終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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朝になり、昨夜の出来事を仲間たちに話すべきかどうか、少し迷った。

「ゾンビが窓に張り付いた」とだけ伝えるなら問題はない。だが、それが何かに気を取られたように突然離れていったこと、そして、その後にふすまが勝手に開いたことまで話せば、妙な空気になるのは間違いない。

それでも、何かが起こったのは事実だ。俺は朝食の準備をしている仲間たちに声をかけた。

「……昨夜、見張りのときにゾンビが来た」

その一言で、全員の手が止まる。

「マジかよ」

安田が、焼いていた鹿肉の匂いも気にならない様子で顔をしかめた。

「どういう状況だった?」

藤木が身を乗り出す。

「窓に張り付いて、しばらく俺を見てた。でも、音を立てた瞬間、そいつは何かを気にするように首を傾けて……それから、何もせずに去って行ったんだ」

「何かに気を取られたってことか?」

斉藤が冷静に分析する。

「そうとしか思えない。でも、周囲には何もなかった。俺も息を潜めてたし、旅館の中は静かだった」

「……おかしいな」

高橋が腕を組んで考え込む。

「普通、ゾンビは音や動きに反応する。なのに、そいつはお前に向かっていたのに突然別の何かを意識した?」

「そうなんだよ。まるで、そいつよりも気になるものがあったみたいに……」

俺は少し躊躇いながら、後半の出来事を付け加えた。

「で、その後なんだけど……旅館の中を巡回してたら、誰もいないはずの部屋のふすまが、勝手に開いた」

一瞬、空気が張り詰める。

「……は?」

安田が箸を持ったまま固まる。

「いやいや、ちょっと待てよ。風とかじゃなくて?」

藤木が怪訝そうに眉をひそめる。

「それならそう言いたいけど……あれは確実に、何かが開けた。俺は触ってない」

「……前にさ、この旅館で妙な足音聞いたり、手形が残ってたりしたよな」

斉藤が静かに言う。

「もしかして、あのときの……?」

誰も言葉を継がない。

「いやいや、ちょっと待てよ!」

安田が勢いよく立ち上がる。

「それじゃまるで、幽霊がゾンビを遠ざけたみたいじゃねえか!」

「……そう考えると、筋が通る部分はある」

高橋が難しい顔で頷く。「お前が見張りをしていたとき、ゾンビが寄ってきた。でも、そいつは何かに気を取られて去った。そして、その後にふすまが勝手に開いた……」

「旅館の幽霊が、俺たちの邪魔にならないようにゾンビを遠ざけた……?」

そう口にした瞬間、全員が無言になった。

「おいおい、そんな話あるかよ……!」

安田が笑おうとするが、明らかに顔が引きつっている。

「まあ……ありえない話ではない、か」

藤木が腕を組みながら低く呟いた。

「で、どうする? もしこの旅館に、俺たち以外の”何か”がいるとして、それが敵なのか、味方なのか」

誰も即答できない。

「とりあえず、今後も注意しておくしかないな」

斉藤が落ち着いた口調でまとめた。「幽霊だろうが、ゾンビだろうが、生き延びるためには、まず状況を把握することが大事だ」

「……そうだな」

俺たちは互いの顔を見つめながら、旅館の不気味さを改めて実感していた。
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