終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

文字の大きさ
57 / 84

57

しおりを挟む
夕飯時、俺たちは新しく手に入れた山菜やキノコを使った料理を囲みながら、賑やかに食事を楽しんでいた。

「いや~、行者ニンニクってすげぇな!」

安田が勢いよくご飯をかき込む。「ガーリック炒め、マジでうますぎる!」

「だろ? でも、これ食べると翌日めっちゃ臭うから気をつけなよ」

田辺さんが茶碗を持ち上げながら笑う。

「もう臭くなってもいい! こんなにうまいなら毎日でも食いたい!」

「そういやさ、みんな色々あったと思うけど、こうやって落ち着いて飯食えるのも久しぶりじゃね?」

俺がそう言うと、藤木が頷いた。

「たしかにな。ショッピングモールにいた頃は食料はあったけど、こんな落ち着いた飯じゃなかった」

「お、ショッピングモールの話、聞かせてよ」

田辺さんが箸を置いて興味津々に身を乗り出す。

「いや~、最初はマジで天国かと思ったんだよ。食料はあるし、広いし、ゾンビも入ってこないし。でも……人間が増えすぎると、やっぱ問題が起きるんだよな」

藤木はため息をつく。

「まぁ、橘ってカリスマ気取りのビジネスマンがいて。最初は頼りになったんだけど、どんどん独裁的になっていって……。そのうち、気に入らないやつは追い出すようになったり、食料の配分を仕切りだしたり」

「ふむ、そりゃあ人間関係が一番の問題になるよねぇ」

田辺さんはしみじみと頷いた。「私は山で一人だったから、その辺のゴタゴタには巻き込まれなかったけど、人間って群れると難しいもんだねぇ」

「だよな……」

「そっちはどうだった? 高橋くん、最初の頃はどんな感じだったの?」

「……俺?」

高橋が箸を止める。

「あんまり喋らないからさ、気になってたんだよね」

「まぁ、特に派手なことはないけど……。最初にゾンビを見たのは、満員電車の中だった」

「満員電車!?」

「それ、めっちゃ最悪な状況じゃね?」

安田が箸を止めて驚く。

「まぁ、今思えば完全に終わってたな。駅で倒れてたやつが急に起き上がって、いきなり人に噛みついたんだよ。最初は『何やってんだコイツ』って感じだったけど、次の瞬間、噛まれたやつが叫びながら暴れだして……」

「うわぁ……」

「それで電車の中、大パニック。ドアが開いた瞬間に、俺はとっさに飛び降りた。周りの奴らも逃げようとしてたけど……もう何人か噛まれてたからな。たぶん、あの車両にいた連中はほとんど……」

高橋はそこまで言うと、ゆっくりと息を吐いた。

「……まぁ、あの時は運が良かったってだけだな」

「やべぇ……」

安田がゾッとした顔をする。

「都会ならではの地獄だったねぇ……」

田辺さんは眉を寄せた。「私は山にいたから、ゾンビを目にすること自体ほとんどなかったよ。でも……それで正解だったのかもしれないねぇ」

「おばちゃんは、ずっと一人で山に?」

「まぁね。若い頃に旦那を亡くしてさ、それで山に籠もっちまったんだよ」

「えっ」

俺たちは思わず手を止めた。

「未亡人か……」

斉藤がぽつりと呟く。

パシッ

「ぐっ……!」

即座に高橋がこづく。

「痛ぇ……」

「お前……場を考えろよ」

「すまん……」

斉藤は反省したようにお茶を啜る。

「まぁ、いいけどねぇ」

田辺さんはケラケラと笑った。「そう、未亡人よ。若くして一人になっちゃったもんだからさ、しばらくは落ち込んでたけど、なんだかんだで山の暮らしが合っちゃってねぇ」

「おばちゃん……強ぇな……」

安田が感心したように言う。

「まぁね。でも、一人はやっぱり寂しいもんだよ。だから、こうしてあんたたちと一緒にいられるのは、悪くないね」

俺たちは顔を見合わせ、自然と笑みがこぼれた。

「いやぁ、田辺さんがいてくれて、ほんと助かってるわ」

「料理も知識も、頼りになるからな」

「ははは、そう言ってくれると嬉しいねぇ。じゃあ、明日も頑張って食糧確保しようじゃないか!」

「おう!」

俺たちは酒もないのに杯を交わすように茶碗を掲げ、賑やかに夕飯を終えた。

この旅館での暮らしが少しずつ形になってきた。まだまだ不安なことは山ほどあるが……今はこの時間を大切にしたいと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年中盤まで執筆

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

処理中です...