終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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午後になると、交通の混乱はさらに悪化していた。

ニュースでは**「鉄道各線の運休」「主要道路の渋滞」「各地での暴力事件の増加」**を報じているが、明らかに政府はまだ事態を過小評価している。

SNSでは**「駅で人が襲われた」「暴れる乗客を警官が取り押さえたが、噛まれた」**といった未確認の情報が次々と流れ続けていた。

──もう、崩壊のカウントダウンは始まっている。

そんな中、俺のスマホが震えた。

安田:「おい、三浦。そっちどうだ?」

俺:「今のところ平和。でも、外の雰囲気は最悪だ」

安田:「そうか……で、今からそっち行ってもいいか?」

俺:「え?」

安田:「いや、さっきも話したけど、お前のとこマンションだろ? オートロックあるし、しばらくの間は安全なんじゃねえかと思ってな」

俺:「……確かに、ここなら安全かもしれない」

安田:「それに、お前……一人だと、キツいだろ」

その言葉に、一瞬だけ心が揺れた。

両親を失ってから、考える暇もなく動いていたが、気づけば何も手につかずに時間だけが過ぎていた。

「……ああ、そうか」

実家のことを考えないようにしていたが、無意識に俺は焦っていたのかもしれない。

仲間がそばにいるだけで、多少は違うかもしれない。

俺:「分かった。来てくれ」

安田:「おっしゃ。じゃあ、斉藤と高橋も連れて行く。お前んとこなら集まりやすいし、持ち寄れるもん持ってくわ」

俺:「気をつけて来いよ」

安田:「分かってる。そっちも準備しとけ」

通話を終え、俺は部屋を見回した。

俺の住むマンションは比較的しっかりしたオートロック付きの物件だが、防御力が高いわけではない。

玄関の鍵はあるが、万が一のためにバリケードになるものも考えなければならない。

「とりあえず、家具を移動させるか……」

今のうちにできる限りの準備をしておこう。

それが、これからの数日を生き延びるために必要なことだ。

部屋の片付けをしている最中、スマホが振動した。

通知を見ると、会社の安否確認システムからの一斉送信メールだった。

「【重要】本日より出社不要」

一気に心臓の鼓動が速くなる。

本文を開くと、簡潔にこう書かれていた。

「社員各位

現在の状況を鑑み、本日より全社員の出社を不要とします。

各自、安全を最優先に行動し、身の安全を確保してください。

今後の指示については、状況が落ち着き次第、追って連絡します。

──各自の健闘を祈ります。」**

「……終わったな」

藤木がこのメールを見たら、間違いなく皮肉を言うだろう。

『健闘を祈るって、もう会社が放棄してんじゃねえか』

そんな声が聞こえてきそうだった。

つまりこれは、会社としてもどうしようもない状況になったということだ。

完全に機能停止する前に、最低限の対応だけはしておこうという意思が感じられる。

「……これ、もう普通の世界じゃなくなってきてるな」

テレビではまだ政府が「冷静な対応を」などと繰り返しているが、SNSでは**「政府関係者が逃げ始めた」「空港から要人が次々に出国している」**といった情報まで流れ始めている。

この混乱がピークに達するのは、もう時間の問題だった。

仲間たちがここに来るまでに、できる限りの準備をしておこう。

俺は、リュックの中に買い出しで手に入れた物資を詰め直しながら、玄関に視線を向けた。

今ならまだ、ほんの少しの猶予がある。

この時間を、無駄にはできない。

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