終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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俺たちは土間に転がる縛り上げたゾンビを見下ろし、息を整えた。

「こいつが井戸から這い出してきたってことは……やっぱり下に何かあるってことだよな」

藤木がゾンビの足元を蹴りながら呟く。

「井戸の底がどこかに繋がってる可能性があるってことか」

「逃げ道になるかもしれないな」

斉藤が言い、全員の視線が井戸に向く。

外にはまだゾンビがいる。旅館の各所で罠の鈴が鳴り続け、遠くからゾンビのうめき声が響いてくる。

「ここに留まるのはまずい……」

「じゃあ、行くしかねぇな」

俺たちは即座に準備を始めた。

「ハシゴがあれば降りられるんだが……」

「倉庫にあったやつ、使えるぞ」

安田が急いで古びた木製のハシゴを運んできた。

「これでいけるか?」

「ちょっと古いけど、今は贅沢言ってられないな」

俺たちはハシゴを井戸の縁にかけ、ゆっくりと降ろした。

「俺が先に降りる」

高橋がスコップを背負いながら言う。

「いや、俺が行く。何があるかわからないし、機動力あるやつが先行したほうがいい」

藤木が手際よくリュックのストラップを締め直し、ハシゴに足をかけた。

「気をつけろよ」

藤木はハシゴを慎重に降り、俺たちは井戸の縁から覗き込む。

「……横穴がある!」

井戸の側面には、崩れかけた小さな横穴がぽっかりと口を開けていた。

「マジか……どこに繋がってるんだ?」

俺もすぐに後を追う。

井戸の壁に手をつきながら降りていくと、先ほどのゾンビの指の跡が泥にくっきりと残っていた。まるで、必死に登ろうとしたかのような跡だ。

「ここを通って、あいつは上がってきたってことか……」

「他にもいるかもしれねぇぞ……急いだほうがいい」

その時だった。

バンッ! バンッ! バンッ!

「!? なんだ!?」

突然、井戸の壁がバンバンと叩かれた。

「……幽霊さん?」

安田が顔を青ざめながら呟く。

壁のあちこちに、白い手形が次々と浮かび上がる。

「やべぇ、これは急かされてる感じがするぞ……!」

「悪い感じはしねぇけど、なんかヤバそうだ!」

「早く進め!」

俺たちは急いで横穴へと身を滑り込ませた。

幽霊さんが俺たちを追い立てるように、井戸の壁に手形をバンバンとつけていく。

「……なんか、背中を押されてる気がする」

「お礼はあとでいいから、今はとにかく前へ!」

俺たちは井戸の横穴へと突っ込んでいった。

この先に何があるのかはわからない。

だが、ここにいるよりはマシなはずだった。

井戸から続く横穴は、湿っぽくひんやりとしていた。足元にはぬかるんだ土が広がり、天井は低く、しゃがみながらでないと進めないほど狭い。

「……なんだよこれ、完全に人工の道じゃねぇか……」

藤木が低く呟きながら、慎重に足を進める。

「昔の避難経路とか……?」

「こんな古びた旅館に、そんなもんがあるか?」

斉藤が苦笑しながらも、手にした金属バットをしっかりと握り直す。

バンッ! バンッ! バンッ!

「うわっ!?」

背後で、またしても手形が壁を叩く音が響いた。

「ちょ、やっぱり急かされてる感じしない?」

安田が小走りになりながら、時々後ろを振り返る。

「悪意がある感じじゃねぇけど……こうもせっつかれると怖ぇな……」

高橋が短く息を吐き、歩みを早める。

横穴は微妙にカーブしながら続いており、どこまで伸びているのか分からない。

「とにかく進むしかねぇ。立ち止まるほうがヤバい気がする」

俺がそう言うと、全員が黙って頷いた。

バンッ! バンッ! バンッ!

手形の音は依然として背後から聞こえ続ける。

「……なぁ、これ、俺たちを追い立ててるだけじゃなくて、何かから守ろうとしてねぇか?」

藤木がふと呟く。

「……どういうこと?」

「いや、もし幽霊さんが単に俺たちを驚かせるつもりなら、こんなに規則的に壁を叩くか? これって、まるで……」

その瞬間——

ズルッ……グチャ……

「!?」

前を進んでいた高橋が足を止めた。

「どうした?」

「……前に何かある」

俺たちは慎重に足を運び、その場に目を凝らした。

——そこには、ぬかるんだ地面に半ば沈み込んだゾンビの死骸があった。

「うわっ……埋まってる……?」

安田が思わず口元を押さえる。

「ここ、結構湿ってるからな……土が崩れやすいのかもしれねぇ」

藤木が慎重にゾンビの死骸を避けながら横穴を進む。

「こいつがどうやってここに来たのかは謎だけど……少なくとも、まだ動くやつはいねぇな」

「念のため、埋まってるやつの顔をつぶしとくか?」

「いや、音を立てたくねぇ……静かに行こう」

全員、息を殺しながらゾンビの死骸を慎重に跨ぎ、奥へと進む。

相変わらず、背後からはバンッ! バンッ! という手形の音が響き続けていた。

まるで、「早く進め」と言わんばかりに。
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