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湖へピクニック
しおりを挟むルカが森の中を駆け回りながら大きな葉を拾い集めているのを見て、紬は声をかけた。
「何してるの、ルカ?」
「ん、これ。ちょうどいい形の葉っぱを集めてるんだ。」
ルカは誇らしげに見せた。それは水に浮かびそうな形をした大きな葉だった。
紬は首を傾げた。「それ、どうするの?」
「湖で船みたいに流して遊ぶんだよ!あ、そうだ。紬、湖に行ったことある?水がすっごくキレイで、魚も泳いでるんだ。」
「湖かぁ……」
紬は空を見上げた。そういえば、異世界に来てから遠くの景色を見に行くことなんてほとんどなかった。森の中での生活は楽しかったけれど、こうして住人たちと一緒に外に出かけるのも悪くないかもしれない。
「それ、どこにあるの?」
ルカは目を輝かせながら、森を越えた向こうにある湖の話をし始めた。彼女が小さい頃、家族とともに遊んだという場所らしい。水面が鏡みたいに透き通っていて、湖の周りにはたくさんの花が咲いていたという。
「そんな素敵な場所なら、みんなで行こうよ!」
紬がそう提案すると、ルカは尻尾を振って大喜びした。
数日後、紬、ルカ、ガロン、セス、エリナの五人は森を越えて湖へ向かうことになった。ガロンはたくさんの道具を詰めたリュックを背負いながらぼやいていた。
「これ、絶対使う道具だぞ。外出するなら備えあれば憂いなしってやつだ。」
「いやいや、荷物多すぎじゃない?その鍋、絶対いらないって!」セスが突っ込みを入れながら笑う。
エリナは地図を片手にルカと相談している。「ここを真っ直ぐ行けば、昔の道跡が残ってるはずよね?」
「うん。でも、森の中だからちょっと分かりづらいかも……あ!妖精に頼んでみよう!」
ルカがそう言った途端、水の妖精・ソルが現れた。「湖へ行くのかい?僕に任せて!」
ソルは小さな光の粒となって道を案内してくれた。森の深い緑を抜けると、眼前に広がる透明な湖が姿を現した。
「わぁ……!」
誰もが思わず声を上げた。湖はルカの話通りに澄み切っていて、周りには色とりどりの花が咲いていた。
「ここ、本当に綺麗ね……」エリナがつぶやき、紬も頷いた。
ルカは湖の縁に駆け寄ると、水面に映る自分の姿を見つめた。どこか懐かしそうな表情をしている。
「ここが、私の思い出の場所だよ。」
ガロンが大きな石に腰を下ろしながら言った。「さぁ、湖といえば釣りだろう!宴を開くぞ!」
「宴って、そればっかりだなぁ!」セスが笑いながら釣り竿を手渡した。
しばらくして、ルカが一匹目を釣り上げた。想像以上に大きな魚だったため、ルカは必死に引っ張る。紬が慌てて手伝い、なんとか釣り上げることができた。
「やったね!」
全員が拍手する中、ルカは笑顔で尻尾を揺らしていた。
湖畔でのピクニックでは、紬が持参した手作りのお弁当が大活躍した。おにぎりやサンドイッチを囲みながら、セスがまた新しい歌を披露してみんなを笑わせた。
帰り道、ルカは満足そうに微笑んで言った。「またみんなで来たいな。」
紬も笑顔で頷く。「次はもっと大勢で、みんなを連れてこよう!」
日が暮れ始め、湖畔に柔らかな夕焼けの光が差し込む中、ガロンが焚き火の準備を始めた。乾いた木の枝を組み上げ、セスが火打石を叩いて火を点ける。パチパチと木が燃えはじめる音と、暖かな光がみんなの顔を照らした。
「こういうの、なんかいいよね。」
紬は火の明かりを見つめながら、ほっと息をついた。
「だろう?焚き火ってのは最高の娯楽だ。」ガロンは自信満々に言いながら、大きな鉄鍋を火の上にかけた。
「だから、その鍋なんで持ってきたの!」セスが笑いながら突っ込むと、ガロンはにやりと笑う。
「こういう時に役立つんだよ。さあ、今日のメニューは特製スープだ!」
エリナが野菜を切り、ルカがスパイスを選びながら鍋に加えていく。香ばしい匂いが辺りに広がり、みんなの胃袋が刺激される。
「紬、味見してみてくれる?」エリナが小さな木のスプーンを差し出した。
紬はスープを一口すすって目を輝かせた。「うん、すごくおいしい!これならみんな満足するね。」
スープが煮える間、紬は自宅から持参したマグを取り出した。「温かい飲み物、どうぞ!」
彼女が用意したのは、現実世界で慣れ親しんだ紅茶に似たハーブティーだった。蜂蜜を少し垂らしたその香りは、冷たい夜風の中で特別に心地よいものだった。
「これ、あったかくてほっとするなぁ。」ルカが手を包むようにマグを抱えながら微笑む。
火を囲んでスープを食べ始めると、話題はそれぞれの思い出や夢の話に移っていった。
「ルカ、今日は楽しめたか?」紬が尋ねると、ルカは嬉しそうに頷いた。
「うん!すごく楽しかったよ。みんなで湖に来たの、きっと忘れられない思い出になる。」
「紬、あんたも初めての遠出だったんだろ?」セスがマグを傾けながら問いかける。
「うん、すごく新鮮だったよ。こうしてみんなと一緒に何かをするのって、本当に幸せだなって思った。」
その言葉に、ガロンが豪快に笑いながら言った。「なら次は、もっと遠くへ冒険するか?ほら、あの山の先とか。」
「ちょっと待って、まだ今日の野営が終わってないよ!」エリナが笑いながら突っ込むと、全員が笑い声を上げた。
夜空には満点の星が広がり、焚き火の炎がゆらゆらと揺れる。ルカが毛布にくるまりながら、ふとぽつりとつぶやいた。
「紬、ここに来てよかったよ。みんなと一緒にいて、すごく安心できる。」
紬は優しく微笑んで、彼女の肩に手を置いた。「私もだよ、ルカ。ここでみんなと一緒に新しい生活を作れて、本当に幸せ。」
夜は更け、焚き火の炎が少しずつ小さくなっていく中、みんなは静かに眠りについた。星空の下で過ごすこの一夜は、紬にとっても、仲間たちにとってもかけがえのない思い出になったのだった。
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