終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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夜の静寂が部屋を包んでいた。

俺たちは床に寝袋を広げ、それぞれ横になったが、誰も完全には眠れていなかった。

「……こんな状況で寝られる気がしねえ」

安田がぼそりと呟く。

「寝られるうちに寝とけ。明日からどうなるか分からんぞ」

斉藤が目を閉じたまま返した。

高橋は無言で横になっているが、寝息は聞こえない。多分、目をつぶって休んでいるのだろう。

俺はベッドに腰掛け、スマホを手に取った。通知が一件。藤木からだった。

「ショッピングモールに着いた。結構人が集まってる」

「会社の同僚から連絡だ。ショッピングモール、思ったより人が多いらしい」

「そりゃそうだろうな。物資確保のためにみんな考えることは同じだ」

斉藤が腕を組む。

「混乱はしてないのか?」

「今のところは秩序が保たれてるみたいだ。でも、混雑してるってさ」

俺は続くメッセージを読み上げた。

「でかい施設だから安心だと思ってるやつが多いみたいだな。運営側が物資の配給ルールを決めたらしい」

「へえ、ちゃんと組織化されてるのか?」

安田が興味を示した。

「会社の先輩が仕切ってるらしい。藤木曰く、手際がいいってよ」

「先輩? どんなやつだ?」

「橘。仕事はできるけど、独善的なところがある」

「そういうタイプ、こういう場面じゃ頼りにされるよな」

安田が苦笑する。

「何も決まってないときに率先して動けるやつがいると、みんな従うもんだ」

「だろうな。でも、どうなるかは分からん」

橘がリーダーシップを発揮しているのは想像できる。ただ、あの性格がこの状況でどう転ぶのかは読めなかった。

俺は「無理はするなよ」とメッセージを送り、返ってきた「お前もな」という短い返答を見て、スマホを置いた。

そのとき、窓の外で遠く、何かが爆ぜるような音がした。

翌朝、目を覚ますと、部屋の空気がどこか重かった。

「おはよう」

寝袋の中から上半身を起こすと、ソファに座ってスマホをいじっていた斉藤が軽く手を挙げた。

「みんな、まだ寝てるのか?」

「安田はさっきまで掲示板をチェックしてたけど、今は寝てる。高橋は起きたけど、まだ横になってるな」

俺はベッドから降り、キッチンに向かい、ペットボトルの水を口に含んだ。冷たい水が喉を通る感覚がやけに鮮明だった。

「何か動きがあったか?」

「ニュースはほとんど変わらないが、SNSはかなり荒れてる。警察も消防も対応が追いつかなくなってるみたいだ」

斉藤がスマホを差し出してくる。画面には「都内各地で暴動発生」「一部地域で停電」「避難所で感染者発生」などの投稿が並んでいた。

「避難所、やっぱりやばいか……」

「予想通りだな。人が集まれば感染も広がる。管理できなくなったら崩壊するしかない」

「そうなると、ここに籠るのが正解か……?」

「今のところはな。でも、長期的にはどうだろうな」

斉藤の言葉に、俺は返事をしないままスマホを取り出した。藤木からのメッセージが来ていた。

「ショッピングモール、昨日より人が増えてる」

俺はすぐに返信を送る。

「そっちは大丈夫か?」

数分後、返事が来た。

「今のところ問題ない。橘が仕切ってて、まだ秩序は保たれてる」

「ただ、人が多すぎる。物資も限界があるし、いつまで持つか分からん」

「藤木のとこ、思ったより人が増えてるらしい」

俺がそう言うと、寝袋から顔を出した安田が反応した。

「もう収容オーバーってこと?」

「まだ統制は取れてるみたいだが、時間の問題だろうな」

「リーダーの橘ってやつ、今はうまくまとめてるんだろ?」

「そうらしい。でも、人数が増えれば話は別だ。物資が尽きてくれば、不満も出る」

「どうする気なんだ? このまま籠城するのか?」

「……それは分からん。でも、藤木は冷静なやつだ。おかしなことになれば、何かしら判断するだろう」

そのとき、新たなメッセージが届いた。

「とりあえず、今は持ちこたえてる。でも、明日以降どうなるかは分からん」

藤木も同じ不安を抱いているようだった。

俺はスマホを握りしめながら、橘がこの状況をどこまでコントロールできるのか、ふと考えた。

もし、ショッピングモールが崩壊すれば……藤木はどうする? 俺たちは?

部屋の窓の外には、静まり返った街が広がっていた。

その静けさが、嵐の前のように感じられた。

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