終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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翌朝、田辺さんが腕を組みながら、旅館の入り口付近を眺めていた。

「うーん……やっぱり、ここの警戒を強化したほうがいいねぇ」

「昨日、ゾンビを片付けたばっかりだけど、また集まる可能性あるしな」

藤木が頷く。

「バリケードの強化とか?」

「それもいいけどねぇ、もっと簡単に、確実に接近を感知できる仕掛けを作ったほうがいいよ」

「接近を感知……?」

田辺さんはにやりと笑い、倉庫の方へ向かった。

「いいものがあるんじゃないかと思ってたんだけど……ほら、あった」

俺たちが覗き込むと、そこには古い鈴がいくつもぶら下がっていた。

「旅館で使ってた風鈴か?」

「まぁね。こういうの、捨てられずにとっておくもんだよ。これを使えばいい」

「どう使うんだ?」

「ロープを張って、鈴をつけるのさ。ゾンビには知能がないから、ロープに気づかず引っかかるだろ? そのたびに鈴が鳴る」

「……なるほど、それならゾンビが来たのがすぐわかるな」

「しかも、ゾンビは音に反応するからね。鈴が鳴れば、近くのゾンビをその場に誘導できる。下手に旅館に近づくよりも、別の場所で足止めできるってわけさ」

「おお、めっちゃいいじゃん」

安田が目を輝かせる。「じゃあ、さっそく設置しようぜ!」

***

俺たちは旅館の周囲、特にゾンビが入り込みそうな場所を中心に、ロープを張っていった。

「この高さなら、俺らはしゃがめば通れるけど、ゾンビは引っかかるな」

「鈴をロープの要所要所につけて……よし、こんなもんか」

高橋が念入りに結び目を確認する。

「これ、夜になったら試しに音を鳴らしてみようぜ」

「そうだな。どれくらい効果があるか、実験してみたい」

「でも、実際ゾンビがひっかかって鈴を鳴らしたら、それに釣られてさらに集まってくるんじゃね?」

藤木が心配そうに言う。

「そこは場所次第だな。旅館の敷地よりも、ちょっと離れたところに仕掛けたほうがいい」

「じゃあ、メインの侵入口になりそうな道に重点的に設置して、旅館の近くには少なめにしとくか」

俺たちは試行錯誤しながら、ロープと鈴の防衛システムを作り上げていった。

***

夕方、すべての設置が完了すると、田辺さんが満足そうに腕を組んだ。

「よし、これでバッチリだね」

「本当にうまくいくかな」

「まぁ、夜になればわかるさ」

安田がロープを軽く揺らして、チリン、と鈴を鳴らした。

その音が、静かな山の中に響く。

「……さて、ゾンビはどんな反応をするかな」

俺たちは旅館に戻り、夜の見張りをしながら、初めての防衛トラップの効果を試すことになった。

夜になっても、旅館の周囲は静かだった。

「……全然、ゾンビ来ないな」

安田が欠伸をしながら呟く。

「まあ、こないに越したことはないけどな」

藤木が腕を組んで、外の暗闇を見つめる。

ロープと鈴の仕掛けは、今のところ何の反応も示していない。ゾンビの接近を警戒していたが、それらしい気配はまったくなかった。

「……でも、ちょっとは試してみたいよな」

「おい、安田、わざと鳴らすんじゃねぇぞ」

斉藤が釘を刺すが、安田は「いやいや、そんなバカなことはしねぇよ」と笑いながら手を振った。

そのとき――

チリ……チリチリ……

鈴が、小さく鳴った。

「……!」

全員が息を呑み、旅館の外へと目を向ける。

「今の……風か?」

「風、吹いてないよな」

みんなが耳を澄ませるが、何の足音も聞こえない。

「……」

「まさか……」

その瞬間、またしても――

チリン、チリチリ……

可愛らしく、楽しげな音が鳴る。

「……いや、これ……」

斉藤がじっと外を睨むが、暗闇の中、何の動きもない。

「……幽霊さん、か?」

俺がポツリと呟くと、安田がブルッと肩を震わせた。

「えぇ……いやいや、そっちのほうが怖いだろ……」

「でも、ゾンビの足音はしないし、風もないし……」

「悪戯してるのかねぇ……?」

田辺さんがしみじみとした口調で言う。

俺たちはしばらく警戒していたが、ゾンビが現れる気配はまったくなかった。

その代わりに、鈴が時々、チリチリと鳴る。まるで、誰かが楽しく遊んでいるかのように。

「……まぁ、ゾンビよりはいいか」

高橋がぼそっと言い、俺たちは小さく笑った。

「幽霊さんも警備してくれてるって思えば、悪くないよな」

「じゃあ、今日は安心して寝れるか」

俺たちは幽霊さんの悪戯を受け入れ、見張りを続けながら夜を過ごした。
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