終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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報告を終えたあとも、誰もすぐには動こうとしなかった。焚き火で炙った鹿肉の香ばしい匂いが漂っているのに、食欲がどこか遠のいてしまう。

「……なあ、試しに旅館の中をもう一回ちゃんと探索してみないか?」

安田が重い沈黙を破るように提案した。

「前に一通り見て回ったけど、増改築を繰り返してるせいで、まだ見落としてる部屋や通路があるかもしれないし」

「確かにな」

藤木が腕を組んで頷く。「それに、ふすまが勝手に開いたっていう部屋……そこに何かあるのかも」

「少なくとも、今のところ俺たちに危害を加えるものではないみたいだが……」

高橋が静かに呟く。「この旅館にいるのが、幽霊なのか、それとも俺たちの勘違いなのか……確かめたほうがいいかもしれないな」

「じゃあ、朝食を片付けたら探索するか」

俺たちは気を引き締めながら、それぞれの食事を済ませた。

***

旅館の内部探索は、今回で二度目になる。最初に来たときは、生活拠点を確保するのが優先だったため、詳しく見て回る余裕はなかった。

「まずは、ふすまが勝手に開いたっていう部屋から見てみるか」

俺が案内する形で、昨夜の出来事があった廊下へ向かう。

そこは、旅館の奥まった一角にある客室だった。ふすまは今は閉じており、特に異常はなさそうに見える。

「……開けるぞ」

誰も返事をしない。軽く息を整え、そっとふすまを横に滑らせる。

中は、畳の広がる普通の和室だった。

「なんだ、何もないじゃん」

安田が肩をすくめるが、俺は念のため慎重に部屋の中に踏み込んだ。

「何か変なものが落ちてたりしないか?」

「特には……あれ?」

斉藤がふすまの内側を指差した。

「これ……手形か?」

そこには、うっすらと白っぽい跡が残っていた。

「拭き跡……じゃないな」

「昨日のゾンビじゃなくて?」

「いや、窓際のゾンビはここまで来てない」

じっと見つめると、その手形はどこか小さく、妙に細長い。

「……子供?」

安田がぼそりと呟く。

「さすがに、偶然ってことはなさそうだな」

藤木が慎重に周囲を見渡す。「もうちょっと、このエリアを詳しく見てみよう」

それを合図に、俺たちは旅館の奥へと足を踏み入れていった。

***

旅館の奥へ進むほどに、増改築によって複雑になった構造がよく分かる。途中には壁で塞がれた廊下や、行き止まりになった階段があり、行く手を阻まれることも多かった。

「こっち、何かあるかも」

高橋が押し入れの奥を指差す。

「隠し扉……?」

「いや、単に増築の影響で本来の通路が塞がれてるだけかもしれん」

力を入れて押すと、木の板がぎしりと軋んで、わずかに隙間ができた。

「これ、無理やり剥がせるんじゃね?」

安田が目を輝かせる。

「……やってみるか」

俺たちは慎重に手を掛け、力を込めて板を引き剥がした。

中から現れたのは、埃をかぶった古い通路。

「……やっぱり、まだ未探索のエリアがあったな」

「行ってみるか?」

俺たちは静かに頷き合い、懐中電灯の光を頼りに、薄暗い通路の奥へと足を踏み入れた。
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