路を塞ぐことは出来ない。
 敵の剣が振るわれ、盾がぶつかり合う。火花が散り、悲鳴が飛ぶ。だが三人の足取りは揺るがない。スローモーションのように、、まるでパレードのように、、ただ一直線に。

 やがて港の奥、聳え立つ立派な宮殿の入り口から、一人の男が現れた。
 金と権力に酔いしれた成金、、バレンティオだ。

 脂ぎった顔に嘲笑を貼り付け、両手を広げる。

「……よく来たな。アルガスへようこそ!今回は変装して来なかったんだなっ!!ラインハルトの坊ちゃんよぉぉっ!!」

 その姿を見て、リュウコクが口角を上げた。
「あははっ!変装?あっちの僕のがお気に入りだったかい?? それよりどうだい? 僕の“贈り物”は気に入ってくれたかい??、、成金野郎!」

 挑発に、バレンティオの目がギラリと光る。
 空気が一気に張り詰めたが、ミサトが前に出て手を広げる。

「ちょっ、ちょっと待ってよ!私たち交渉に来てるの。出来たら、、その、話し合いで解決したいんだけど、、ほら、税率とかそう言うのさ!?」

 その真っ直ぐな声に、港の喧噪が一瞬だけ止んだ。
 しかしバレンティオは嘲るように嗤う。

「ハッ……交渉? 笑わせるな!!ここまでコケにされて、『はい、その税率で仲良くやりましょう』、なんて言うわけねぇだろうがぁぁぁ!!」
 
 バレンティオはわざと視線をマリーに向ける。
「くっくっくっ!なぁ、マリー??この俺に牙を向くってことは、、妹はもう諦めたのかい? 今なら間に合うぞ。そいつらの首を刎ねろ!!そしたら許してやるよ!あははは!」

 バレンティオの怒号と笑い声が響いた瞬間、戦場の空気はさらに重くなる。
 顔色の変わるマリー。マリーの背後で船員たちがざわめき、ゴブリンたちも武器を構える。カリオスの兵士たちは緊張し、視線を主君に投げた。

 、、運命を分ける一瞬が訪れようとしていた。


          続
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

処理中です...